後藤和弘のブログ

写真付きで趣味の話や国際関係や日本の社会時評を毎日書いています。
中央が甲斐駒岳で山麓に私の小屋があります。

製鉄は男のロマン(2)やっぱりヨーロッパ人は偉い!

2010年11月25日 | 日記・エッセイ・コラム

科学や技術の世界へ入っていくとヨーロッパ人の偉さがしみじみと分かります。その賢さ、天才的なひらめきに唸ってしまうことが度々です。その実例の一つは製鉄法での「熱風炉」の発明です。溶鉱炉は古代中国人が発明しましたが熱風炉は産業革命期のイギリス人を中心にしたヨーロッパ人によって発明されたのです。強靭な鋼を溶解し、型に流して大きな鋼塊や鋼板にするには1600度以上の温度を作る必要があります。そこでヨーロッパ人は溶鉱炉へ吹きこむ空気をあらかじめ800度くらいに熱してから吹き込んだのです。このように空気を予備加熱するための炉を熱風炉と言います。

この熱風炉の発明で人間は初めて多量の鉄を容易に作ることが出来たのです。従って近代製鉄の鍵は熱風炉の発明になるのです。

熱風炉こそが中世の工業と近代工業を分ける分水嶺なのです。それは製鉄だけでなく高温を必要とするあらゆる工業分野で革命を起こしたのです。

下に溶鉱炉と熱風炉の図面を示します。この図面の13という番号の付いているのが2本の熱風炉です。その左に縦長の溶鉱炉の図があります。出典:Wikipedeaの「溶鉱炉」より。

Blast_furnace_nt1

この図面の13という番号の熱風炉の内側の右半分には耐火レンガを格子状に積んであります。2本のうち1本の中へ溶鉱炉の炉頂から出る高温の排気ガスを導入し格子状のレンガを加熱し、蓄熱します。それが終わったら炉頂排気ガスを停め、空気をレンガの間に吹き込み、加熱します。加熱された空気を左の溶鉱炉の下のほうにある羽口から吹き込みます。この図では羽口は7番の番号がついています。熱風炉は2本以上、4本位ついています。1本を空気の加熱に使用している間は他の炉へは炉頂排気ガスを吹き込んでレンガ積みを加熱しています。順番に交互に使って空気の加熱温度がそんなに変動しないようにします。

炉頂からはベルトコンベアーで鉄鉱石とコークスを交互に入れます。鉄鉱石とコークスの層が交互に重なって、ゆっくり下の方へ降りて行きます。

コークスは加熱された空気で燃えて1600度以上の熱を発生しながら一酸化炭素になります。この一酸化炭素が酸化鉄と反応して鉄を作るのです。鉄の融点は1535度なので、溶けて炉底にたまります。その溶鉄を数時間おきに流し出し、製鋼工場へ運びます。鉄が液体として炉底に溜まり、流し出せるので大量の鉄が連続的に生産されるようになったのです。

1本の溶鉱炉が毎日生産する鉄の量は5000トン位にもなるのが普通です。

炉内で起きる一番重要な化学反応を示します。

Fe2O3 + 3CO = 2Fe + 3CO2

この化学反応式の意味はコークスが燃えて出来た一酸化炭素ガスCOが酸化鉄Fe2O3から酸素を奪い、鉄Feを作るという意味です。この化学反応の研究が何故面白いのかという事はいずれ説明いたします。

今回は熱風炉こそが溶鉄の多量、そして連続生産の鍵になっていることをご説明するだけにしておきます。

たたら製鉄を行って、素晴らしい日本刀を作ってきた日本人には最後まで熱風炉の発想が生まれなかったのです。くどいのですが、ヨーロッパ人の偉さがしみじみ分かります。(続く)


テレビ番組、「開運!なんでも鑑定団」の人気の秘密

2010年11月25日 | 日記・エッセイ・コラム

1994年に始まり、視聴率も20%前後の高い値を続けている番組があります。「開運!なんでも鑑定団」という番組です。テレビ東京で一番の長寿番組だそうです。

さて何故そのように長い間、20%前後の視聴率を維持してきたのでしょうか?

少し注意深く観察し、考えてみるとその人気の秘密が分かります。

(1)種々の芸術分野の作品の魅力を素人にも分かり易く説明してくれます

この番組を見ると西洋画、日本画、中国の絵画の歴史とそれぞれの魅力が分かり易く説明してくれます。絵画だけではありません。焼物・工芸品までその範囲は実に広いのです。中にはギリシャや中近東の焼物も出て来ます。仏像はもちろんキリスト教の聖画も出て来ます。

私はこの番組をみてからペルシャの焼物にも興味が出てきました。近所にある「中近東センター」へもよく行くようになりました。古伊万里の美しさも理解出来るような気がします。私の「美の世界」が急に広がりました。

(2)コレクターと言われる人々の透徹した人生観に感動する

コインでも切手でも刀剣でも何でも種類を問いません。一つの物を一生かけて収集する。全てのことを犠牲にして蒐集する。蒐集している物に関する深い研究もする。

それを売り買いして儲けようとはしない。知識を学者のように誇って自慢する訳でも無い。兎に角、収集することがその人の人生なのです。真似は出来ませんがこのように透徹した人生観に感動するのです。勿論、売買して大いに儲けて居る人も出て来ますが、それは結果であって、目的では無かったと信じたいのですが。

(3)出演者の不運を見て同情しながら笑う内容構成

出演者が非常に高価なお宝と信じ、長年大切にして来た書画や焼物などが二束三文と鑑定される場面を過不足なく挿入しています。視聴者は宝物を持ってきた人の不運を笑い、そして可哀想と思い同情します。そして偽物を高く売りつけた人を憎みます。人間の家族愛や欲望が一瞬にして交叉する場面です。そこには他人の不運を笑って軽く済ませる以上のものがあるのです。人間というものを深く考えるヒントに満ちているのです。この番組の面白さの秘密の一つになっています。

(4)世に知られて居なかった芸術家を発掘し、広く紹介する

いわゆる権威者の評価や人々の人気とは離れて番組制作者の独自の考えで世に知られて居ない絵や焼物を発掘し、調査し、広く紹介するのです。毎週ではありませんが時々感動的な紹介があります。現在では非常に有名ななった田中一村画伯の奄美大島の熱帯植物の絵画などはこの番組が取上げたためと言われています。

(5)鑑定する人々の人間的魅力

例えば1000万円位すると信じ、大切にしていた油絵が5000円と判定される場合もあります。その時の担当した鑑定団に人の説明が人間的で良いもです。まずその絵が何故偽物か明快な証拠をあげて説明します。一瞬にして出品者が納得するような説明をするのです。当然出品者はガッカリし悲しみます。その時、鑑定団が慰めます。買った先祖は善い人なのです。子供や孫が困らないようにと無理をして買ったのです。そう言うと出品者も少し気を取り直して下がって行きます。

鑑定団の当意即妙な慰め方が人間味溢れていて善いのです。これもこの番組の人気の一つです。

市場価値が殆ど無い本物の絵を持ってきた人に言う台詞は決まっています。

「それは本物です。でもこういう理由で市場価値はありません。しかし良い絵ですから大切になさって下さい」。その実例の写真を下に示し、この長い文章の終りにします。文字通り、失礼いたしました。恐縮です。

今日も皆様のご健康と平和をお祈り申し上げます。藤山杜人

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