残雪の飯豊本山(後編)
車内で一泊し、早朝川入から飯豊本山目指して出発した。種蒔山でようやく飯豊本山が全容を見せるようになり、切合小屋に12時半に到着した。
切合小屋の先の登山道に咲くショウジョウバカマ
ここから再び雪渓の登りになる。種蒔山ほどの急で危険な登りでは無いが、結構長い雪渓だ。アイゼン無しでキックステップで登ったので余計に体力を消耗する。登りつくと今度は下りになり、草履塚という見晴らしの良い場所に到着し、飯豊大日岳がドンと大きく聳え立って見える。小休憩して進むと、このルートの名所、御秘所の岩場が眼下に見えるようになる。その尾根を登りつけば、いよいよ飯豊本山は間近となる。
飯豊本山(中央のなだらかな隆起)と御秘所の岩場(草履塚から)
姥権現の先の稜線に咲いていたミヤマキンバイと大日岳
御秘所の手前に姥権現という岩の所に地蔵が祭られた場所がある。ハクサンイチゲがようやくちらほらとほころび始めたところだった。大群落を期待していたのだが、まだ時期的に早かったようだ。地図で見ると御秘所を過ぎたあたりにヒナウスユキソウが咲いているらしいので探してみたが、これも芽らしきものが生えていただけで花を見ることはできなかった。頑張って急な岩場を登りつくと、そこにテント場らしき平らな場所があり、石の積まれた展望台があった。水場を示す道標があったので、そちらに水を汲みに行くと・・・水場は完全に雪の下、場所すら確認できなかった。僅かに登って飯豊本山小屋に到着した。時間は午後3時40分、私の足にしてはまずまずの時間だ。
飯豊本山小屋
本山小屋に荷物を置いて、三脚とカメラとおやつだけ持って飯豊本山山頂に向かう。小屋から山頂までは15分から20分ほどで到着する。一度歩いてみたいと思っているダイクラ尾根が右手に長く延びている。山頂から大日岳を見ると、まだ雪がたくさん、そしてその右手に連なる北股岳、門内岳の稜線も雪がたっぷりだ。これではおそらく向こうの尾根筋も花は咲いていないだろう。
飯豊本山山頂.午後4時到着.
飯豊本山から見る大日岳.まだ雪がたっぷり.
北股岳から門内岳の山々.残雪たっぷり,花はまだだろう.
山頂でのんびりした後、小屋に戻る途中で、先ほど三国岳でお会いした地元の方とすれ違った。というよりは、山頂方向ではなくて御西岳へのトラバース道方向に進んで行った。何かと思えば、後に小屋でお話してわかったのだが、そちら側に池塔があって、そこで水が汲めるのだという。さすがに地元の方は詳しい。私は水を確保するために本山小屋に置いてあったスコップを借りて小屋の東側にある雪渓を掘って、深部にあるきれいな雪を取り出してそれを溶かして使用した。岩崎さんとおっしゃるその方は、大きなザックの中はほとんどがアルコール類ばかり(だったと思う)。この辺りの小屋の管理人さんたちは皆知り合いらしく、本山小屋に酒類を置いて行くために持ってきたという。私もあやかってお酒をいただいたのだが、これがまた今までに飲んだことのない変わった酒、蜂蜜を発酵して作った「みいど」という酒だった。ワインに近いような味にほんのりと蜂蜜の香りがする。岩崎さんは普段は農家をされているが、冬季は酒蔵に勤めているそうで、その酒蔵で作っている稀少なお酒だそうだ。売っている場所を聞くと、さっそく酒蔵の社長さんに電話して聞いてくれたのだが、結局は酒屋まで買いに行くことなく、下山後、岩崎さんのご自宅にお邪魔させていただき、稀少な「みいど」(商品名は美禄の森)2本を譲っていただき、さらに会津の地酒「蔵」あらばしりを一升瓶でいただいてしまった。甲府に帰った後、当院職員を誘って5人でこの2つの酒を賞味したが、どちらも物凄く美味かった。美禄の森は言うまでも無いのだが、蔵のあらばしりはコクのある甘系統の酒で、冷やして飲むと最高だ。(2人は途中で酔いつぶれてリタイア・・・)
夕暮れの大日岳.飯豊本山小屋から
いただいたお酒ですっかり酔っ払った私は、翌朝(といっても未明2時ごろ)に昇っている天の川と、月に照らされた山の景色を撮影するため、8時過ぎには早々に寝かせてもらった。この日小屋に泊まっていたのは私と岩崎さん、そしてもう1人、地元の方でスキーを担いで来られた方(名前は忘れてしまいました)の3人。この飯豊連邦が地元の人たちに大変愛されている山だということをつくづく感じた。山梨の山もこうであって欲しいと思った。
未明1時半に目を覚まし、外に出てみると・・・霧が立ち込める真っ白な世界、星どころの騒ぎではなく、ヘッドライトだとほんの数メートルしか視界が利かない。しかし、空を見上げるとうっすらと月明かりが見え、さほど厚い霧ではなさそうだ。じっと待っていると、時折星が見え出す。そして遂に、西の方向に飯豊大日岳が姿を現した。空は曇り空、時折雲がピカピカと光を放ち、稲妻が走っているのがわかる。ちょうど月が昇って来た時間で、大日岳が月光で浮かび上がって見える。星空の設定で何枚か撮影し、その後15分間露光を設定して小屋に戻り、休憩していると、20分くらい立った頃だろうか、突然ザーッという雨とはちょっと違う音が小屋の屋根と窓を叩く。急いで外に出ると・・・なんと、6月だというのにあられに近い雪が降っていた。山は隠れてしまい、ここで夜の撮影は終りとなる。
落雷一閃,月光照らす飯豊大日岳 右手の町に落雷が映っている.
