新潟県と群馬県の県境にある平ヶ岳は、登山口の檜枝岐までのアプローチが遠く、また、山頂まで11㎞という距離は日帰りで行くには果てしなく遠い。いつかは行ってみたいと思いながらもなかなか行けずにいた山である。9月3連休は珍しく何も仕事が入らずに3日間そっくり休みとなった。この機会に平ヶ岳に行ってみることにしたが、連休2日前の当直が尾を引いて連休初日からかなり眠い。さて、どうなることやら・・・。
9月15日の連休初日は早朝3時に目が覚めた。起き上がってはみるが、前々日の当直疲れが全く抜けず、眠い上に体が強烈にだるい。ひとまず朝風呂に入って目を覚まし、準備して4時半に自宅を出発する。中央道、圏央道、東北道を経て西那須野インターで降り、檜枝岐に向かう。走行距離約400㎞、カーナビで約7時間の行程だ。しかし、それにしても眠すぎる。東北道まで乗ったは良いが眠すぎてサービスエリアでちょっと横になったつもりだったが、気が付けば2時間も眠っていた。そして目的地檜枝岐の先、鷹ノ巣平ヶ岳登山口に到着したのは午後2時になってしまった。午前中に登り始めて姫池のほとりでテント泊と考えていたが、いくらなんでも午後2時では遅すぎる。ちょうど下山してこられた方がいたのでコース状況を聞いてみると、細尾根を過ぎると上は木道が整備されていて迷うところは無いという。(ちなみにこの方はかなり足が速く、山頂まで4時間半だったそうだ。コースタイムでは7時間半くらいかかる。)車内泊するにも中途半端な時間だし、17日の天候も思わしくなさそうだ。意を決して、ここは得意の夜間登山することにして、午後2時半から登り始める。荷物軽量化のためテントではなくツエルトにして、シュラフを持たずシュラフカバーとウォームアップシーツで一夜を凌ぐことにする。
平ヶ岳登山口。駐車場は25台ほど駐車可能。
細尾根を登る。既に陽は西に傾いている。
細尾根。スリップに注意を払う。
下台倉山の直下はかなりの急傾斜。ロープが何本も設置されている。
林道を進むと細い橋を渡り、右側の登山道に入ってすぐに細尾根に取り付く。ここから標高差約700mの急登りが続く。7~8人の下山者とすれ違ったが、皆相当疲れた顔をしている。確かに往復21㎞、累積標高差約1600mは容易くは無い。そして約3時間かけて、まだ明るい午後5時20分、下台倉山に到着した。細尾根はなんとか明るいうちに通過したが、まだ歩いた距離は3分の1にも満たない。稜線には着いたがこの先がまだまだ長いのだ。
下台倉山到着。時間は午後5時20分。
夕暮れの燧ケ岳。心地良い夕風が吹く穏やかが夕暮れだったのだが・・・
隣の台倉山の手前で日没となり、台倉山頂上でヘッドライトを装着する。この頃には燧ケ岳山頂あたりに雲がかかってはいたものの、至って穏やかな天候だった。すっかり暗くなった夜7時過ぎ、林の中から空を見上げると、夏の大三角形を貫くきれいな天の川が空を横切っていた。順調に行けば9時ごろには姫池に映る天の川が見られそうだ、と期待が膨らみ、眠気と闘いながらひたすら姫池目指して歩く。ところが、7時半を過ぎた頃から周辺の空に真っ黒な雲がかかりはじめ、雷鳴こそは響かないものの稲光が光り始めた。最後の登り、池ノ山の登りにさしかかった頃、その黒雲は池ノ山の上にもかかり始め、頭上でピカピカと光り始めた。笹の中に一旦身を潜めてやり過ごし、再び登り始めたが、今度は雷鳴を伴ってさらに激しく光り始めた。標高は1900m、目的地姫池まではあと1時間とかからないだろうが、ここであきらめて林の中まで下りてツエルトを張ってビバークすることにする。9時半、木の枝にツエルトの端を紐で吊るし、中に潜り込んで夕食、10時にシュラフカバーに潜り込んだが、意識を失うかのようにあっという間に眠りについてしまう。
