五木寛之著「海を見ていたジョニー」(講談社文庫)を読みました。何故か今まで手にとったことがなく、今回初めてです。
表紙
(著者について)
人気作家で著書も多く、作品を読んだことのある方が多いと思います。文庫本にあった略歴を掲載します。
(カバー裏面にある本書の紹介)
(目 次)
海を見ていたジョニー
素敵な脅迫者の肖像
盗作狩り
CM家業
私刑の夏
という5編が本書に収められています。
(感 想)
五木寛之さんは、1966年に小説現代新人賞、67年に直木賞を受賞しています。その67年にこれらの小説が書かれていて、新進作家といっていい頃だと思いますが、筆致、内容ともに勢いがあります。特に「海を見ていたジョニー」では感情の起伏が描かれていて、印象に残りました。
「海を見ていたジョニー」はジャズを扱い、「素敵な脅迫者の肖像」、「盗作狩り」、「CM稼業」は、放送業界とその周辺を扱い、「私刑の夏」は、終戦時の満州からの集団逃避行を描いたもので、いずれも題材に新鮮さがあり、五木寛之さんだから書けた内容だと思われます。
「海を見ていたジョニー」では、『戦争に行って、わたしは人間を信じられなくなった。そして今、残された最後のもの、ジャズさえも信じられなくなった。』とジョニーが語り、やるせなさが描かれています。執筆時期とジョニーの発言、雰囲気からサックス奏者のジョン・コルトレーンを連想しました。