Don't Kill the Earth

地球環境を愛する平凡な一市民が、つれづれなるままに環境問題や日常生活のあれやこれやを綴ったブログです

黄色い線、あるいは規制線と規制テープ

2025年03月07日 06時30分00秒 | Weblog
 「イギリスの劇作家サイモン・スティーヴンスの2作品『ポルノグラフィ』『レイジ』が、同じ出演者による同時上演のスタイルで、2025年2月~3月にシアタートラムで上演される。・・・
 黄色の線は規制線を意味しており、「黄色の線の内側に下がっていなければ」というメインビジュアルのキャッチコピーにもあるこの言葉は、『ポルノグラフィ』の前書きとして書かれた作家の言葉。
私たちの言葉はあなたには全く響かない。だから、分かってもらえるような言葉で話していこう。私たちの言葉は死んでしまった、でもこれから血を通わせ命を与えよう。
 地獄のようなイメージ
 沈黙している。
黄色い線の内側に下がっていなければ。
」(以上、戯曲より抜粋)
 日常と非日常の境界線に引かれる黄色い線。この線は、『レイジ』の世界にも引き継がれていく。

 世界的に注目を浴びる劇作家サイモン・スティーヴンスの2作品が一挙に上演されるということで、会場はほぼ満席で、同業者(劇作家)も来ていたようである。
 「ポルノグラフィ」(2005年作)と「レイジ」(2015年作)の共通点は、舞台がイギリスの都市(ロンドンとマンチェスター)であること、「黄色」、すなわち劇中に登場する「黄色い線」(規制線)又は「黄色いテープ」(規制テープ)。
 それに、忘れていけないのは、「幽霊」又は「死者たちの世界」であり、これはイギリス演劇のお約束のようなものである。

① 「ポルノグラフィ」
 2005年7月6日、2012年のオリンピック開催地がロンドンに決まった。
 その翌日の7月7日、お祝いムードに沸くロンドンで、地下鉄・バスの連続爆破テロ事件が起きた。
 56名の人生を一瞬にして奪い、世界中を震撼させた事件である。死亡者リストには実行犯4名の名前も含まれていた。
 この作品は、犯人の一人を含む12人・7つのシーンで 構成されるが、地下鉄の黄色い線(ロンドン地下鉄の物語:亡き夫の声を求めて)を、今回の演出では黄色いテープによって表現している。
 この意味は、「『日常』と『非日常』の境界」というもの。
 これは、例えば、
・テロの実行犯(亀田佳明)・・・「こっちに来るな=生きろよ」
・認知症の老婆(竹下景子)・・・「チキンを食べる=生きる」
という風に、ポジティヴな意味に捉えることが可能である(公演パンフレット「スペシャル対談」より)。

② 「レイジ」
 イギリス・マンチェスターの大みそかの様子を捉えた、ジョエル・グッドマン撮影の写真から想を得た群像劇。 
 これといって共通のテーマは見当たらないが、それも当然。
 作品が生まれた背景から明らかなとおり、これは、戯曲版「展覧会の絵」なのである。
 私が強い感銘を受けたのは、「世界のその下が見える老女」。
 舞台となっている WELL STREET の WELL には、井戸という意味だけでなく、「あの世」という意味が込められているようだ。

 ・・・というわけで、①②に共通する「黄色いテープ」は、「『この世』と『あの世』の境界」という意味も持ちうるのである。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« フィジカリティーとエモーション | トップ | マーラーに関して注意すべきこと »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

Weblog」カテゴリの最新記事