そして目を覚ましたのは未明2時。汗で濡れた下着と服が冷たくて寒く目を覚ました。外を見れば満天の星空が広がっている。しかしまだかなり眠気が強く、下着を着替えてさらに1時間ほど寝て、3時に起床、ツエルト撤収して3時半にまた歩き出す。東の空に昇った金星が眩しいほどに輝いている。その上にはオリオン座と冬の大三角形、それを貫く冬の天の川が見えている。北西の空にはカシオペア座に向かって夏の天の川が立ちあがっている。
森に昇ったオリオン座と冬の大三角形。木の間の明るい星が金星、中央上の明るい星は木星。
北西の空に天の川が垂直に立ち上がる。
オリオン座と冬の大三角形、さらに金星。中央に見える山は燧ケ岳。
燧ケ岳に昇るオリオン座と冬の大三角形(拡散フィルター使用)
カシオペア座と北斗七星(わかりますか?右の低空に登って来た北斗七星、天の川の中にいるカシオペア座)
池ノ岳に立ち上がる薄明の天の川
薄明の空と金星
薄明の空に消え行くオリオン座と冬の大三角形
4時半にはもう星の輝きは消え始めてしまうので、おそらくは姫池に映る天の川は撮影は困難だろうとこの時点で判断し、眺望の得られる池ノ山山頂直下で日の出を迎えることにした。ちょうど燧ヶ岳の真上にオリオン座と冬の大三角形が昇って来ているところだった。やがて空は薄明の深い青色に変わり、東の空がオレンジ色に輝き出す。次第に星の輝きは朝の空に消え、そして日の出を迎える。何度見ても美しい山上の夜明けだ。(後編に続く)
夜明け前の平ヶ岳
夜明け前の燧ケ岳
夜明けの空①
夜明けの空②
山上の日の出
朝日浴びる平ヶ岳
(後編は朝の姫池、平ヶ岳の美しい景色を掲載します。ご期待ください。)
9月15日の連休初日は早朝3時に目が覚めた。起き上がってはみるが、前々日の当直疲れが全く抜けず、眠い上に体が強烈にだるい。ひとまず朝風呂に入って目を覚まし、準備して4時半に自宅を出発する。中央道、圏央道、東北道を経て西那須野インターで降り、檜枝岐に向かう。走行距離約400㎞、カーナビで約7時間の行程だ。しかし、それにしても眠すぎる。東北道まで乗ったは良いが眠すぎてサービスエリアでちょっと横になったつもりだったが、気が付けば2時間も眠っていた。そして目的地檜枝岐の先、鷹ノ巣平ヶ岳登山口に到着したのは午後2時になってしまった。午前中に登り始めて姫池のほとりでテント泊と考えていたが、いくらなんでも午後2時では遅すぎる。ちょうど下山してこられた方がいたのでコース状況を聞いてみると、細尾根を過ぎると上は木道が整備されていて迷うところは無いという。(ちなみにこの方はかなり足が速く、山頂まで4時間半だったそうだ。コースタイムでは7時間半くらいかかる。)車内泊するにも中途半端な時間だし、17日の天候も思わしくなさそうだ。意を決して、ここは得意の夜間登山することにして、午後2時半から登り始める。荷物軽量化のためテントではなくツエルトにして、シュラフを持たずシュラフカバーとウォームアップシーツで一夜を凌ぐことにする。
平ヶ岳登山口。駐車場は25台ほど駐車可能。
細尾根を登る。既に陽は西に傾いている。
細尾根。スリップに注意を払う。
下台倉山の直下はかなりの急傾斜。ロープが何本も設置されている。
