tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

コロナも落ちつき、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

奈良町宿(紀寺の家)が、雑誌「住む。」に登場!

2012年05月06日 | 観光にまつわるエトセトラ
以前、当ブログで奈良町宿(紀寺の家)を紹介したことがある。その後「eclat(エクラ)2012年 4月号」、「naranto(奈良人)2012年 春・夏号」、「七緒 着物からはじまる暮らし vol1.29」(2012年 春号)、「Discover Japan TRAVEL vol.3」(2012年2月)、週刊奈良日日新聞(4/6付)などに紹介され、啓林堂書店などは「奈良町宿 紀寺の宿」ブックフェアを開催したほどである。
※奈良町宿(紀寺の家)のホームページはこちら、FaceBookページはこちら

奈良日日新聞(同)の「論点」(染谷和則記者)では《不便さに宿る「奈良らしさ」 風情ある町家 後世に伝えたい》のタイトルで、この宿に言及している。《奈良町の町家に住み、昨年10月に築100年の町家を現代風に改装した宿泊施設「紀寺の家」をオープンさせた藤岡俊平代表(29)は、利用客の声や感想に耳を傾けてきた。その中で印象深かったのは「町家って、現代家屋のサッシ窓と違って風で揺れたりして、きしみ音が鳴ったりすることが多いんです。これはお客さんに嫌がられるかなと思い、隙間にゴムを挟もうかとスタッフと悩みましたが、お客さまには『この音(きしみ音)がいい』と言われたんです。ああ、この不便さの中にある趣や風情、奈良らしさを感じてもらえたんだ、そんな気がしました」と語る》。


写真はすべてブログ「奈良町宿の日々」から拝借した

《どこか懐かしい、奥ゆかしい風情は、観光客が理解してくれている。しかし、それら「奈良らしさ」を住人、県民が理解し、残していこうとする気概はあるか。そこには、まだまだ伸びしろがありそうだ。(中略) 姿を消すと二度と取り戻せない町家。維持、修繕をはじめ、実際に住むと生じてくるさまざまな不便さの中に宿る「奈良らしさ」を、その地域だけでなく、皆で共有できたなら、町家はまだまだ生き残れる。今の若い人たちに町家へのあこがれやニーズがあることは、きっと一筋の光になる》。

奈良町宿は、とうとう季刊誌「住む。」(2012年 春号)で、20ページにわたって紹介された。「これから家を建てる人は、ぜひ読んでほしい。すでに家を建てた人にも、ぜひ読んでほしい」という専門誌で、藤岡さん曰く「今までお手本にしてきた憧れの雑誌」である。20ページの中から、ピックアップして紹介する。

住む。 2012年 春号 [雑誌]
泰文館
農山漁村文化協会

町と町家を再生する。ある試み「奈良町宿」を訪ねて。
世界遺産にも認定されている観光地だというのに、奈良の町はどこかのんびり、日なたの匂いがする。近鉄奈良駅から10分ほど歩いたところにある奈良町。かつては元興寺を中心にしてにぎわい、今でも古い町家が点在する懐かしい風景がある。この町家を残し、再生させることで、町の風情を守ろうとする人たちがいる。




僕たちはこの町で、町家に暮らすことに決めた。
奈良町には、江戸末期から昭和にかけての町家が多く残っている。間口が狭く奥に長い、庶民の住まいだ。今どき木造の古い家は、子世代には敬遠される。住み手が去った町家は、あっという間に朽ち果て取り壊され、跡地は駐車場や建売住宅になる。ここ二十年で町の様子はずいぶん変わった。「町家を改修したカフェやショップも喜ばれていますが、でもそれだけじゃだめなんです」そう話す藤岡俊平さんは奈良町生まれの設計士。父は建築家の藤岡龍介さん。奈良を拠点に、町家の改修、再生を地道に続けている。「ただ町家を再生するだけではなくて、その町家に暮らす人が戻ってくれないと、町の再生にはならないんです」




俊平さんたちが育った家も町家だった。その実家のそばに、古い町家が残っていた。二十年、人が住まず、風化するがまま。持ち主がついに取り壊し、学生用のワンルームマンションにするという。子供のころ、よく遊んだ懐かしい風景。都会の狭いマンションでは味わえない縁側での時間。このままあの町家が壊されてしまうのを、見ているしかないのか……。そこで出たのが、町家を改修して宿にするという案。町家でも暮らせるというモデルとして、ここでの時間を体験してほしい。奈良町の普段の顔を見てもらいたい。問題は、だれが改修の指揮をとり、宿を運営するかということだ。実家に帰るたびにその話になる。

