映画とライフデザイン

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しあわせの雨傘  カトリーヌドヌーヴ

2011-09-25 12:48:07 | 映画(フランス映画 )
「しあわせの雨傘」はカトリーヌドヌーヴがフランスの若手名匠フランソワ・オゾン監督と組んだ新作だ。コメディと一言で片づけるのはどうかと思う。今のカトリーヌドヌーヴの存在感が強い映画である。夫が病気に倒れ、有閑マダムが会社の経営を任されるという話だ。その会社が傘会社ということもあり、「シェルブールの雨傘」のオマージュと思わせる色彩設計である。登場人物も個性派ぞろい。飽きさせずに100分間楽しまさせてくれる。


時代設定は1977年、主人公スザンヌ・ピュジョルことカトリーヌ・ドヌーヴは、優雅で退屈な毎日を送る有閑マダムだ。ジャージ姿で豪邸のまわりをジョギングするのが日課だ。結婚30年になる夫は雨傘工場の経営者で、妻には仕事も家事もやるなと命令する典型的な亭主関白だ。娘は、家を顧みない夫との関係がうまくいかない。一方、息子は芸術家志望で工場を継ぐことには全く興味がない。


そんな中、雨傘工場はストライキに揺れていた。労働組合の要求を断固拒否した夫は社長室に監禁される。妻は昔からの知り合いの市長に力を貸してくれと頼みに行く。市長は共産党系だ。今でも彼女のことが忘れられない市長の尽力で夫は解放される。ところが、ストのショックで心臓発作を起こし倒れてしまう。そんな騒動が起き、ビジネスと無縁のカトリーヌがいつの間にか工場を運営する羽目になる。しかし組合との交渉で、創業者の娘でもある彼女は、父親の代から勤める従業員たちに対して家族のような思いやりを持って接しストは終結してしまう。息子や娘の力も借りながら、思いがけず会社はいい方向に進んでいくのであるが。。。。。

カトリーヌドヌーヴは若き日の美貌の面影は当然残っているが、動きが緩慢で多少ふくよかになった。そのせいか、コメディタッチが似合う女優になった。動きが妙におもしろいと思ってしまう場面が多い。60年代の彼女には考えられない。2つ違いの吉永小百合がいまだに美しい体型を維持して二の線から変わらないのとは対照的だ。
そんな彼女が突如として社長になってしまう。そのあとのストーリーはあんまり不自然と感じない展開だったので飽きずに見ていられた。70年代後半はディスコブームの時代で、カトリーヌが昔軽い関係のあった市長とディスコで踊る場面がある。それはそれで見ていて楽しい。


ミッテラン大統領となるのは81年だが、その前もフランスは左翼思想が強い国であった。組合問題をストーリーに組み込むのは不自然ではない。組合問題を話し合いで解決するというオチを作るだけでなく、その雨傘会社に芸術家希望の息子ともどもデザインの概念を持ち込む設定はフランス映画らしくていい。彼女の代表作「シェルブールの雨傘」の色彩感覚は実に鮮やかであった。この映画も原色の雨傘でうまく色鮮やかに化粧されている。これ自体もけっして大胆ではない。現代アメリカラブコメの色彩感覚より若干抑えられている印象がある。そんな美術設計や現代フランスのセンスある色彩感覚も楽しめるのでいい感じだ。


それにしてもフランソワオゾン監督の映画ってたのしいなあ。ついこの間も「リッキー」で思いっきり楽しまさせてくれたけど、この映画もいい。でもカトリーヌには相当気を使っている。最後のカトリーヌドヌーヴの歌をもってくるあたりのやり方は、60年代のスター歌謡映画のタッチでこれはこれで笑えた。

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