日本は昭和20年8月に終戦している。今は令和4年の年末。この期間を長いとみるか、短いとみる
か。若い人の中には、日本が戦争をしていたことを知らない人も、もう多くいるだろう。
だが、シベリアから最後の捕虜が帰国したのは戦後11年が経ってから。実はそれほど昔の話では
ない。人気者の二宮和也が主演しているので、戦争を知らない世代…当方を含めてだが…には、
これを機に戦争とは何ぞやを考えてほしい。そして何より、戦争はまた近くで始まっていること
が恐ろしい。
ハルビン。
結婚式に出席したあと、山本幡男(二宮和也)は日本に逃げるように妻のモジミ(北川景子)に
言う。日本では広島に新型爆弾が落とされという。いよいよ日本は本当に??
だがそこに、警報もなく空襲がやってくる。それは、ソ連からの攻撃だった。
第二次大戦後の1945年・シベリア。そこは零下40度の厳冬の世界。わずかな食糧で過酷な労働が
強制的に行われていた。死ぬものが続出する強制収容所(ラーゲリ)に、山本幡男は居た。「生
きる希望を捨ててはいけません。帰国(ダモイ)の日は必ずやってきます」絶望する仲間たちに
山本は訴え続け、励まし続けた。絶対に、日本にいる妻や4人の子どもの所へ帰れる。そう信じ
ていた。
終戦から8年が経ち、山本に妻から葉書が届く。検問をくぐり抜けたその葉書には「あなたの帰
りを待っています」とあった。
過酷。改めてこの言葉をつきつけられる。そして、言葉は使いたくないが、琴線に触れ、涙が
知らぬ間に流れてしまう。泣かせてやるぞ…という作りにはなっていない。だが、泣く。そし
て、無性に腹が立つ。戦争の時代だから仕方ないでは済まされない何か。
核が落とされてから、勝ち馬に乗ろうとやってきた巨大な国。戦勝国として、国連の常任理事国
となっているあの巨大な国。そして、もちろん日本という国にも腹が立つ。
この映画のナビゲーションをしようとすると、映画の内容からどんどんずれてしまう。日本の戦
争映画は“負ける“という結果がわかっているだけに、つらいという気持ちが前提になり鑑賞を敬
遠してしまうこともあるだろう。
だが、これは真実に基づいた物語。この人たちが日本を守るために戦ってくれたからこそ、命は
つながってきている、つなげてくることができたと言える。
当方の父の長兄は、戦争で南方へ出向いていた。何がしかの上官の立場にあったと思う。帰郷す
ると、子どもだった当方に赴任していた場所で撮った写真を見せられた。晴れ渡る空の下で、み
んなが笑っている戦場の写真を不思議そうに眺めていた自分を思い出す。戦争の話を楽しくする
伯父さん。父は「あの人の青春時代は戦争の時で、その時で時間が止まっている。今はもう死ん
でる第二の人生やねん」そう言っていた。そんなことを考えながら、エンドロールを見つめてい
た。
ところで、中居正広が二宮和也にテレビ番組で伝えていたが、中島健人はこの時期に二宮和也と
共演ができたことは大きいと思うという言葉はそのとおり。いい機会を得たと思う。北川景子は、
ちょっと綺麗すぎて、昭和の母という感じでもなさそうだが、どっしりとした母を頑張って演じ
ていたと思う。そら、こんなに綺麗な奥さん(妻)なら、絶対もう一度会いたいと思うでしょう
ね。
出演は他に、松坂桃李、桐谷健太、安田顕、山中崇、三浦誠巳、市毛良枝、朝加真由美など。
監督は『64ーロクヨンー』『8年越しの花嫁』の瀬々敬久。原作は辺見じゅんの「収容所(ラーゲ
リ)から来た遺書」。主題歌はMrs.GREEN APPLEの「Soranji」。