「イスラム国を含む混沌とした乱戦は17世紀のヨーロッパにもありました・・・これを知れば中東の乱戦が分かる」
イスラム教スンニ派の過激武力集団がシリア北部とイラク北部を広範に占領して、そこに「イスラム国」という国の独立を宣言しました。
このように勢力を拡大しているイスラム国を壊滅させようとして、アメリカ、イギリス、フランス、オーストラリアとアラブ諸国の連合戦線が結成されつつあります。
例によって欧米諸国は協力しあってシリアとイラクに広がるイスラム国を本格的に空爆するための偵察飛行を続行しています。アメリカは既に単独で何度も空爆しています。トルコ、エジプト、サウジアラビアなどのアラブ諸国はこの欧米の攻撃には参加しないが、可能な限りの支援はすると決めています。
このような情勢ではイスラム国はいずれ消滅するでしょう。しかしそのためには数年にわたる戦争が中近東で行われるでしょう。
そこで問題は日本がこの戦争に巻き込まれないようにすることです。
イスラム国が消滅しても第二、第三のイスラム国が現れるのです。中東では宗教を利用した部族戦争がいつまでも続くのです。
欧米ではこの中東の乱戦を17世紀のヨーロッパ諸国を巻き込んだ三十年戦争の乱戦と同じようだと言われているそうです。先日の読売新聞の一面で、あるアメリカ人が中東の戦争は三十年戦争と同じだという長文の解説を書いていました。
そこで日本人が中東での戦乱を正しく理解し、その戦争に巻き込まれないようにするために「三十年戦争」の概略を以下にご紹介いたします。
簡単に言ってしまえばその戦争は宗教改革の後の1618年から30年続いた戦争です。当時のドイツ人の総人口1800万人が700万人に減少し、国土を荒廃させた大戦争だったのです。
それでは誰が誰と戦ったのでしょうか?それが判然としないのです。
勇気を出して簡略化して書けば以下のようになります。
ウイーンのハプスブルグ家の支配下にあったカトリック側の神聖ローマ帝国(当時のドイツの国名)とそれに反発するドイツ国内のプロテスタン領主達の反乱と言えます。
しかしこれはこの戦争のほんの一面に過ぎません。実態は宗教戦争を装った領主たちの領土拡大と権益拡大を主目的にしたおどろおどろしい戦争でした。それにスウェーデン、ノルウエイ、フランス、デンマーク、スペインなどの国々も参加し、領土拡大を狙った国際戦争でもあったのです。
この戦争は、道義もルールも皆無な傭兵が主体で行われました。
この傭兵たちがドイツの農民を殺し、略奪をしつくしたのです。ドイツ全土が傭兵たちによって荒廃させられたのです。
そして戦争には残虐も付きものです。各地で木の枝に吊るした死体があったのです。
人間の領土欲、権力欲、殺戮欲などの低次元な欲望が恥も外聞もなく発揮された戦争でした。ですからこの戦争は「ヨーロッパの闇」の一つなのです。
こんな戦争が1618年から1648年まで30年も続いたのです。
現在、中東で起きている乱戦はまさしく人間の領土欲、権力欲、殺戮欲による恥ずべき戦争なのです。
日本は絶対に参加してはいけません。安倍総理が集団自衛権を持ち出して後方支援として自衛隊を派遣すると言い出すでしょう。
しかしこのような馬鹿馬鹿しい戦争で日本人の血を流す必要などないのです。
それよりも中東に展開している日本人のボランティア達の安全を確保するのが急務です。イスラム国で殺されたイギリス人はNGOのメンバーだったと伝えられているのです。
30年戦争のことを知れば中東の戦争の本質が理解出来ます。その上で日本が参加しないようにしましょう。
写真にはこの三十年戦争に巻き込まれたローテンブルグの風景写真2枚と戦争で一部破壊されたハイデルベルク城の写真1枚をしめします。
写真の出典は、http://blog.goo.ne.jp/charomo/e/2c42d6c042d6fe6f8429fcc07bd93bac です。
民族衣装をまとった市民によるダンス :写真の出典は、http://allabout.co.jp/gm/gc/45500/ です。
三十年戦争の爪痕が残っている ハイデルベルク城:写真の出典は、 http://gensun.org/?img=tabidachi%2Eana%2Eco%2Ejp%2Fstorage%2Fphoto%2F978%2F179901_2%2Ejpg です。
末尾に少しだけ参考資料を付けました。
それはそれとして、
今日も皆様のご健康と平和をお祈り申し上げます。後藤和弘(藤山杜人)
参考資料:
(1)世界史講義録( http://www.geocities.jp/timeway/kougi-65.html )「ドイツの混迷」
イギリスやフランスが絶対主義国家として中央集権化を図っているときに、ドイツでは内乱が起きていました。これが三十年戦争(1618~48)です。
(2)30年戦争の実態:( http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%89%E5%8D%81%E5%B9%B4%E6%88%A6%E4%BA%89 )
版画は、三十年戦争時の虐殺を描いたジャック・カロによる版画『戦争の惨禍』(1632年)です。
十年戦争は名前の通り30年間絶え間なく続いたのではなく、数ヶ月から2年程度の小康状態を挟んで断続的に続いた。当時はほとんどの軍が長期間統制しにくい傭兵によって賄われており、国王直属の常設軍隊は稀であったからである。・・・・以下省略・・・・・