「自民党総裁選に出馬している高市早苗経済安全保障担当相は25日のBSフジ番組で、首相に就任した場合の靖国神社参拝について「適切な時期に普段通り、淡々とお参りしたい」と述べた。「靖国神社は戦争を美化する施設でなく、外交問題にされるべきではない。自分の気持ちに正直でありたい」と語った。高市氏は春・秋の例大祭と終戦の日に参拝してきた。」
高市氏は、
「国策に殉じられ、祖国を守ろうとした方々に敬意を表し続けるのは希望するところだ」
と述べる。
ここで矛盾があると思うのは、合祀されている14人のA級戦犯(A級戦犯合祀問題)が「国策に殉じられ、祖国を守ろうとした方々」に当たるのかという問題について、触れていないからである。
だが、私見では、高市氏は、自分が総理大臣になるためには、”祖霊ナイン”による裁可が必要であることを、無意識のうちに認識していると思う。
この、”祖霊ナイン”による裁可を意味する象徴的な儀礼こそが、「靖国神社公式参拝」なのである。
誇張して言えば、憲法6条の存在にもかかわらず、真の総理大臣任命権者は、長州藩士の祖霊なのである。
ここで、歴代首相のうち、靖国神社を公式参拝したのが誰かを押さえておく。
このうち、赤で示したのは、”祖霊ナイン”の子孫にあたる人物のうち長州閥系、青で示したのは薩摩閥系である。
① 東久邇宮稔彦王
② 幣原喜重郎
③ 吉田茂
④ 岸信介
⑤ 池田勇人
⑥ 佐藤栄作
⑦ 田中角栄
⑧ 三木武夫
⑨ 福田赳夫
⑩ 大平正芳
⑪ 鈴木善幸
⑫ 中曽根康弘
⑬ 橋本龍太郎
⑭ 小泉純一郎
⑮ 安倍晋三
こうやって見ると分かるが、15人中9人が”祖霊ナイン”の子孫であり、このうち7人までもが長州閥の系譜に属している。
私見では、高杉は、当初、毛利家の祖霊(たち)と並んで、あるいはこれと合一化して、「神」になろうとしたと思われる(カイシャ人類学(20))。
もっとも、靖国神社となった後は、嘉永六年(1853年)以来の維新殉難者である彼自身と、その師である吉田松陰や坂本龍馬などの幕末の志士たちが祀られた。
つまり、当初の意に反して、毛利家の祖霊(たち)ではなく、吉田松陰や志士たちと合一化して「神」とされたのである。
余談だが、安倍晋三の「晋」は、「高杉晋作からもらった」のだそうである(「名前の『晋』は高杉晋作からもらったんだ」 安倍元首相、いつも心に古里・山口【悼記】)。
そして、戦後の歴代総理大臣であって、”祖霊ナイン”の系譜に属しない人物(⑦、⑨、⑩、⑫、⑭)の場合、病気で急逝した⑩(大平正芳)を除けば、全て長期政権となっているのである。
他方、靖国神社に公式参拝しなかった人物の政権は、ほぼ短命に終わっている。
何が言いたいかと言うと、
「靖国神社公式参拝をすれば、”祖霊ナイン”の子孫でなくとも、比較的長期に亘って総理大臣で居続けることが出来る」
ということである。
この仮説が正しいとすれば、また、高市氏は安倍晋三氏を尊崇しているらしいので、長期政権を築きたいと希望するのであれば、彼女が靖国神社に公式参拝するのはもっともなことなのである。