現在の文壇で、バーディーが崇拝する人物といえば、筒井康隆先生と並んで高村薫女史を挙げなければなるまい。目下、処女作の「黄金を抱いて翔べ」を再読・精読しているところである。
彼女の特徴は、いまさらいうまでもなく、設定の壮大さと確かなディテールとのマッチングにある(と思う)。設定についてはひとまず措くとして、ディテール、とりわけ登場人物の心理描写には目を瞠るものがある。それは、彼女が仏文科卒でフランス心理小説を愛読していた(に違いない)という事情もあるのだろう。
例えば、8pの一節
そもそも、幸田には、年寄はみんな非凡に見えたが、とりわけ、何十年分ものくだらない雑多な生活がそれなりの完成に到り、それなりの落ち着いた相貌になるというのが、理由もなく非凡なことのように思えた。そして、自分も歳を食ったら、あんな風に《出来上がる》のだろうかと、時々考える。
情景を眺める登場人物の心理を描写するもので、確か「環視」(?)とかいう技法だったと思うが、見事な一文である。
彼女の特徴は、いまさらいうまでもなく、設定の壮大さと確かなディテールとのマッチングにある(と思う)。設定についてはひとまず措くとして、ディテール、とりわけ登場人物の心理描写には目を瞠るものがある。それは、彼女が仏文科卒でフランス心理小説を愛読していた(に違いない)という事情もあるのだろう。
例えば、8pの一節
そもそも、幸田には、年寄はみんな非凡に見えたが、とりわけ、何十年分ものくだらない雑多な生活がそれなりの完成に到り、それなりの落ち着いた相貌になるというのが、理由もなく非凡なことのように思えた。そして、自分も歳を食ったら、あんな風に《出来上がる》のだろうかと、時々考える。
情景を眺める登場人物の心理を描写するもので、確か「環視」(?)とかいう技法だったと思うが、見事な一文である。