安曇野ジャズファンの雑記帳

信州に暮らすジャズファンが、聴いたCDやLPの感想、ジャズ喫茶、登山、旅行などについて綴っています。

近藤史恵著「スーツケースの半分は」(祥伝社文庫)を読みました。

2021-04-21 19:30:00 | 読書

近藤史恵さんの小説は、『ヴァン・ショーをあなたに』や『タルト・タタンの夢』などの「ビストロ・パ・マル」シリーズがお気に入りですが、この小説も面白そうなので、読んでみました。

   

カバー表紙

(著者について)

近藤史恵さんは、1969年大阪府生まれ。大阪芸術大学文芸学科卒。93年『凍える島』で第4回鮎川哲也賞を受賞しデビュー。2008年に『サクリファイス』で第10回大藪春彦賞を受賞。「清掃人探偵・キリコ」シリーズ、「ときどき旅に出るカフェ」、「インフルエンス」など著書多数。

(カバー裏にある本書の紹介)

   

(感 想)

青いスーツケースと一緒に旅に出る話を中心とした9つの短編集です。前半は、30歳を目前に控えた学生時代からの友人である4人の女性が、それぞれ人生の岐路に立ち新しい道を進もうとする姿を描いています。

旅の目的地であるニューヨークや香港、パリなど街の描写も出てきますが、人との触れ合いが中心なのが、物語に奥行きを与えていました。後半では、現地に暮らす人や留学生が主人公にもなりますが、青いスーツケースとも関連していて、話の環が続きます。

9話の中で、最も印象に残ったのは、第7話の「月とざくろ」です。シュツットガルトへ留学した娘と母の物語ですが、動物の「フクロウ」の話も絡んで、ほのぼのとして温かみが感じられました。海外、国内問わず旅に出かけたくなる小説です。

(参考:目次)

第1話 ウサギ・旅に出る
第2話 三泊四日のシンデレラ
第3話 星は笑う
第4話 背伸びする街で
第5話 愛よりも少し寂しい
第6話 キッチンの椅子はふたつ
第7話 月とざくろ
第8話 だれかが恋する場所
第9話 青いスーツケース