再びシュラフに潜って横になり、ちょっとウトウトして次は5時に起きた。外はみぞれ混じりの小雨、天気予報からして回復の可能性は低いので、さっさと帰り支度して5時半に小屋を出た。切合小屋まで下りると雨は上がっており、大日岳の下3分の2が姿を現してきた。朝食を取りつつそこで1時間ほど三脚を構えて待ったが、結局全容を見せることはなかった。
朝の飯豊連峰は霧の中.
ほころび始めたハクサンイチゲ 姥権現付近.
三国岳でゆっくり休んでいると、岩崎さんともう1人の方が追いついてきて、そこから先は3人で一緒に下山した。(スキーヤーの方は地蔵山から別コースで滑って下りた。)12時40分、川入駐車場到着。下山後、岩崎さんと私は飯豊の湯に立ち寄って汗を流した後、前述の如く岩崎さんのご自宅にお邪魔させてもらった。写真はいまひとつだったが、この地域の方々の人柄の良さも存分に味わうことができ、最高の山旅ができた。飯豊連邦、すっかり気に入ってしまった。
アカヤシオツツジ さらば飯豊,また来ます.
(今回の山行は、私のブログにリンクしている「outdoorlife 山歩き」のsanaeさんのページ、および「三脚マンと弱力女の登山日記」のブログを参考にさせていただきました。)
車内で一泊し、早朝川入から飯豊本山目指して出発した。種蒔山でようやく飯豊本山が全容を見せるようになり、切合小屋に12時半に到着した。
切合小屋の先の登山道に咲くショウジョウバカマ
ここから再び雪渓の登りになる。種蒔山ほどの急で危険な登りでは無いが、結構長い雪渓だ。アイゼン無しでキックステップで登ったので余計に体力を消耗する。登りつくと今度は下りになり、草履塚という見晴らしの良い場所に到着し、飯豊大日岳がドンと大きく聳え立って見える。小休憩して進むと、このルートの名所、御秘所の岩場が眼下に見えるようになる。その尾根を登りつけば、いよいよ飯豊本山は間近となる。
飯豊本山(中央のなだらかな隆起)と御秘所の岩場(草履塚から)
姥権現の先の稜線に咲いていたミヤマキンバイと大日岳
御秘所の手前に姥権現という岩の所に地蔵が祭られた場所がある。ハクサンイチゲがようやくちらほらとほころび始めたところだった。大群落を期待していたのだが、まだ時期的に早かったようだ。地図で見ると御秘所を過ぎたあたりにヒナウスユキソウが咲いているらしいので探してみたが、これも芽らしきものが生えていただけで花を見ることはできなかった。頑張って急な岩場を登りつくと、そこにテント場らしき平らな場所があり、石の積まれた展望台があった。水場を示す道標があったので、そちらに水を汲みに行くと・・・水場は完全に雪の下、場所すら確認できなかった。僅かに登って飯豊本山小屋に到着した。時間は午後3時40分、私の足にしてはまずまずの時間だ。
飯豊本山小屋
本山小屋に荷物を置いて、三脚とカメラとおやつだけ持って飯豊本山山頂に向かう。小屋から山頂までは15分から20分ほどで到着する。一度歩いてみたいと思っているダイクラ尾根が右手に長く延びている。山頂から大日岳を見ると、まだ雪がたくさん、そしてその右手に連なる北股岳、門内岳の稜線も雪がたっぷりだ。これではおそらく向こうの尾根筋も花は咲いていないだろう。
飯豊本山山頂.午後4時到着.
飯豊本山から見る大日岳.まだ雪がたっぷり.
北股岳から門内岳の山々.残雪たっぷり,花はまだだろう.
