十二月大歌舞伎・第三部は、「舞鶴雪月花」と「天守物語」。
前者はなかなか見どころがあって面白かったが、所作事なので分析対象外。
後者は、やはり玉三郎が出演するとあって、満席の盛況である。
<あらすじ>
ここは姫路城天守閣五重。天守閣の最上階は異形の者たちが棲むと言われ、人の通わぬ別世界となっている。中央には見事な獅子頭が据えてある。晩秋の日没近く、主である天守夫人富姫が簑を付けて雲に乗って帰ってくる。今日は可愛い妹分の亀姫が空の旅路をはるばるとやってくるのに、姫路城主播磨守の鷹狩の一行が弓矢鉄砲を使って騒がしいから、夜叉ヶ池(福井県)のお雪様に雨風を頼み、鷹狩の行列を追い散らしたのだという。
ほどなく猪苗代(福島県)から亀姫一行が到着。富姫と亀姫は仲睦まじく寄り添い語り合う。亀姫が土産に持ってきた品は、播磨守と瓜二つの兄弟亀ヶ城の主・武田衛門之介の生首だった。生首を喜ぶ富姫だが、自分の用意していた土産、播磨守の家宝の兜では見劣りがすると言い、見せるだけにとどめる。二人が手鞠に興じた後、ふと鷹狩の一行に目をとめた亀姫が播磨守の白鷹を気に入るので、富姫は鷹を捕らえ土産に持たせる。
前半は、いかにも鏡花らしく、異形の世界で目を楽しませてくれる。
設定で注目すべきは、武家の世界の上方に、富姫を筆頭とする異形たちの住む世界が位置していることである。
つまり、異形たちの力は、武家の権威を凌いでいる。
なので、富姫たちは、鷹狩の行列を追い散らす、武田衛門之介の生首・播磨の守の家宝の兜をプレゼントの対象にする、播磨守の白鷹を捕らえるなど、播磨守らをコケにするかのような行動に終始するわけである。
当然のことながら、富姫たちには、武家の論理も通用しない。