戦争中に生まれた私は東洋の美しい精神文化は西洋には無いと教わりました。その頃の戦争は大東亜戦争と言い、東洋を西洋の植民地から解放する崇高な戦争と教わりました。少年の頃、意味も分からずに教わった言葉や文章だけが心の奥に住み込んでいます。
私は時々、ああ、私はまぎれもなく東洋人なのだなあと何故か感激することがあります。
左のような水車の風景を見ながら散歩していると、何故か東洋人に生まれた幸せをしみじみと感じます。
そして私は東洋人に、理由も無く、「誇り」を持っています。東洋人とはインド人、ビルマ人、タイ人、ベトナム人、インドネシア人、フィリッピン人、中国人、そして韓国人などなどです。
特に、欧米の長旅をしていて、しばらく東洋人に会っていないと中国人や韓国人へ会いたくなります。欧米のどんな町にも中華料理店があります。そこへ入って片言の中国語を少し話し、料理を食べます。
その素晴らしい料理を作る中国人を東洋人の誇りと思います。
ベトナム戦争の頃、アメリカで乗ったタクシーの黒人の運転手が一緒に戦った韓国兵を絶賛するのです。勇敢で戦略が優れ、その上、負傷したアメリカの黒人兵を見捨てないで背負って帰ってくるのが韓国兵だったと絶賛するのです。そして降りるとき、タクシー代は唯ですと言うのです。この時ほど東洋人として韓国人を誇りに思ったことはありませんでした。ベトナム戦争へ反対していたことを忘れていました。なにか矛盾しているような気分です。
矛盾している私の実例をもう一つ書きます。共産主義者を嫌っている私は共産主義者の周恩来を尊敬しています。西洋へ誇れる東洋人として誇りに思っています。彼は終始一貫して毛沢東へ仕えました。江青の暗殺計画を賢く逃れながら最後までナンバー2の権力を保持しながら人々の塗炭の苦しみを少しでも少なくするように努力したのです。1976年、文化大革命の終焉とともに死にました。そして続いて毛沢東も死んだのです。
アメリカと中国の国交回復の交渉の為に何度も会ったキッシンジャー国務長官が周恩来のことを絶賛しています。色々な政治家や外交官に会ったことのあるキッシンジャー国務長官が、「周恩来ほど賢く、勇気に富んだ人に会ったことが無い」と書いています。
私は東洋と西洋のはざまで矛盾した生活を続けて来ました。完全な東洋人になりけれずに生を終えるようです。現在の日本人はそのような事を一切意識していないように見えます。幸せな時代です。
今日も皆様のご健康と平和をお祈り申し上げます。藤山杜人