抽選で申し込んだらプレビュー公演が当選。 但し、席を選べないため、2階席になってしまった。
結構大きな劇場の2階席なので、役者の表情が全く見えず、声と身体の動きしか味わえないのが残念である。
バレエでも、「表情で踊る」演目があるというのに・・・。
さて、シェイクスピア悲劇においては、「オセロー」のイアーゴーや「マクベス」のマクベス夫人がそうであるように、”ストーリーを支配する人物”(いわゆる「狂言廻し」)が存在する。
「リア王」で言えば、それはエドマンドである。
なので、この「狂言廻し」を演じる役者(あるいはオペラ歌手)には、主役に負けないくらいの一線級の役者を持ってくる必要がある。
そういう意味では、今回の Sean Holmes (ショーン・ホームズ)演出による「リア王」は、配役においてひとまず成功したということが出来るだろう。
というのは、引用した動画からも明らかだと思うが、エドマンド役の玉置怜央氏の声が実によく通り、動きもキビキビとしていい感じだからである。
もちろん、リア王役の段田安則氏は、認知症(?)が進行して錯乱状態に陥る老人を完璧に演じており、ケチの付けようがない。
グロスター伯爵役の浅野和之氏は、前半は他の役者に比べて声がやや小さめの感じだったが、幕間で指摘を受けたのか、後半は上手く修正していた(この辺はヴェテランの腕というべきか)。
以上の3人は役者一筋の経歴を持つ人たちだが、これに対し、そうでない経歴の人たちが3人存在する。
それは、コーディリア役の上白石萌音さん、エドガー役の小池徹平氏及びコーンウォール侯爵役の入野自由(いりのみゆ)氏である。
上白石さんは、得意の歌をちょっとだけ(序盤と終盤)披露したが、パンフレットにも書いているように、少なくともプレビュー公演の時点では、「セリフを覚えるだけでせいいっぱい」という印象である。
実家のある鹿児島では、こういうセリフが日常会話で出てくることは絶対ないはずなので、これは大変だろう。
むしろ、メロディーに乗せて発生する方が、彼女にとっては楽なのではないだろうか?
小池氏は、歌手としての活動歴が長いためか、「歌手」である自我が飛び出してきて、今にも歌い出しそうな勢いを感じる。
対して、もともと声優だったはずの入野氏も、上白石&小池コンビとは違った意味で「歌い出しそう」な勢いである。
それももっともなことだ。
彼は、声優業を一時休業し、海外留学していたのだが、その間、ミュージカルの勉強をしていたのではないかと思われるのである。
「海外留学中の人気声優・入野自由さんが、日生劇場の12月公演“ミュージカル『屋根の上のヴァイオリン弾き』”に出演すると判明しました! 」
もしかすると、上白石&小池コンビにも、入野氏の”ミュージカル圧力”が作用して、歌い出しそうな雰囲気を醸成していたのかもしれない。
ちなみに、1605年に作品登録されたもともとの「リア王」(福田恆存氏いわく「原リア」)では、ラストでリア王が復位し、コーディリアも死なない筋書きなので、ミュージカル化にふさわしいように思う。
いや、このメンバーだと、”みゆ”じかる化というべきか?