ジャズ批評誌の2016年7月号は、特集として「ベスト・オブ・トランペット 50」として50人のトランぺッターとそのアルバムを紹介しています。「50人と肩を並べる20人のトランぺッター」という記事もあって、後藤誠一さんが20人を選んで、作品を挙げています。チャールス・トリヴァー、ウディ・ショー、マーヴィン・ピーターソンが、この20人の中に入っていますが、ウディ・ショーが50人に入らないのはよくわかりませんでした。マーヴィン・ピーターソンを聴いてみます。
HANNIBAL MARVIN PETERSON (ハンニバル・マーヴィン・ピーターソン)
ONE WITH THE WIND (MUSE 1993年録音)
マーヴィン・ピーターソン(tp)については、ポストバップというよりも、アバンギャルドがかったトランぺッターとしてジャズ・ファンには捉えられているのではないでしょうか。僕は、彼が70年代に登場して以来、馴染めないだろうと思い込んで敬遠気味だったのですが、93年録音のこのアルバムは、意外とオーソドックスで、ハードバップに傾斜したmuseレーベルが録音しているのもわかる気がします。
メンバーは、マーヴィン・ピーターソン(tp)、ジョー・フォード(as, ss)、マイケル・コクラン(p)、ロニー・プラキシコ(b)、セシル・ブルックス3世(ds)、Jeff Haynes(Percussion)。マーヴィン・ピーターソンは、1970年代はともかく現在の日本ではほとんど話題に上りませんし、マイケル・コクランの名前を聞くこともありません。今となっては懐かしい名前かもしれませんが、たまにはいいものです。
曲は、メンバーのオリジナルが主です。マーヴィン・ピーターソン作「Nile's Song」、セシル・ブルックス作「One With The Wind」と「Echos」、マイケル・コクラン作「Revelation」、ロニー・プラキシコ作「Since She Went Away」、サム・クック作「A Change is Going to Come」、A.S.Colsonという人の書いた「Glow」、スタンダードの「God Bless The Child」と「Misty」の全9曲。サム・クックの名曲「A Chnage is Going to Come」は、ジャズで取り上げられるのは珍しいと思います。
1970年代の激烈なリーダー作と比べると、ずいぶんと落ち着いたプレイを行っているのですが、その中にも熱さが残っています。全体はモーダル的なサウンドで、そこにブルージーな響きもうかがわれます。ピーターソン(tp)の優しげなソロがいい「Nile's Song」、ゴスペルという雰囲気が強く漂う「A Cange is Going to Come」、スローテンポで哀愁を帯びたメロディとともに、ロニー・プラキシコ(b)の弓弾きソロ、ジョー・フォードのソプラノサックスが美しい「Glow」が印象に残りました。
【ジャズ批評 2016年7月号】