宗次郎の「オカリナ演奏会」
コープこうべの優待チケットの抽選に当ったからと言われて、宗次郎の「オカリナ演奏会」に初めて行った。
優待チケットは正規料金より少し安く買えるので、行きたい催しがあると相方がコープこうべの抽選に申し込む。
会場は大阪のNHKホールだった。NHK大阪放送局が新しく竣工していたが、まだ行ったことがなかった。
地下鉄谷町4丁目駅で降りて、地下道をかなり歩いて地上に出ると壮大な建物が現れる。
広島のNHKの放送局の建物も
名古屋のNHKの放送局ビルも
どちらも周囲を圧するような大規模の建築物だ。オイオイ大阪も一緒か、たかが容れ物に僕の受信料をこんなに使うなよなと思いながら入って行った。
政治家の放送族の利権がらみで、息がかかった設計事務所のデザインのままに歯止めがないまま、
豪壮な規模と豪華絢爛な仕様にふくれ上がり、放送局として機能的な構造かどうかは関係ないんだよなと
大阪放送局の建物を見ても思った。
NHKホールのロビーは自分達と同じようなシルバー夫婦が群れている。あとはご婦人の連れと
母親と娘というカップルが多い。バックに映像を流して演奏する「大黄河」や「コンドルは飛んでいく」も
あらためて新鮮だったが、「馬子唄」や「遥かなる尾瀬」は始めて聞いたが良かった。
オカリナ一本で(勿論伴奏はついているが)ほぼ2時間引っ張るのはちょっと大変とは思ったが、
もう30年近く演奏活動をしている強みで会場はリピーターが多いらしく、善男善女集団の観客は協力的な
拍手と笑みでおだやかに楽しんでいた。
2004.01.22記
バラエテイー・パブのオカマショー
元の勤務先の同じ部門の東京のOB忘年会の2次会で、歌舞伎町のアルカザールというバラエテイー・パブに行った。
幹事から事前にオカマのショーだとは聞いていたが、指定の席に座った15,6名の
初老の我がオジサン軍団は、司会の小太りの着物姿の司会者から、「アラマア、冥土
の土産にって、半分棺おけにアシ突っ込んだ白髪とハゲのジジイたちがニューハーフ
のお嬢を拝みに来たわよ」というセリフを浴びて、のっけから度肝を抜かれた。
ショーの間も罵詈雑言を投げられ続け、最初のペースのままに巻込まれて、いいように
おちょくられながらもオジサン連中はみんな大笑いで楽しんだ。
後ろの席は「ハトバス」の(夜の東京観光コース?)の団体客とかで、司会者もそちら
にはあまりちょっかいをかけない。
ショーそのものも抜群のShapeの美女?たちがソロ、群舞で踊りまくり、コントもおりまぜて、
いいテンポで流れていく。勿論規模や設備は全く違うが、もう25年も前にパリで見たムーランルージュや
ル・セクシーのショーと似ている。
どちらも客を徹底して楽しませるという点で、ショーに関わっている連中にプロの臭いがした。
”支払いした分ちゃーんと返してもろたか”という関西人の物差しで考えても満点だ。
関西人にとっては高いものは高いなりに、安いものも安いなりに中身が値段に見合っているかどうかが満足度の物差しだ。
終わって劇場を出るときもらったカードには「抱腹絶倒」「妖艶華麗」と売り文句が書いてあったが、
ホンマや、看板に偽りなしだったなと思った。座席数200とも書いてあったがそこまでは広い感じはなかったが。
2004.01.22記
大竹しのぶの「POP!一人舞台」
大竹しのぶの「POP!一人舞台」というのが大阪にも来るよと相方から言われて、インターネットで探した。
すぐチケット会社のHPも見つかり、「POP」の情報画面も見つかった。チケットもネットで買えることが
わかったので、そのままネット会員になる手続きをした。
画面を見ていくと東京の7日間公演に引き続き、大阪は3日間公演になっており、