山頂でのんびりした後、小屋に戻る途中で、先ほど三国岳でお会いした地元の方とすれ違った。というよりは、山頂方向ではなくて御西岳へのトラバース道方向に進んで行った。何かと思えば、後に小屋でお話してわかったのだが、そちら側に池塔があって、そこで水が汲めるのだという。さすがに地元の方は詳しい。私は水を確保するために本山小屋に置いてあったスコップを借りて小屋の東側にある雪渓を掘って、深部にあるきれいな雪を取り出してそれを溶かして使用した。岩崎さんとおっしゃるその方は、大きなザックの中はほとんどがアルコール類ばかり(だったと思う)。この辺りの小屋の管理人さんたちは皆知り合いらしく、本山小屋に酒類を置いて行くために持ってきたという。私もあやかってお酒をいただいたのだが、これがまた今までに飲んだことのない変わった酒、蜂蜜を発酵して作った「みいど」という酒だった。ワインに近いような味にほんのりと蜂蜜の香りがする。岩崎さんは普段は農家をされているが、冬季は酒蔵に勤めているそうで、その酒蔵で作っている稀少なお酒だそうだ。売っている場所を聞くと、さっそく酒蔵の社長さんに電話して聞いてくれたのだが、結局は酒屋まで買いに行くことなく、下山後、岩崎さんのご自宅にお邪魔させていただき、稀少な「みいど」(商品名は美禄の森)2本を譲っていただき、さらに会津の地酒「蔵」あらばしりを一升瓶でいただいてしまった。甲府に帰った後、当院職員を誘って5人でこの2つの酒を賞味したが、どちらも物凄く美味かった。美禄の森は言うまでも無いのだが、蔵のあらばしりはコクのある甘系統の酒で、冷やして飲むと最高だ。(2人は途中で酔いつぶれてリタイア・・・)
夕暮れの大日岳.飯豊本山小屋から
いただいたお酒ですっかり酔っ払った私は、翌朝(といっても未明2時ごろ)に昇っている天の川と、月に照らされた山の景色を撮影するため、8時過ぎには早々に寝かせてもらった。この日小屋に泊まっていたのは私と岩崎さん、そしてもう1人、地元の方でスキーを担いで来られた方(名前は忘れてしまいました)の3人。この飯豊連邦が地元の人たちに大変愛されている山だということをつくづく感じた。山梨の山もこうであって欲しいと思った。
未明1時半に目を覚まし、外に出てみると・・・霧が立ち込める真っ白な世界、星どころの騒ぎではなく、ヘッドライトだとほんの数メートルしか視界が利かない。しかし、空を見上げるとうっすらと月明かりが見え、さほど厚い霧ではなさそうだ。じっと待っていると、時折星が見え出す。そして遂に、西の方向に飯豊大日岳が姿を現した。空は曇り空、時折雲がピカピカと光を放ち、稲妻が走っているのがわかる。ちょうど月が昇って来た時間で、大日岳が月光で浮かび上がって見える。星空の設定で何枚か撮影し、その後15分間露光を設定して小屋に戻り、休憩していると、20分くらい立った頃だろうか、突然ザーッという雨とはちょっと違う音が小屋の屋根と窓を叩く。急いで外に出ると・・・なんと、6月だというのにあられに近い雪が降っていた。山は隠れてしまい、ここで夜の撮影は終りとなる。
落雷一閃,月光照らす飯豊大日岳 右手の町に落雷が映っている.
再びシュラフに潜って横になり、ちょっとウトウトして次は5時に起きた。外はみぞれ混じりの小雨、天気予報からして回復の可能性は低いので、さっさと帰り支度して5時半に小屋を出た。切合小屋まで下りると雨は上がっており、大日岳の下3分の2が姿を現してきた。朝食を取りつつそこで1時間ほど三脚を構えて待ったが、結局全容を見せることはなかった。
朝の飯豊連峰は霧の中.
ほころび始めたハクサンイチゲ 姥権現付近.
三国岳でゆっくり休んでいると、岩崎さんともう1人の方が追いついてきて、そこから先は3人で一緒に下山した。(スキーヤーの方は地蔵山から別コースで滑って下りた。)12時40分、川入駐車場到着。下山後、岩崎さんと私は飯豊の湯に立ち寄って汗を流した後、前述の如く岩崎さんのご自宅にお邪魔させてもらった。写真はいまひとつだったが、この地域の方々の人柄の良さも存分に味わうことができ、最高の山旅ができた。飯豊連邦、すっかり気に入ってしまった。
アカヤシオツツジ さらば飯豊,また来ます.
(今回の山行は、私のブログにリンクしている「outdoorlife 山歩き」のsanaeさんのページ、および「三脚マンと弱力女の登山日記」のブログを参考にさせていただきました。)