tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

コロナも落ちつき、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

宿泊客誘致に戦略はあるのか?! 観光地奈良の勝ち残り戦略(59)

2012年05月11日 | 観光地奈良の勝ち残り戦略
5/1付の奈良新聞「奈良市内主要ホテル 稼働率5年間で最低 昨年62.5% 震災で上期低迷」という記事が載っていた。奈良市ホテル協議会(中野重宏会長)の発表であるが、他紙には掲載されていないし、ネットにも出回っていない(同協議会はHPを持っていない)ので、ここで紹介しておく。

奈良市内主要8ホテルの平成23年1~12月期の客室平均稼働率が62・5%となり、直近5年間で最も低い水準だったことが市ホテル協議会のまとめで分かった。新型インフルエンザの流行で低迷した21年の64・6%を下回った。東日本大震災などの影響で上期の観光需要が低迷した。

23年の値を四半期ごとにみると、冬の第1四半期(1~3月)は49・4%と50%を割り込み過去5年で最低。22年の平城遷都1300年祭の反動減があったとみられる。第2四半期(4~6月)は63・4%となり、新型インフルエンザで修学旅行客のキャンセルが相次いだ21年並み(61・8%)の低水準。夏期の第3四半期(7~9月)は62・3%と60%を超えたが、例年より2~6ポイント低かった。繁忙期の第4四半期(10~12月)は74・2%と70%を超え、ほぼ例年並みの水準。

一方、今年の第1四半期(1~3月)は59.2%と昨年を10ポイント近く上回ったが例年並みの60%台には届かなかった。県内最大の客室数(330室)のホテル日航奈良は63.1%と過去5年では2番目の高水準。だが「価格競争に加え、インターネットや団体客の申し込みが多く、売り上げが伴わない」(同ホテル)としている。同協議会の中野重宏会長は「昨年は震災と1300年祭の反動減で低迷した。観光客が戻ってきたが数年前と比べ客室単価が落ちており、経営環境は厳しい」と指摘している。

どうもスッと頭に入らない記事なので、まずは客室稼働率をきちんと整理して並べてみる。なお年間平均(2011年1~12月)は62.5%である。

11年 冬(1~3月)  49.4%(過去5年で最低)
同年 春(4~6月)  63.4%(新型インフルエンザの21年並み=61.8%) 
同年 夏(7~9月)  62.3%(例年より2~6ポイント低い)
同年 秋(10~12月) 74.2%(ほぼ例年並み)
12年 冬(1~3月)  59.2%(例年は60%台)

まず、平均62.5%という「絶対水準」は高いのか低いのか。平成23年版観光白書によれば、全国の宿泊施設の客室平均稼働率は「52.2%」とある。だから「過去5年間で最低」といわれる奈良市内主要8ホテルの稼働率(11年)の62.5%は、これでも立派な成績なのである。特に秋の74.2%は相当高い。さすがは古都奈良である。こうして数字を並べてみると、昨年10月以降は持ち直していることが分かる。見出しに「上期低迷」とあるとおりだ。1~9月が低かったのは、震災と台風の影響(風評被害)といえる。

10月以降は、天災やお天道さまのせいにはできないので、各ホテルの実力が問われる。そんな中でホテル日航奈良が、今冬(1~3月)63.1%と、過去5年で2番目に高い稼働率だったとは、ご立派である(8ホテルの平均は59.2%)。このホテルはきちんとプレスリリース(報道発表資料)を出し、それを自らのHPに載せているので、いつも感心している。まあ当たり前のことなのだが、県下ではそれができていないところが多いのである。

同ホテルは昨年度だけで15本ものリリースを打っている。月に直すと1.3本という猛打である。同ホテル好調の要因を主なプレスリリースから探ると、

ホテル日航奈良のホームページより(次の写真も)

(1)大反響!「東北・関東・北海道地方の方は半額!宿泊プラン」発売1ヶ月半でご利用数1,000室超えの勢い。期間中予約も1,400室を突破!(11年5月)
(2)ソーシャルメディア連携やスマートフォン対応ページも導入、公式ウェブサイトお客様に優しくリニューアル(11年6月)
(3)奈良県“記紀・万葉プロジェクト”連動宿泊プラン「神話めぐり~古事記(ふることぶみ)~」シリーズ好調発進!(11年11月)
(4)東北の郷土料理も食べることができる!期間限定1,000円引きディナーバイキング(12年2月)
(5)古事記ガールの“歩く奈良旅”に最適(12年3月)
(6)“なら記紀・万葉”連動企画 ロビー壁面に「古事記 ゆかりの地マップ」登場!(12年4月)




被災地の支援や記紀・万葉プロジェクトとの連携など、時代のニーズをよく読んだ企画が目につく。新聞などでも紹介されたので、ご存じの方も多いことだろう。特に話題となった「神話めぐり~古事記」シリーズは、山の辺の道、佐紀路に加え第3弾の大和三山(12年8~12月)まで用意されている。いわば「着地型旅行商品」で、佐紀路コースは朝日新聞奈良版(5/1付)、「古事記 ゆかりの地マップ」は奈良新聞(4/30付)でも紹介されている。

同ホテルは「価格競争に加え、インターネットや団体客の申し込みが多く、売り上げが伴わない」とコメントされているが、特色あるプランは古事記ガール(kiki ガール)などの個人やグループ客を引きつけることだろう。「価格は落とすな。むしろ付加価値をつけて高く売れ」というのが成熟期マーケティングの定石である。今後とも、大向こうをうならすユニークな企画を期待している。他の7ホテルさんも、ぜひ見習ってほしい。
コメント
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