安曇野ジャズファンの雑記帳

信州に暮らすジャズファンが、聴いたCDやLPの感想、ジャズ喫茶、登山、旅行などについて綴っています。

岡本綺堂著、宮部みゆき編「半七捕物帳」(新潮文庫)を読みました。

2021-08-13 20:31:12 | 読書

岡本綺堂著、宮部みゆき編「半七捕物帳」(新潮文庫)を読みました。岡本綺堂の名前は知っていたのですが、著書を読むのは初めてです。

   

カバーの表紙。

(カバー裏面にある本書の紹介)

   

(著者について)   

   

 

(目次と宮部みゆきさんによるワンポイント読みどころ案内)

「雪達磨」 雪だるまの中に遺体が! 冒頭に半七の縄張りについて説明あり。
「お文の魂」 事件物の余韻に実話怪談テイストが漂う。シリーズの振り出しとしても必須。
「山祝いの夜」 箱根という著名な旅籠町が舞台の旅情サスペンス。
「筆屋の娘」 若い娘の淡い色香が漂う。現代でもありそうで怖い事件。
「勘平の死」 素人芝居の楽しさと凄惨な事件の取り合わせ。
「槍突き」 無差別殺人の心理。
「少年少女の死」 水出しという子供の玩具が鍵になる事件。
「津の国屋」 怪奇譚と思わせて実はリアルな事件もの。半七ワールドの粋がここに。

(感 想)

1917年から37年までの間に69編書かれた「半七捕物帳」から、作家の宮部みゆきさんが8つの物語を選んだアンソロジーです。宮部さんは、『今回は特に、初めて半七親分と出会う若い読者の皆さんに興味を持っていただけそうな八つの事件を選んでみました。』と記していますが、僕のような高年齢者にも面白かった。

今から百年程前に書かれたものにもかかわらず、謎解きに加え、情緒が感じられる江戸の町を描いて古臭さは感じられません。岡本綺堂は、十歳の頃から英語を学び、海外のお伽噺や怪談を聞いて育ったというので、その趣味が半七捕物帳にも繋がっているようです。

中では、「津の国屋」という一編が、冒頭からの怪談話がぞくぞくさせ、現実の世界に転換するくだりが鮮やかで、一番面白く、夏向きでもあります。「筆屋の娘」も犯罪(殺人)の仕掛けが巧妙で、印象に残りました。