町家の再生を、町と町並の再生につなげたい、という思いを形にするには、まず自分たちが動かなくては。俊平さんは、東京の職場をやめることにした。大阪の建築事務所にいた長女の奈保子さんも、奈良に戻ることにした。客室乗務員が夢だった次女の志乃さんは、宿のホスピタリティを担う。奈良のおいしい食材を食べてほしいと、宿の食事は俊平さんの妻、栄養管理士の希(のぞみ) さんが手を挙げた。今、俊平さんと希さんがひとり娘と暮らす家は、俊平さんが生まれ育った町家だ。藤岡家の町家に新しい世代が住むことになり、こうして奈良町宿の準備が始まった。


藤岡俊平さん「朝のそうじが、私の1日のはじまりです」

町家の新しい暮らし方を伝えたい。町家を「宿」に改修
CMを見れば「高気密、高断熱の家」。婦人誌を開けばテーブルの上の華やかな食器。そんな映像が擦り込まれた人々にとって、目の前の傷んだ町家は薄暗く、使いにくく、次から次へと補修箇所が発生するやっかいの塊だ。「町宿」として再生させる前の建物の写真を見せてもらった。明治の末から昭和にかけて、借家として建てられたものの一軒だという。改修する前、約二十年は人の住まない時期があったため、ずれた瓦から雨が漏り、桁や梁が腐り、崩れた部分もある。土間に床を張ってキッチンセットを置き、そばに小さな風呂場をつくる改修で、湿気のせいか、水回りの傷みは激しい。正直言って、よくこの古家を改修しようと思ったものだ。壊そうと思う家主の気持ちはよくわかる。ところが。「どんなに朽ちた家でも、生き返ります」

長年、町家の改修・再生を手がけてきた藤岡龍介さんはきっぱり言う。俊平さんの父だ。昔の木造建築は、釘を極力使わず、柱と梁、柱と他の材を、組木のように噛み合わせ、込栓、鼻栓、しゃち栓などの木片で固定する。ていねいにばらせば、また別の場所で組み立て直すことができる。「昔の家は、今の材料と比べると、格段にいいものを使っているんです。密度の高い柾目などは、今ではほとんど手に入りません。町家を重機で潰してしまえばゴミにしかなりませんが、ていねいに解体すれば、いくらでも使える部分はあるんです」




しかし、古いものをそのままよみがえらせるだけでは、現代人は生活できない。古い家が敬遠されるいちばんの理由は、使いにくい水回りだ。長い間に幾度かの改修を経るのも、時代に合った水回りにしようとしてのこと。龍介さんは、できるだけ町家本来のプランに戻しながら、無理のない場所に水回りを整える。町宿では、土間にキッチンをつくった。IHコンロで、火事のリスクを遠ざけようとしている。バスルームは、奥の庭に面した場所に、小さいながらも気持ちのよい部屋を提案した。洗面トイレには床暖房も施している。「単に昔の生活に戻れというのではなく、あくまでも町家のよさを生かしたうえで、現代の生活ができることを、ここで実感していただければ、と思っているんです」と俊平さん。「縁側で季節の匂いを察したり、ガラス戸がカタカタいう音に風を感じたり、ここで新たな発見をしていただければうれしいんです」



「食」は健やかな地元食材を使って。
朝の食事といっしょに部屋に運ばれるメニューは、希さんの手書き。自宅の畑で育てた野菜や知り合いの農園から届けられる有機野菜、しぼりたてのビン牛乳、近所のパン屋さんがつくる天然酵母パン、羽間自然農園でつくる自然発酵紅茶……。スタッフみんなで選んだ地元のこだわりの食材が使われている。新鮮な食材の持ち味をできるだけ生かすようにと、希さんがシンプルに料理する。「畑でネギがたくさん採れると、ネギをどうやって美味しく食べようかなっていうところからメニューを考えています」と希さん。




奈良にうまいものなし、と言ったのは志賀直哉だが、今やJR奈良駅前に、近郊農家によるオーガニックマーケットが立つ。意欲的な生産者が増えているのだ。「里山と町がすぐ近くにある奈良では、町の人と関わりながら農業ができるんです」。町宿に野菜を届ける北村国博さんがいう。小さな町では手の届くところに健やかな食材がある。夕食に出されるごはんの玄米は、住宅地の
中にある田んぼでスタッフが手植えし、無農薬で育てたものだ。炊き方を工夫して、噛み締めるほどに味わいのあるもちもちごはんに炊き上げる。ゆったりとした奈良の時間がそのまま体に染み渡るような、清々しい食卓だ。


