このごろ、低い山を中心として、登山を楽しんでいますが、里山なのに首都圏など遠くからお見えになる中高年の方に多数出会います。交通の便がよくなり、ネットで情報が伝わるせいでもありますが、高い山を目指すという登山の形態が変わってきたせいでもあると感じています。この本は、そのような登山をめぐる事情が書いてあったので読んでみました。
著者の菊地俊郎さんは、1935年東京生まれで、信濃毎日新聞社で記者時代より山岳遭難や山岳環境の問題を追究。64年には長野県山岳連盟を中心とするヒマラヤ・ギャチュンカン登山隊に隊員として参加し、その報道で日本新聞協会賞を受賞。現在は松本市にお住まいです。
山小屋や登山道、林道、山の環境保全など。従来触れられることの少なかった面について記述してあり、データはやや古いものの、興味深い内容でした。次に目次を掲げ、特に印象に残ったところは細目次も掲げます。
第1章 山小屋について
3 ヘリコプター縦横 5 電気・通信事情の様変わり
第2章 百名山登山をめぐって
1 トンネルのアプローチ革命 2 深田百名山の光と影 4 ツァー登山の隆盛
第3章 登山者層について
1 なぜ高齢化か 2 温泉登山
第4章 登山道について
1 登山道の不思議
第5章 電源開発と林道について
1 秘境と車道 4 登山道と林道
第6章 山の環境保全について
1 し尿処理への挑戦 2 滝に見る国有林の姿 3 入山規制
第7章 もう一つの登山の楽しみ
1 北アルプスの展望ポイント 2 南アルプスと中央アルプス
出版された平成13年(2001年)の時点でも、コンビニと高速道路の普及が、昨今の百名山めぐりや中高年の登山ブームの契機になっていると著者は述べていますが(62ページ)、現在もその状況が続いていて、しかも、それが花の咲く山とか2000m以下の里山まで拡大しているようにみえます。
里山を訪れてもらうのはいいのですが、登山道整備など環境整備にかなりお金と労力が必要なので、せめて地元にお金が落ちるように買物や食事、入浴などは登山口の近くでやってもらいたいと思うこの頃です。僕は、なるべく登山口近くのコンビニで買い物をするようにしています。
なお、長野県では山域によっては、登山計画書の提出が義務付けられました。これも高齢登山者で遭難する方が増えたからでしょう。
第4章の登山道、第5章林道に関しては、いろいろと考えさせられました。登山道の整備の問題は工事費の負担など難しい面がありますが、行政が登山道や標識の整備などを、少しやるべきところにきているのかもしれません。
第7章は、第6章までとは趣を変えて、展望ポイントの紹介など、個人的に役に立つことが書いてあり、ありがたく楽しい章でした。今年から、8月11日が「山の日」として祝日になりますし、この機会に一読してもいい本です。
山の日記念全国大会(上高地、8月10日、11日)のチラシ。