本日はペーパーがけ。粉だらけである。後は細かい所に手を加えて着彩に入れるだろう。 オイルプリントの制作は04年以来で、十年ぶりである。改めて年月が経つのは早い。会社が倒産して絶版になってしまった『乱歩 夜の夢こそ真まこと』(パロル舎)を出すことになり、オイルプリントを一旦中断したのだが4年続いた『中央公論アダージョ』の表紙を担当することになったり、等々ですっかりお留守となっていたが、たまたま乱歩の本と一昨年出した『貝の穴に河童の居る事』は担当編集者が同じで、河童本の完成の頃には、これも何かのきっかけ。そろそろオイルプリントを再開しようと考えていた。 その間、古典印画法を試みる人が増え、なんといってもインクジェットプリンターによるネガの制作があたりまえになっていたのは進歩である。オイルプリントは感度が低いため、引き延ばしができないので、作品大のネガが必用である。当初大型の8×10インチのカメラを使い、最後はデータをイメージセッタで製版用フィルムに出力したものを使っていた。 十年振りでうまくいくかどうか。一つ目の問題は、私の場合諧調をより出したいために用紙に塗布するゼラチンを厚めにする。ところがゼラチンは室温が高いといつまでも固まらず、ゼラチン紙が出来たとしてもプリント時、ブラシで叩いているうちにゼラチン層が崩れてしまう。そこでゼラチン紙の制作及びプリントは室温の低い冬期に限っていた。今回ゼラチン紙の制作は田村写真にお願いしたが、写真用の固めのゼラチンを使うことで上手くいった。二つ目の問題はゼラチン紙を油性画の具を付けたブラシで叩くプリントである。室温を下げればクリアーできることではあるのだが。
※世田谷文学館にて展示中
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