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記・紀にみる日本の神々と祭祀の心

2012年05月16日 | ブック・レビュー
記・紀にみる日本の神々と祭祀の心
武智功
奈良新聞社

奈良新聞社取締役地域情報部長でいらっしゃる武智功氏の著書『記・紀にみる日本の神々と祭祀の心』(奈良新聞社刊)1,905円を読んだ。これは快著である。B5版フルカラー133ページで、きれいな写真と行き届いた解説がぎっしりである。版元の「出版情報」によると

奈良新聞社は、弊社取締役の武智功による『記・紀にみる 日本の神々と祭祀の心』を発行、全国の書店で販売しています。これは平成20年9月から22年3月にかけての奈良新聞の連載等を加筆・修正したもので、「古事記撰上(せんじょう)1300年」を記念した出版物です。同書は「古事記」「日本書紀」から見た、大和の国を中心とした信仰や祭祀などについて分かりやすくまとめたもので、記紀、神話、神道、祭りの世界などへの入門書ともいえます。

天地開闢(かいびゃく)、高天原(たかまがはら)、国生み、黄泉国(よみのくに)、天岩屋戸神話、出雲の神々、神武東征といったテーマごとに、豊富な写真や解説・ルビを付けて、フルカラーで紹介。著者は、かつて日本人の多くがそうであった「謙虚に生きる姿」を取り戻し、神や自然を畏れ敬い、生かされていることに感謝しながら暮らすことや、祖先から受け継いだ御魂(心身)を大切にし、正月などの節目の行事を「心身更新」の機会とする必要性を強調しています。なお、巻頭の「発刊に寄せて」を著者と交流が深い天理市の石上神宮の森正光宮司が、また「序」を神職で歴史学の大家、上田正昭・京都大学名誉教授が執筆しています。


奈良新聞(4/22付)のコラム「國原譜(くにはらふ)」でも紹介されていた。考えてみれば、「国原」も、舒明天皇の「国見歌」(万葉集)に登場する言葉である。「大和には群山(むらやま)あれど とりよろふ天の香具山登り立ち国見(くにみ)をすれば 国原は煙(けぶり)立ち立つ海原(うなはら)は鴎(かまめ)立ち立つ うまし国ぞ蜻蛉島(あきづしま)大和の国は」。

タイトルを「フルコトブミ」と読んだのは、江戸時代の国学者・本居宣長。現代では「こじき」と読むが、今年はその『古事記』が撰上(せんじょう)されて1300年ということで、出版や旅行業界などは大いに力が入っている。特に島根県は「神々の国しまね」というスペシャルサイトまで用意して、観光客の誘致などに力を注いでいる。一昨年の「平城遷都1300年」の時の奈良を思い出させるような勢いがある。

それに負けじ、ということでもないが、弊社でもこの節目の年にあたり、記念出版物「記・紀にみる 日本の神々と祭祀の心」を発刊した。新聞連載を集約したもので、「古事記」「日本書紀」から見た、大和の国を中心とした信仰や祭祀などについて分かりやすくまとめている。「古事記、神話や神道、祭りの世界への入門書」といった趣きで、フルカラーの豊富な写真が目を引く。ある年代より上は、知っている神話の数々が登場するので、懐かしく読む方も多かろう。神話の世界を全く見聞きしたことがない若い世代にこそ、ぜひ読んでもらいたい1冊でもある。(恵)


同書の内容は、2008年~2010年にかけて奈良新聞に連載された記事がモトになっているそうで、私も読んだり切り抜いたりしているはずであるが、あまり記憶がない。「奈良まほろばソムリエ検定」の受験や「平城遷都1300年祭」に気をとられて、記紀にはあまり関心が行っていなかったのだろう。しかし『記・紀にみる日本の神々と祭祀の心』は、とても詳しくカッチリと書かれた本であるし、何より県下の神社や行事を中心にまとめられているところが有り難い。

入門書というより、中・上級者向けの本である。県観光局の『なら記紀・万葉 名所図会―古事記編―』を卒業した方に、ちょうど良いレベルだ。ぜひ、お読みいただきたい。

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