すっかり日の暮れるのが早くなり、気温も低下し、秋が一気にきたようなこの頃です。早めに自宅に帰り、吉田秀和著「ブラームス」を読みながらブラームスの音楽を室内楽中心に聴きました。
音楽評論家の吉田秀和(1913~2012年)さんには、著作がたくさんありますが、最近、河出文庫から何冊か出版されて、簡便に読むことができるようになりました。これはブラームスに関する文章を集めたものです。
(カバー裏にある本書の紹介)
(目 次)
(感想などと聴いたCD)
最初の「ブラームスと私たち」と続く「ブラームス」が、吉田秀和さんの真骨頂が現われているように思い、この二編は必読です。目次タイトルの「今夜はブラームスの室内楽でも聴こう」(270ページ以下)は、映画やジャズの評論家だった植草甚一さんがつけたかのようで面白く、吉田さんに親近感を覚えました。
そこで、今夜は室内楽作品をまず聴きました。著者は、弦楽五重奏曲が優れているとし、『作品111の五重奏曲ト長調(第二番)の前では、三曲の弦楽四重奏曲はみんな色あせて見える。それほど、これはブラームスの真髄を示した名作である』と記しています。
ブラームス「弦楽五重奏曲第2番」(1996年録音、原盤:Nimbus)
ブランディス・カルテット、Brett Dean(viola)
管楽器入りの作品について著者は、『あの最晩年の寂寥たる冬の想いと孤独に閉じ込められた「クラリネット五重奏曲」に比べれば「三重奏曲」のほうには、まだしも、秋の淋しさはあっても、同時に、たとえようもなく妖艶な花のたたずまいを偲ばせるところがある。』と記しています。
ブラームス「クラリネット三重奏曲」(1997年録音、原盤:Nimbus)
カール・ライスター(cl)、Ferenc Bognar(p)、ウォルフガング・ベトヒャー(cello)。
室内楽は、Brilliant Classicsから出た12枚組のブラームス室内楽全集の中から聴きました。締めくくりは、著者が「シューリヒトのブラームス 交響曲第三番」で取り上げたアルバムです。このアルバムについては、コンサートホールソサエティ日本盤レコードとCD、SACDを持っていて好きな演奏です。
ブラームス「交響曲第3番」(1962年録音 原盤:Concert Hall Society) DENONから出されたSACDです。
カール・シューリヒト指揮南西ドイツ放送交響楽団