和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

つくり始める。

2016-03-01 | 詩歌
読売歌壇2月29日が印象に残る。

小池光選のはじまりの一首。

 風邪に臥す妻はむっくり起き上がり
   我の夕食つくり始める
     東京都 遠藤正雄

選評】 風邪で寝ている妻が、夕方になったら
起き出してわたしのための夕食をつくり出した。
妻とは、なんと有り難い。よほど心して食べな
ければならない。

三首目には

 あせらずにひと日ひと日を生き抜いて
   今日の煮物の味はよしよし
    東京都 白木静子

評】 ・・・・夕食の煮物がうまくできた。
結句で『よし』を重ねるところが自在感あって
調子がいい。


栗木京子選の三首目は

 点滴のスタンドつれて歌の載る日の新聞を
  求めむとゆく
     小浜市 田村芳子

評】 作者は入院中であろうか。歌壇俳壇の
載る日は売店新聞を買いにゆく。点滴スタンドを
『引きて』でなく『つれて』が明るい。


最後に引用するのは
岡野弘彦選のはじまりの一首

 独り居を支へてくれし犬も亡し
  この冬をわれはいかに生くべき
    鶴岡市 佐藤繁子

評】 五年前から独りの生活を送る私には
見落せない歌だった。心を押さえて、
自分の胸の内に向かって自らつぶやいて
いるような感じが切ない。
犬は暖かい生き物ですよね。

ここまでくれば、二首目も

 この先は他界と思う雪のつむ
  橋をわたれば妻ねむる墓
   所沢市 鈴木照興

評】 すぐ連想したのは『まれに来る夜半(よわ)も
悲しき松風を絶えずや苔の下に聞くらん』。
俊成が妻の墓所を訪うた秀歌。俊成ともひとしお違って、
心にしみる思いがある。


そういえば、この頃、読売俳壇を読まないなあ(笑)。
コメント
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