さて、皆さんは全国47都道府県をテーマとした日本初のミュージアム「d47 MUSEUM」をご存じだろうか。4/26から「渋谷ヒカリエ」で開催されている。ここで「奈良の宿」に選ばれたのが、奈良町宿である。J-CASTニュース(4/22付)によると



ロングライフデザインをテーマに活動を行うD&DEPARTMENT PROJECTは2012年4月26日、ミュージアム「d47 MUSEUM」を渋谷ヒカリエ(渋谷区渋谷2-21-1)の8階に開館する。90センチ角のテーブルが47台ならぶ館内では、企画ごとにテーマを変えながら、日本のデザインとクリエーションの今を感じさせる展示を随時行っていく予定だ。オープン初日から開催の第1回展示「NIPPON DESIGN TRAVEL~47都道府県のデザイン旅行 ~」のテーマは、「観光デザイン」。観光、食事、お茶、買物、宿泊、人の6つの項目を設け、47都道府県の観光資源を独自の基準で選定し、展示を行う。

展示品の一部を購入できるショップや、地域の食材を使った料理を楽しめるレストランの併設に加えて、地域のキーパーソンを招いて行うトークイベントやワークショップなども計画される。なお同展は、入場料800円で、5月28日までの開催となっている(11時~20時)。1997年にはじまるD&DEPARTMENT PROJECTのコンセプトは、「流行や時代に左右されることのない、長く使い続けられるロングライフデザイン」。現在ではネットショップに加えて、川久保玲とコラボレーションした「GOOD DESIGN SHOP COMME des GARCONS」をはじめ、全国6店舗を展開している。




つまり第1回は新しい「観光デザイン」をテーマとして、「当地らしさのある宿」「当地らしさのある土産物」など「1泊2日の6要素」を展示台に並べ、土地の個性を感じてもらうという企画展なのである。「観光」とは『易経』によれば「国の光を観(み)る」、つまり当地の優れたもの(光)を見るという意味であるが、それを「観光施設、食事、カフェ、土産物、宿、その土地の人材」の6つの切り口に絞っているのである。ディレクターは、高名なデザイナー(デザインプロデューサー)のナガオカケンメイ氏だ(奈良市観光協会事務局長・長岡光彦氏のご親戚ではない、念のため)。

そのナガオカ氏が選んだ「奈良の6要素」は、観光施設=入江泰吉記念奈良市写真美術館、食事=そうめん処 森正、カフェ=工場跡事務室、土産物=吉田蚊帳(かちょう)、宿=奈良町宿、人材=石村由起子(くるみの木)、というわけで、見事、「宿」部門に、新参の奈良町宿が選ばれたのである。

さらに5月中旬には、BS朝日の「エコの作法」という番組で奈良町宿が紹介される。以前、当ブログに「週末リゾート」(金泊)の話を書いたが、奈良町宿にも、特に名古屋方面から車で来て金曜日の夜に泊まる女性グループが多いそうだ。神戸、大阪から来られる観光客も増加しそうだという。同宿のHP「町家に暮らす」には、このように書かれている。

家の前を掃除、打ち水をするところから一日は始まります。夏は部屋の建具を開け放し風を通す、冬は家族が一つの部屋に集まって火鉢を囲み、お餅や芋を焼いて食べていました。床の間に四季にあわせた掛け軸や生け花をしつらえ 十五夜には縁側にすすきと団子を供え。町家では、日本が創り出してきた伝統・しきたり・知恵の暮らしがあります。旬の野菜や果物を食べたり、各家庭で行事に合わせた料理を作ったりと、素朴ではありながら今では魅力的な豊かな暮らしがそこにはありました。味わうよろこび・香るよろこび・触れるよろこび・聞こえるよろこび・映るよろこび 時間を過ごす過程に感じられる「よろこび」が、豊かな暮らしを形作っていくと考えています。そんな私達が考える、今の町家暮らしを感じて頂ければ幸いです。

私はかつてマンションから一軒家に移り住んだとき、雨が庭の木の葉を打つ「ぱらぱら」という音を聞いて、心が和んだことがある。マンションの11階では雨は通過するもので、せいぜい車が雨水を踏む雑音が反響する程度だったのだ。だから「窓のきしみ音がいい」という感覚はよく分かる。奈良町宿は、単なる宿泊施設ではない。ほんの半世紀前にはこの国では当たり前だった日本人の「暮らし」と、暮らす「よろこび」が凝縮しているのである。まさに「ロングライフデザイン」だ。

皆さん、ぜひ奈良町宿にお泊まりいただき、「町家暮らし」の喜びを体感してください!
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