安曇野ジャズファンの雑記帳

信州に暮らすジャズファンが、聴いたCDやLPの感想、ジャズ喫茶、登山、旅行などについて綴っています。

許 光俊著「オペラ入門」(講談社現代新書)

2019-12-05 20:02:46 | 読書

許 光俊さんが書いた「オペラ入門」(講談社現代新書, 2019年10月20日発行)が面白そうだったので、読んでみました。 許さんは、1965年生まれで、現在、慶應義塾大学法学部教授。近代の、文芸を含む諸芸術と芸術批評を専門としている方です。

   

(目 次)

25の章からなるので、特に気になった章の見出しを掲げます。

4 モーツァルト~革命のオペラ
8 ワーグナー~巨大な、あまりにも巨大な
10 ロッシーニ、ベッリーニ、ドニゼッティ~イタリアの声の愉しみ
11 ヴェルディ~歌劇の「王様」
16 プッチーニ~より繊細に、よりモダンに
17 リヒャルト・シュトラウス~巨大なワーグナーの後で
18 ベルク~悲惨の大家
22 ミュージカルとガーシュウィン
23 ブリテン~苦い味わい
24 グラス~ミニマル音楽としてのオペラ
25 アダムズ~核の時代にオペラは可能か

(感 想)

「オペラ入門」というタイトルですが、取り上げる作品やそれらの解説に著者独自の視点があって、刺激的でした。歴史を俯瞰しつつ、主要なオペラの粗筋の紹介、世界の歌劇場の紹介なども行われていて、入門的な要素はあります。

リヒャルト・シュトラウスで嗜好品としてのオペラは終わり、ベルク以降は悲惨な現実を直視したオペラが作られていると記しています。現代のオペラを芸術的観点から著者は肯定的にとらえていますが、華麗な旋律と声の魅力重視の僕にとっては、それらは難しそうです。

著者は、ヴェルディとプッチーニを比較しています。プッチーニを高く評価し、より繊細さがあり、知的で、感覚的にもヴェルディよりもずっと現代に近いと記しています。僕はそのへんは意識せずに聴いていますが、著者は芸術批評を専門にしているので、比較の視点が設定されたのかもしれません。

著者は、『オペラを生み、育てたのはヨーロッパです。ですから、オペラはヨーロッパで見ないといけないのです。』と記し、ぜひ本場でオペラをご覧くださいと強調しています。オペラは、劇場という場における公演なのだから、全くそのとおりで、この点は著者の意見にうなづきました。

(参考) 僕の好きなオペラ作品(DVD)

   

ビゼー「カルメン」。出演は、エレーナ・オブラスツォワ、プラシド・ドミンゴ、カルロス・クライバー指揮ウィーン国立歌劇場管弦楽団・合唱団など。(1978年12月9日ウィーン国立歌劇場におけるライブ収録)。許光俊さんもカルメンについては『奇跡の作品』と本書「オペラ入門」の中で記しています。

   

ヨハン・シュトラウス二世「こうもり」。出演は、パメラ・コバーン、エーベルハルト・ヴェヒター、カルロス・クライバー指揮バイエルン国立管弦楽団&合唱団。(1986年バイエルン国立歌劇場におけるライブ収録)。

この2つの作品(DVD)については、カルロス・クライバーの指揮ぶりも楽しめ、それゆえに気に入っているところもあります。