明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 

潮騒  


このベストセラーは三島らしくない作品といわれる。三島本人も、本音かどうかは判らないが、こういう作品がベストセラーになり、ウンザリしている、というようなことをいっている。 数十年ぶりに制作の合間に半分ほど読んだ。映画で山口百恵が包丁でノコギリのようにギコギコ切っていたのは原作ではナマコであった。 爽やかな青春物語である。18歳の新治の父親は、歌島から三哩位のところで、B24の艦載機に出会い、停滞したエンジンから上がっていた黒煙が敵機の目標にされ、爆弾投下と機銃掃射により死んだ。『新治の父の頭の耳から上はめちゃめちゃに裂けた。もう一人は目をやられて即死した。一人は背から肺に盲管銃創を負い、一人は足をやられた。尻の肉を殺がれた一人は、出血多量で間もなく死んだ。甲板も船底も血の海になった。石油タンクが射たれ、石油が血潮の上に溢れた。そのために伏せの姿勢をとれなかった者は腰をやられた。』盲管銃創とは弾が貫かずに体内に残ることをいうが、こんなシーンは三島由紀夫、ついリアルである。

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