『あわれ彼女は娼婦』は、これまで何度も映画化、舞台化されてきた。シェイクスピアと同時期に生きた作家、ジョン・フォードが描いた愛の悲劇。実の兄妹でありながら愛し合う物語。スキャンダラスだが、現代のほうがもっとひどい事件が起こっているのに…と思えるほど、古い題材なようにも感じるこの作品を、なぜ今上演するのか。それは、ぬるく汚れた社会に対する絶対的な「NO」、かたくなな純粋として、兄妹の恋を提示する(ぴあ8月10日号より抜粋)。カトリック協会が絶対的な力を持って、窮屈に国民が生きなければならなかった時代の中で、自分らしく生きることを貫こうとした兄と妹が選ぶ、一つの決断とは…。この作品のラストは枢機卿の宣言で幕を閉じる、『あわれ彼女は娼婦』と。
兄のジョヴァンニには、演出の蜷川幸雄が長らくラブコールを送っていた三上博史。妹のアナベラには深津絵里が演じる。三上博史演じるジョヴァンニの孤独と深津絵里演じる無垢な美しさ。実力派の二人が、がっちりとスクラムを組み、石田太郎、瑳川哲朗などのベテランが脇を固めている。妹の夫ソランゾには谷原章介がキャスティングされ、ドラマとは違う役どころをイキイキと演じている。 中世のイタリア時代、なぜ女性が『娼婦』と呼ばれなければならなかったのか、時代背景を考えながら見ていくと、深い。
(シアターBRAVA!にて8月5日~13日まで)