<あらすじ>つづき
「静まりかえった天守。薄明かりの中に富姫が一人佇んでいると、一人の武士、姫川図書之助が階段を上り、五重へとやってくる。何故来たのかと問いかける富姫に、天守の五重は、百年来、人間の来た例はないが、鷹を失った罪で切腹を申しつけられたところを、鷹の行方を見届けることを条件に猶予を与えられたと語る。富姫は図書之助の清々しさに心を打たれ、ここは人間が一度足を踏み入れたなら、生かしては帰さない場所であるが、この度だけはと許して帰す。
戻る途中で妖かしに雪洞の灯を消された図書之助が、再び五重に姿をあらわす。約束を破ったことを富姫に咎められると、闇の中で梯子を踏み外し男の面目を失うよりは、富姫に命を取られようとも、再び灯をもらいに来たと答える。富姫はその詞に感銘を受け、深く心をひかれる。そして鷹は自分が奪ったものだと明かし、筋道の通らない人間世界に帰したくないと引き留める。図書之助は迷いはあるものの、世の中への未練が断ちきれない様子。富姫は断ち切りがたい思いを抱えながらも、ここへ来た証拠にと秘蔵の兜を持たせて帰す。」
異形の世界に侵入してきた図書之助は、鷹を失った科で主君から切腹を言い渡されている。
これに富姫は、
「私は武士の切腹は嫌いだから・・・。主と家臣というだけで、命を差し出すなんて間違い。鷹の命と人の命のどっちが大切だというのか」(記憶に基づく再現なので、不正確かもしれない)
と嫌悪感を露わにする。
異形たちは、武士の論理・倫理を否定しているのである。
その一方で、光を失った二人は、
図書之助「私の命をあげましょう」
富姫「私もあなたの手に掛かって死にたい。あなたの顔が一目見たい」
とポトラッチ合戦を行う。
日本の伝統とも言うべき「死によって成就される愛」 (25年前(4))の本歌取りのようである。
但し、この後桃六によって光を取り戻し、異形の世界で二人の恋は成就するので、ハッピー・エンドということになる。
こうやって見てくると、富姫は、「曾根崎心中」のお初と似た役目を担っていたように感じる。
つまり、「汚れた現世から相手を救済する観音様」である。
・・・というわけで、二人のポトラッチは未遂に終わったため、ポトラッチ・ポイントは、5.0×2人×1/2(未遂)=5.0。