現在、大規模な内戦の起きている地域はウクライナと中東地域とアフリカです。
ウクライナはもともとソ連の重工業のあった一共和国であり歴史的に見ても帝政ロシアの領土でもあったのです。軍需産業が集中しているウクライナ東部をロシアが占領したくなる強い動機があるのです。事の善し悪しは別にして東部のルガンクス州とドネツク州の大部分は親ロシア派の独立国になり、ロシアの傘下に入ることは仕方が無い情勢となっています。盗人にも三分の理があるので困ったものです。
さて一方、中東地域の複雑な内戦はますます混迷を深くしています。中世の部族戦争に欧米列強とロシアが自分たちの利権を確保しようとして軍備品を秘かに送り込んだり、アメリカのように堂々と大規模な空爆を行なっているのです。
遠方にある日本もいずれ派兵を要求される可能性もあるのです。
この中東地域の複雑な内戦を理解するには1962年、イギリス製の映画、「アラビアのロレンス」を理解すれば良いと思います。いかにも映画らしい傑出した作品でした。
話を簡単に言えば、オスマン帝国の領土だった中東で起きたアラブ人の反乱にイギリス軍がひそかに加担してロレンスを送り込んだという話です。反乱が成功するとアラブ人はロレンスを嫌い、追放します。ロレンスは失意のうちにイギリスに帰り、オートバイ事故で死んでしまうのです。砂漠のロマンと主人公の悲劇を感動的に描いた名作です。下にロレンスの写真を示します。
そうして下に、もう一枚の写真
を示します。砂漠で井戸を見つけたロレンスとアラブ人の従者が立っているところに井戸の持ち主の部族の男が近づいて来る場面です。
井戸を持っている部族の男が従者のアラブ人をピストルで射殺してしまうのです。他部族の井戸を勝手に使ったら射殺です。アラブの掟です。一方、白人のロレンスは許されたのです。
この場面は現在、中東で起きている内戦
の性格を象徴しています。現在の中東の内戦は中世以来連綿として続いているアラブ人の部族戦争なのです。
水だけでなく、石油の出る油田が内戦の状況を一層複雑にしています。
そして訪米諸国の利権がからんでいるのです。下に第一次大戦中の1916年に出来た中東地域のロシア、フランス、イギリスの分割支配の地図を示します。出典は、 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%A9%E3%83%93%E3%82%A2%E3%81%AE%E3%83%AD%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%82%B9 です。
上の図は1916年のサイクス・ピコ協定による分割図です。濃い赤はイギリス直接統治、濃い青はフランス直接統治、薄い赤はイギリスの、薄い青はフランスの勢力圏。紫(パレスチナ)は共同統治領
です。
第二次大戦後この地域にはユダヤ教のイスラエル国家が出来、パレスチナ自治区が出来、アラブ人はそれぞれの部族国家を作ったのです。
その部族国家は自国の安全保障のためにアメリカ、イギリス、フランス、そしてソ連と緊密なしかも複雑な協定を作ったのです。
そして2001年9月11日にアメリカ本土内で同時多発テロ攻撃が起き、2011年には「アラブの春」の反乱がアラブ全域で起きたのです。
こうして手の付けられない部族戦争なりそれに欧米勢力が干渉しているのです。
とても日本人には理解出来ない性質の内戦なのです。この内戦は中世ヨーロッパを荒廃させた「30年戦争」と同じような性質を持っています。
日本人は賢明にこの内戦に巻き込まれないようにすべきです。巻き込まれないようにしながら中東からの石油や天然ガスを確保しなければいけません。日本にとって難しい問題なのです。
下にロレンスが爆破しようとしたオスマン帝国のヒジャーズ鉄道の線路の地図を示しておきます。現在の中東の部族国家が一つのオスマン帝国の支配下だった時代もあったのです。
日本政府の今後の外交に期待しています。
それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈りいたしす。後藤和弘(藤山杜人)