安曇野ジャズファンの雑記帳

信州に暮らすジャズファンが、聴いたCDやLPの感想、ジャズ喫茶、登山、旅行などについて綴っています。

佐々木譲著 特命捜査対策室シリーズ「地層捜査」(文春文庫)を読みました。

2021-08-26 19:32:02 | 読書

作家の佐々木譲さんは、冒険、歴史小説から企業小説まで幅広いジャンルの作品を書いていますが、「道警シリーズ」(拙ブログ記事へのリンク)はじめ警察小説が多くを占めます。今回読んだ特命捜査対策室シリーズもその系列ですが、警視庁のある東京が舞台となります。

佐々木譲さんは1950年札幌生まれ、「鉄騎兵、跳んだ」でオール読物新人賞、「エトロフ発緊急電」で山本周五郎賞、日本推理作家協会賞、「廃墟に乞う」で直木賞を受賞。著作多数。

   

表紙

(カバー裏にある本書の紹介)   

   

(感 想)

2010年4月の刑事訴訟法改正により、重大犯罪について公訴時効が廃止又は延長され、1995年4月27日以降に発生した事件について適用されることになり、昔の事件(本書では1995年発生)を再捜査することが可能となったことを背景としてストーリーを作ってあり、この改正をうまく取り入れていて感心しました。

不動産の地上げを巡るトラブルによる殺人という見方から迷宮入りした事件ですが、水戸部刑事の捜査により、舞台となる四谷荒木町が、かつては花街であり、芸者同士の確執や、料亭の料理人による敵討ちという内容が明らかにされていく過程はスリリングです。

また、著者による四谷荒木町の地形、風物など街の描き方に、過ぎ去った昭和の時代への郷愁が滲み出ていて、物語に厚みを加えていました。沈着冷静な中に情熱を秘めた主人公の水戸部のキャラクターも印象に残り、2作目が楽しみです。