和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

本を待つ時間。

2020-04-21 | 本棚並べ
芳賀徹著「きのふの空」(中央公論美術出版)に
大学新聞に寄稿した2頁の文(昭和59年4月)がありました。
そこに中村草田男の本を推薦しております。

「・・中村草田男の作品が好きで、
草田男の本はひそかに皆読んでしまっているというような、
そんな、すがたのいい学生にめぐりあってみたいものである。
草田男は昨年夏、82歳で亡くなったが、彼こそ
現代日本が世界に誇りうる詩的天才の一人であった。」
(p68~69)

紹介文はこの後に、草田男の単行本4冊を列挙してる。
うん。あらためて、その4冊を、ネット検索をしていると、
草田男には全集があることに、はじめて気づかされる。

さらに、検索していると、日本の古本屋さんに、
「東洋学園大学の廃棄本」として、全集19巻のうち16冊ですが、
16冊で2030円とある。2030円+送料1000円=3030円。
一冊につき、189円ほどです。うん。しばし躊躇して(笑)、
注文することにしました。

後は、本が届くのを待つばかり。
古本屋は、光書房(神奈川県藤沢市藤沢)。本の説明には
「廃棄証明書付、天に印有、見返しにシール貼付け」
さてっと、古本が届くまでの時間。
この時間を楽しみます。

司馬遼太郎著「昭和という『国家』」(NHK出版)で
こんな箇所がありました。

「私が『坂の上の雲』という小説を書こうとした動機は、
もうちょっと自分で明治を知りたいということでした。
動機のうちの、いくつかのひとつに、やはりみなさん
ご存じの中村草田男(1901~83)の俳句がありました。

  『降る雪や明治は遠くなりにけり』
草田男は明治34年の生まれでした。松山の人であります。
大学生であることを30歳ぐらいまで続けていた暢気な人でした。
・・・・・」(p162~163)

この「暢気な人」からの連想は
中村弓子著「わが父草田男」(みすず書房)でした。

「父親の死後、一家を支えるべき長男であるのに
神経衰弱で休学などして愚図々々している父(草田男)のことを
日ごろから徹底的に蔑視していたある親戚が、ある機会に
父に向かって『お前は腐った男だ』と思いきり罵倒した。
父はそのとき『俺はたしかに腐った男かもしれん。だが、
そう出ん男なのだぞ』と内心思い、受けた侮辱とそれに
対抗する自負心の双方を、訓読みと音読みで表わす
『草田男』の名を俳号としたのである。・・・・・・
句帳の中の『草田男』の俳号の現われる位置から推測して、
昭和3年の前半のことであろうと思われる。・・・」(p74)

こうして、本が届くのを
待っている時間の楽しみ。

それにしても、芳賀徹氏は、中村草田男を
「現代日本が世界に誇りうる詩的天才の一人であった。」
と言い切るのですからね。
その詩的天才が3030円で読める。
光書房と、それから東洋学園大学とに感謝しなきゃ。

そして、「そんな、すがたのいい学生」と
いつの日か、楽しい会話をしてみたい(笑)。



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