林道を進むと細い橋を渡り、右側の登山道に入ってすぐに細尾根に取り付く。ここから標高差約700mの急登りが続く。7~8人の下山者とすれ違ったが、皆相当疲れた顔をしている。確かに往復21㎞、累積標高差約1600mは容易くは無い。そして約3時間かけて、まだ明るい午後5時20分、下台倉山に到着した。細尾根はなんとか明るいうちに通過したが、まだ歩いた距離は3分の1にも満たない。稜線には着いたがこの先がまだまだ長いのだ。
下台倉山到着。時間は午後5時20分。
夕暮れの燧ケ岳。心地良い夕風が吹く穏やかが夕暮れだったのだが・・・
隣の台倉山の手前で日没となり、台倉山頂上でヘッドライトを装着する。この頃には燧ケ岳山頂あたりに雲がかかってはいたものの、至って穏やかな天候だった。すっかり暗くなった夜7時過ぎ、林の中から空を見上げると、夏の大三角形を貫くきれいな天の川が空を横切っていた。順調に行けば9時ごろには姫池に映る天の川が見られそうだ、と期待が膨らみ、眠気と闘いながらひたすら姫池目指して歩く。ところが、7時半を過ぎた頃から周辺の空に真っ黒な雲がかかりはじめ、雷鳴こそは響かないものの稲光が光り始めた。最後の登り、池ノ山の登りにさしかかった頃、その黒雲は池ノ山の上にもかかり始め、頭上でピカピカと光り始めた。笹の中に一旦身を潜めてやり過ごし、再び登り始めたが、今度は雷鳴を伴ってさらに激しく光り始めた。標高は1900m、目的地姫池まではあと1時間とかからないだろうが、ここであきらめて林の中まで下りてツエルトを張ってビバークすることにする。9時半、木の枝にツエルトの端を紐で吊るし、中に潜り込んで夕食、10時にシュラフカバーに潜り込んだが、意識を失うかのようにあっという間に眠りについてしまう。
そして目を覚ましたのは未明2時。汗で濡れた下着と服が冷たくて寒く目を覚ました。外を見れば満天の星空が広がっている。しかしまだかなり眠気が強く、下着を着替えてさらに1時間ほど寝て、3時に起床、ツエルト撤収して3時半にまた歩き出す。東の空に昇った金星が眩しいほどに輝いている。その上にはオリオン座と冬の大三角形、それを貫く冬の天の川が見えている。北西の空にはカシオペア座に向かって夏の天の川が立ちあがっている。
森に昇ったオリオン座と冬の大三角形。木の間の明るい星が金星、中央上の明るい星は木星。
北西の空に天の川が垂直に立ち上がる。
オリオン座と冬の大三角形、さらに金星。中央に見える山は燧ケ岳。
燧ケ岳に昇るオリオン座と冬の大三角形(拡散フィルター使用)
カシオペア座と北斗七星(わかりますか?右の低空に登って来た北斗七星、天の川の中にいるカシオペア座)
池ノ岳に立ち上がる薄明の天の川
薄明の空と金星
薄明の空に消え行くオリオン座と冬の大三角形
4時半にはもう星の輝きは消え始めてしまうので、おそらくは姫池に映る天の川は撮影は困難だろうとこの時点で判断し、眺望の得られる池ノ山山頂直下で日の出を迎えることにした。ちょうど燧ヶ岳の真上にオリオン座と冬の大三角形が昇って来ているところだった。やがて空は薄明の深い青色に変わり、東の空がオレンジ色に輝き出す。次第に星の輝きは朝の空に消え、そして日の出を迎える。何度見ても美しい山上の夜明けだ。(後編に続く)
夜明け前の平ヶ岳
夜明け前の燧ケ岳
夜明けの空①
夜明けの空②
山上の日の出
朝日浴びる平ヶ岳
(後編は朝の姫池、平ヶ岳の美しい景色を掲載します。ご期待ください。)