和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

巻頭コラム。それに厚切りポークカツ。

2018-08-20 | 短文紹介
「新潮45」9月号。私には読み甲斐がありました。

徳岡孝夫氏の巻頭随筆は、毎回1頁です。これだけでも、
今回だけでも、立ち読みして欲しいんだけどなあ。1頁。

雑誌の最後には、佐伯啓思氏の連載。
今まで未読だったのですが、何気なくめくっていると
道元への言及で終っておりました。

ほかには、
朝日新聞社へ抗議しに行ってきた
ケント・ギルバートさんと山岡鉄秀さんの
お二人が別々に寄稿しております。
どちらもいいんだけれど、ここでは、
山岡鉄秀氏の文のはじまりを引用。

「今年の2月22日、オーストラリアで衝撃的な本が出版された。
タイトルはSilent Invasion。直訳すれば、『静かなる侵略』だ。
サブタイトルは『オーストラリアにおける中国の影響』。・・
人口2500万人程度のオーストラリアで、発売以来2万部以上が
売れたベストセラーとなっている。大手書店や空港の書店では
現在も平積みされている。・・・・」

以下に山岡氏は、著者と本の内容とを噛み砕いて紹介しておられます。


「新潮45」9月号の特集は「『茶の間の正義』を疑う」。
山本夏彦氏の言葉を、特集の題名に取り上げたのでした。

「新潮45」の巻頭随筆の徳岡孝夫氏が、私に印象に残り、
何とか、とりあげたいと思うのでした。
どこから、はじめましょう。
と本棚から取り出したのが、
徳岡孝夫著「完本 紳士と淑女 1980~2009」(文春新書)。

そのまえがきに故山本夏彦氏への言及があります。

「・・・私は長く『諸君!』巻末を書いた
故山本夏彦の名言を思い出さずにはおられない。
『汚職は国を滅ぼさないが、正義は国を滅ぼす』というのである。
すべての人間には金銭欲があるから、汚職は永遠になくならない。
汚職を完全追放するには、人間すべてを殺す以外に手はない。
だが、正義は、国を滅ぼせる。・・」

「諸君!」の巻末コラムは山本夏彦でした。
「諸君!」の巻頭コラムはどなただったか。
まえがきは、つづきます。

「三十年間『諸君!』に書き続けたコラム・・三十年という長い年月、
私は休むことなく『紳士と淑女』の材料を探しながら暮らした。
雑誌『諸君!』巻頭の七ページに何を書くか?
月によって違うが毎月18~20日に〆切りが巡ってくる。
その日に備えて、一日も休まずに日本語三紙、英語一紙の新聞を切り抜く。
関係のある資料を探す。材料をひねくり回し、ほぼ一週間かけて書き上げる。
読み返し、ときには改稿する。〆切りの日が来ると、
午後一時には学生アルバイトがJR駅前まで受け取りに来る。
落ち合って三階の食堂で厚切りポークカツ二つとビール小瓶一本を注文する。
食べ終わったところで原稿の入った封筒を手渡す。
『落とすな』『電車の中で居眠りするなよ』・・・・。
食堂は横浜市南部の駅前ショッピングモールにある。
三十年間に私はトンカツを計720皿注文した勘定になる。
取りに来る学生アルバイトには男も女もいたが、
『お腹いっぱいですから』と厚切りポークカツを辞退した子は、
ついに一人もいなかった。
ぶらぶら歩いて帰宅する。原稿を渡してから一時間半ほどして、
編集部から『届きました』と電話がある。責任は私の手を離れた。
書斎の床いっぱいに散らばった切り抜きを片付ける。
毎月、同じように責任を果たしてきた。」

もう少し引用させてください(笑)。
ちなみに、これが書かれたのは平成21年8月です。

「鳩山演説を聞いて・・・友愛の次は正義か!
私はほとんど卒倒しかけた。これを書かずに何を書くか。
思わず立ち上がってバンザイを叫びかけたが、
その瞬間、我に返った。私の右腕には点滴の針が差され、
チューブの下には尿瓶がぶら下がっていた。
三月(2009年)に入院する直前、
『諸君!』の編集長から『六月号で休刊になります』と、
雑誌の終焉を聞かされていた。おまけに私の視力は
近頃とみに悪化し、大きいルーペを使っても
もはや新聞の切り抜きは読めなくなった。・・・」


こうして、書いた方が、2018年の現在「新潮45」に巻頭随筆を連載。
こちらは、たかだか1頁なのですが、ぜひとも、立ち読みでいいので、
「新潮45」9月号の徳岡孝夫の巻頭随筆を読んでみて頂きたい。
はい。それを読んでもらいたいがために引用を重ねました(笑)。

そこにあったのは、
1ページの巻頭随筆で、学べる「ジャーナリズムとは何か」。

どうぞ、本屋へ行く機会がありましたら、ご覧ください。




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