わたしは、本を読んだ後より、読む前の方がいろいろ思い楽しめるタイプ。
ということで、尾形仂著「歌仙の世界」(講談社学術文庫)を語ることに。
本文を読む前に、あとがきと、文庫版あとがきをひらく。
そして解説、那珂太郎氏の「尾形仂と『歌仙の世界』」を読む。
はい。これで私は満腹。もう本文は、
あとまわしにして語り始めることに。
『あとがき』には重要なキーワード。
まずは
「・・明治以来久しく文学史の裏通りに追いやられ、
高校の教科書からも姿を消してしまった現在、
連句の存在やそのおもしろさを知っている日本人は、
はたしてどれぐらいいるだろうか。・・・・
本書は、そうした状況の中で、一人でも多くの日本人に
連句のおもしろさについて知ってもらえたらと、まったくの
初心の読者を対象に想定して執筆したものである。 」(p272)
『あとがき』は2㌻で、次のページに
重要なキーワードが書かれております。
はい。おもむろに引用することに。
「 連句はつまるところ、連想くらべの遊びである。
なぜ芭蕉はその遊びに生涯を賭けたのか。
『余興 四章』では、連句が日本人の感性や
美意識や構想力の特性に裏うちされながら、
いかに深く日本人の生活の中に根をおろしてきたか、
そして芸術としてどんな特性や新しい可能性を秘め
ているかについて、考えてみた。
・・・・・初めはこの仕事に必ずしもそれほど
乗り気ではなかった私を叱咤督励し、はからずも
連句鑑賞の楽しさを十二分に満喫する幸せを与え
られた講談社出版研究所の中野景好さんに、
今となっては心から感謝したい。 」(p273)
ちなみに、これは昭和61年5月に刊行されたもので、
1989年12月に、講談社学術文庫に入っております。
那珂太郎氏の解説も読ませます。解説のさわりを引用。
「生真面目な碩学である尾形氏は、自分から私生活や私的経歴
について書くやうなこともあまりなさそうに思はれるので、
私の知る範囲のことを・・略記しておきたい。」(p277)
はい。こういう本は、きっと読了後は
咀嚼するのに精一杯で、おいそれとは
語り始められず黙ってしまうのが落ち。
読む前の方がお気楽に語れるのでした。