塚本珪一著「フンコロガシ先生の京都昆虫記」(青土社・2014年)
の目次のなかに、ヘルマン・ヘッセとある。何となく、なつかしい。
うん。そういえば、この頃、ヘルマン・ヘッセなんて聞かないなあ。
はい。わたしは小説は読まないので、ヘルマン・ヘッセと
あっても名前でしか知らないけれど、中学国語の教科書に、
ヘッセの少年期の頃の蝶に関する文が、あった気がします。
塚本珪一氏の本には「ヘルマン・ヘッセの自然の記号」
と4頁ほどの文でした。そこにも、塚本氏の昆虫の京都が
書かれていきます。
「春の御苑は成虫で越冬していたチョウと
春に現われるチョウが飛び始める。・・・・・・
御苑、糺の森、府中植物園、そして私が毎日犬と歩いていた
鷺森から雲母坂入り口あたりのチョウの記録を数年間続けて
いるが、いろいろなものが見えてくる。」(p182)
はい。このあとのヘッセを語る箇所が印象的です。
「ヘッセは『自然のものはすべて絵であり、
言葉であり、色さまざまな象形文字である』と書いている。
今日、私たちは自然からの音信である絵や文字を読み取ることを
忘れているが、出来なくなっているようである。
このことは、私は自然の『記号』として受け止める。
その記号はチョウだけではなく、花にも、カメムシにも、
チビクワガタにも、無数にある。
その解読のために御苑を歩き回る。昆虫がいっぱいいる
御苑の自然は私たちにとって『知の風土』であると思う。
菌類・植物・昆虫・野鳥・・・・・・
とそれぞれが美しく、その全体がすばらしい。」(p184)
ちなみに、この本の『はじめに』は、
こんな風にして、はじまるのでした。
「京都の虫=昆虫について語る。地球は虫の惑星であるが、
このことはまず理解されていない。ほとんどの人たちは、
地球はヒト種のものであると考えている。
私の言動は『人類の敵』である。それでも良い、
虫を守ることが地球を守ることと考える。・・・・・」
はい。ここはひとつ、腰をすえ、
「京都昆虫記」という惑星探索
へ誘われている気分となります。