はい。『定本柳田国男集』をひらくと、各巻の巻末には、
内容細目として、雑誌などに掲載された年月が記してあります。
定本柳田国男集の第14巻は、『木綿以前の事』からはじまります。
あとがきに、単行本『木綿以前の事』が昭和14年5月創元社刊行とある。
内容細目には、単行本に収まる各文章の題名と掲載年月が記されている。
それを見れば『木綿以前の事』は、大正13年10月に雑誌掲載されている。
同じ本の中の、『生活の俳諧』は、昭和12年12月の、第一高等学校講演。
そうか。『木綿以前の事』は、関東大震災の一年後に雑誌「女性」掲載。
それで、ひとつ気になるのは、終戦直後に出版された単行本は何だった?
『笑の本願』が、昭和21年1月養徳社から発行。
『先祖の話』が、昭和21年4月筑摩書房から。
『不幸なる芸術』は、昭和28年6月筑摩書房から。
昨日とりあげた、『涕泣史談』は、単行本『不幸なる芸術』に
おさめられていたのですが、内容細目を見ると『涕泣史談』は
昭和16年6月の国民学術協会公開講座で発表されておりました。
はい。ついつい、私などは現代の事として読んでしまがちですが、
それが発表された際の、時代背景までは気にかけずにおりました。
こうして気になるのは、ひとえに年を取ったお蔭かもしれません。
いたずらに年齢を重ねる癖して、けれども見えてくるものがある。