山梨百名山から見る風景

四方を山に囲まれた山梨県。私が愛して止まない山梨の名峰から見る山と花と星の奏でる風景を紹介するページです。

北岳、花調査(後編) ~北岳肩の小屋から山頂、ボーコン沢の頭を経て嶺朋ルートを下る~

2010年07月28日 | 南アルプス
 7月4日 天候曇り時々晴れ

 北岳の山頂にかかる天の川の撮影を狙っていたのだが、夜はずっと雨が降り続き、星も月も全く見えなかった。ぐっすりと眠って朝4時に目が覚める。外に出ると、小雨が降り、真っ白な霧が立ち込める視界の悪い朝だった。御来光など全く望めない。
 5時過ぎ、朝食になる。この日もさほど急ぐ必要も無く、2順目の食事をとってゆっくりと準備し、6時半過ぎに小屋を出発して山頂に向う。霧と小雨が混じる天候で、レンズがすぐに曇ってしまうため、ハンカチやタオル、さらには・・・靴下でレンズを覆い、濡れないようにしながら歩く。山頂直下のハクサンイチゲのお花畑はまだ5分から7分咲きといったところで、おそらくは来週から連休ごろが見頃になったことだろう。

    朝霧に濡れるハハコヨモギ(フラッシュ同調)


    霧に立つハクサンイチゲ


    7分咲きのハクサンイチゲお花畑


    朝霧に濡れるキタダケソウ(フラッシュ同調)

 山頂を通り過ぎてトラバース道に下りて行くと霧と小雨に濡れたキタダケソウが見え始めた。2年ぶりに見るキタダケソウに出会えてほっとする。トラバース道に下りて北岳山荘側に進むとキタダケソウのお花畑になっており、ちょうど満開のキタダケソウを見ることができた。しかし、以前来た時と何か違うのは・・・ハクサンイチゲの混ざっている量がだいぶ増えた気がする。正確に計測しているわけではないので何とも言えないが、前はキタダケソウの中にわずかにハクサンイチゲが混ざっていただけだったような気がするが、今回はどこを見てもハクサンイチゲが混入して咲いている。これも温暖化の影響なのか、キタダケソウよりも暖かい場所で生育できるハクサンイチゲが増えてくるのは当然の現象なのかもしれない。

    梅雨に濡れるキタダケソウ


    キタダケソウのお花畑  ハクサンイチゲがだいぶ混入している。


    別の場所。 やはり以前よりハクサンイチゲが多い気がするが・・・

 たっぷり見物した後、八本歯のコルに下りる。このルートを通って左俣雪渓を下る物好きは誰もいないかと思いきや、2~3人通った足跡が残っていた。八本歯のコルに行くと、シナノキンバイのお花畑が広がり、岩の間にはイワベンケイやミヤマシオガマが咲いていた。そして足元を見ると、黒い百合、ミヤマクロユリが咲いていた。

    八本歯のコルのシナノキンバイお花畑


    ミヤマクロユリ  足元に咲いていた。


    岩場に咲いていたミヤマシオガマ


    ツガザクラ

 ボーコン沢の頭に行くために、ハシゴを登ったところで吊り尾根のほうから7~8人のグループが下りてきた。何故にここを下りてくるのか?と不思議に思って話してみると、左俣雪渓を登る時に霧に巻かれてルートを見失い、吊り尾根の途中に登りついてしまったそうだ。よくぞあんな急登りの雪渓を無事に登りつけたものだと感心する。そう思っていたら、その後にも2組、全部で15人ほどの人たちと出会い、この日に朝一番で左俣雪渓を登った人たちは皆ルートを誤ったらしい。無事に登りつけてなによりだった。

    池山吊尾根の露出したハイマツの根と間ノ岳


    池山吊尾根から見る北岳バットレス  やっぱり北岳は凄い!


    吊尾根のナナカマドと間ノ岳、農鳥岳

 池山吊り尾根のボーコン沢の頭までのルートはところどころハイマツの中でルートのわかりにくい場所があった。この頃には雨が上がっていて青空が見えるようになっており、時折北岳バットレスが山頂近くまで姿を現すようになっていた。ボーコン沢の頭手前のピークがバットレスの眺望抜群で、ここで休憩して昼食をとる。時間は10時半、私がしつこく写真を撮っていたおかげで、すっかり遅くなってしまった。

    ボーコン沢の頭のケルン


    嶺朋ルート入口の看板と北岳


    嶺朋ルート上部はコイワカガミがたくさん咲く

 昼食後、ボーコン沢の頭に11時25分到着、ここの池山小屋への分岐を右に曲がらずに真直ぐ進むと嶺朋ルートのある広河原直下りの尾根に行ける。ルートの入り口には「広河原へ3時間」と書かれた嶺朋ルート入り口の看板が立てられている。眺望の良い尾根はここで終り、ここから少しばかりハイマツの薮をこぎ、樹林帯の中へと道は進む。ところどころ道なのかどうかわからないところもあるのだが、ルート上にはペンキサインがつけられていて、これを見落とさずに下れば迷うところはない。しかし、滑りやすい急斜面あり、また時として岩を飛び越すところあり、さらに中腹から下のツガ林は倒木が何ヶ所もあり、三脚をつけた私のザックは何度もひっかかって通過しにくいことがあった。決しておすすめできるルートとは言えない、というのが私の率直な感想である。

    上部の雪渓残る草付。鹿の食害か、生えているのはバイケイソウばかり。


    中腹部の岩稜帯。左手に御池小屋が見え、右下には南アルプス林道が見える。


    中腹の苔の生した樹林帯


    倒木のところにつけられたペンキサイン。通過に苦労した。

 ルート最下部のカニコウモリ大群落を抜けると下に遊歩道が見え始め、広河原園地の近くに抜け出た。時間は14時25分、雨の後で滑りやすく、ピッチが上がらなかったこともあるのだが、嶺朋ルート入り口の看板のところから2時間40分の行程だった。

    下部のカニコウモリ大群落


    広河原園地の近くの遊歩道に出る。

 2年ぶりのキタダケソウとの再会、しかし、変化しつつある北岳のお花畑。果たしていつまでこの景色を見ることができるのか、そんな不安の残るレインジャー花調査を兼ねた北岳山行となった。
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