安曇野ジャズファンの雑記帳

信州に暮らすジャズファンが、聴いたCDやLPの感想、ジャズ喫茶、登山、旅行などについて綴っています。

五木寛之著「海を見ていたジョニー」(講談社文庫)を読みました。

2021-08-19 19:32:57 | 読書

五木寛之著「海を見ていたジョニー」(講談社文庫)を読みました。何故か今まで手にとったことがなく、今回初めてです。

   

表紙

(著者について)

人気作家で著書も多く、作品を読んだことのある方が多いと思います。文庫本にあった略歴を掲載します。

   

(カバー裏面にある本書の紹介)

   

(目 次)

海を見ていたジョニー
素敵な脅迫者の肖像
盗作狩り
CM家業
私刑の夏

という5編が本書に収められています。

(感 想)

五木寛之さんは、1966年に小説現代新人賞、67年に直木賞を受賞しています。その67年にこれらの小説が書かれていて、新進作家といっていい頃だと思いますが、筆致、内容ともに勢いがあります。特に「海を見ていたジョニー」では感情の起伏が描かれていて、印象に残りました。

「海を見ていたジョニー」はジャズを扱い、「素敵な脅迫者の肖像」、「盗作狩り」、「CM稼業」は、放送業界とその周辺を扱い、「私刑の夏」は、終戦時の満州からの集団逃避行を描いたもので、いずれも題材に新鮮さがあり、五木寛之さんだから書けた内容だと思われます。

「海を見ていたジョニー」では、『戦争に行って、わたしは人間を信じられなくなった。そして今、残された最後のもの、ジャズさえも信じられなくなった。』とジョニーが語り、やるせなさが描かれています。執筆時期とジョニーの発言、雰囲気からサックス奏者のジョン・コルトレーンを連想しました。