どうせなら全10日間公演の最終の「楽」の日が面白いかもと思って12月28日を申しこんだ。
幸いまだこの日に空席があり、インターネットバンキングを使いその場でチケット会社の
口座へ振込み手続きをした。
**朝日新聞社前のフェステイバルホールのすぐ近くまで大阪駅から地下街だけを通って行ける。
会場のリサイタルホールはフェステイバルホールの地下のこじんまりした劇場だ。
ロビーに入ると客筋が一ケ月前のオカリナの演奏会の時と全く違う。圧倒的に女性が多い。
しかも仕事を持っていて、その職場なり店を仕切っているという感じの元気一杯の女性が殆どだ。
たまたま目の前で「アラツ、貴女たち新幹線で来たの?私たち、なんとかフライト取れて飛行機で来たの」と
5人組が話しているのが聞こえた。この5人はクロウト筋の若手のようだった。
この日が千秋楽でもあるので、しのぶさんの「おっかけ」が東京からも来ているらしい。
夫婦モンはほんの少数で、いてもかなりの年配者ばかりだ。男はサラリーマン経験者と思える人は殆ど見えない。
演劇・舞台関係者というかBox office業界の人がかなり多いように思えた。
**(あの子かわいやカンカン娘)と♪いながら彼女が下手から出てきた。真っ黒なフレヤースカートに大きな紅いバラが
一輪だけ刺繍してある。前後に身体を揺らして歌いながら、視線は会場の全部をずーっとなめていく。
始まったばかりで誰も手拍子を取らなかったが、無意識に音を出さずに手拍子を取ったらこちらに彼女の視線が
スッと来た(と勝手に思った)。そのうちに座った反対側の席から手拍子が出だして会場に広がった。
「一人舞台ってあるので大竹しのぶが一人で劇をすると思ってこられた人には申し訳ないけど、
今回は歌とおしゃべりなんです」、最初の歌が終わったあと、彼女が話し出した。
銀座カンカン娘、花、悪女、見上げてごらん夜の星を、などを次々歌い、あいまに
「今も杉本さんが時々遊びに来てくれて、今年もクリスマスには例の調子で盛り上げてくれました」などと喋る。
客は全員子供のイマルちゃんの父親が明石屋さんまということも知っているからすぐに彼女と一体感の中で笑ってしまう。
舞台で鍛えられたのか、口先でない腹の底からの声は厚みがあり、透きとおって良く通る。
そして、彼女は自分でもとても歌が好きなんだろうと思える情感がこぼれる。
「奇跡の人」に出演するための勉強で知った施設の人たちとの交流の話なども、静かにそして長く話した。
**最後に「明日があるさ」を歌いながら狭いといっても結構ある会場を、彼女は右から左、真ん中から上から下まで
歌いながら殆ど走った。千秋楽でもあるせいか彼女の瞳が少し潤んで見えた。
席は最左端から二つ目と三つ目だったが、そのお陰で最後に左の端っこを走り上がってきた彼女が、
順番に握手していく中で、精一杯伸ばした僕の左手の3本の指をギュッと握ってくれた。
「握手してくれた」と上ずった声で隣の相方に言ったら、
「良かったね、長年の願いがかなって」と即、返ってきた。
阪神梅田の駅カレー店でビーフカレーを食べて帰宅し、次女にも「しのぶちゃんに握手してもらった」と言ったら、
「良かったねお父さん、その手アシタも洗っちゃあ駄目だよ」と彼女が言った。
こういう事があるからには、清水美砂さん岸本加代子さん秋吉久美子さんの
あと3人の好きな女優さんにもいつか握手をしてもらえる日があるかも知れない。
**一ヶ月の間に3つもの劇場に行ったのは、これまでで始めてだったが、その舞台に接している時間の間、
非日常の世界に入るのは、旅行と同じだ。ビョーキにかかってしまい、働いた金は日常の全てを節約して切符に
かける人があちこちに沢山いるのもわかるような気がした。
そして舞台の世界も三日やったら止められないというのも。
2004.01.22 記