和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

ゆったりとそのかたわらに。

2022-07-25 | 古典
荘子の逍遥遊篇。それはわりかし最初の方にありました。
漢文は難しい。読むのはやめとこうと思う最初の方です。

「恵子(けいし)が荘子にいった」とはじまっています。

恵子とは、どなた?

「恵施(けいし・施はその名前)は
 孟子との問答で有名な梁(りょう)の恵王に仕えた
 荘子と同じ頃の論理学者であり政治家である。

 荘子との交渉も当時の思想家のなかでは最も密接であり・・・

 恵施の荘子に対する批判の重点は、要するに荘子の思想が
 余りにも超世俗的で現実に何ら役だたないということにあるが、 
 荘子はその非難に対して『無用の用』ということをもって答える。」

           ( p54 福永光司「荘子内篇」朝日文庫 )

はい。それでは、樗(おうち)が出てくる箇所。
そこを、現代語訳で引用。

「 恵子(けいし)が荘子にいった。
 『ぼくのところに大木があって、みなに樗と呼ばれている。

  その幹はこぶだらけで墨縄(すみなわ)もあてられず、
  小枝は曲がりくねってぶんまわしや差しがねもあてられない。
  道ばたに立っているのに、大工も知らぬ顔だ。

  ところで君の議論にしても、大きいばかりで役に立たない。
  みんながそっぽを向いてしまうのはそのせいだよ 』。


 荘子
 『君はヤマネコやイタチを知ってるだろう。
  あいつらは身を伏せて隠れ、うろついている獲物を待ち受けて、
  あっちこっちと跳ねまわり、高いも低いもへっちゃらだが、
  あげくに罠にかかったり、網にからめ取られたりして死んじまう。

  一方、ほら、あの大牛ときたら、
  空の果てまで垂れこめた雲みたいにでっかい。
  でっかいにはでっかいが、ネズミだって捕らえられない。

  いま君のところの大木は、役に立たんとこぼしているが、
  なぜそれを何一つない村里や、果てもなく広い曠野に植えて、

  ゆったりとそのかたわらに憩(いこ)い、
  のびのびとその下に寝そべらないんだい。

  まさかりや斧で若木のうちに切りたおされもせず、
  何かに危害を加えられる恐れもない。何の役にも立たなくたって、
  気に病むことなんてまったくないんだよ。 」

        ( p34~35 ちくま学芸文庫「荘子内篇」2013年 )


ちなみに、ちくま学芸文庫のp158には、

「人は皆な有用の用を知りて、無用の用を知ること莫(な)きなり」

ともありました。
やっと興味の糸口がつかめました。
夏は楽しく荘子を読めますように。
できれば樗(おうち)の木の下で。
  
 



            
コメント
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