これまで、宮沢りえの演技を評価するとはなかったが、この作品は違う。役柄での呼び名‘お母ちゃん’が、等身大ではまってる。お母さんでもなく、ママなんかでは全くないお母ちゃん。こんな役ができて、そんな役になったんだな、としみじみ思う。
お母ちゃんの夫は一年前、一時間パチンコへ出かけたまま戻らないので、家業の風呂屋は閉鎖そたままだ。娘のアズミは、学校でのいじめに耐えている。
そんなとき、お母ちゃん自身もアルバイト先で意識不明で倒れ、医師からは末期のガンであることを告げられる。
行方不明だった夫が、気の優しすぎた娘が・・・。お母ちゃんの愛が、周りを変えていく。強くなっていかなければ、生きてはいけない、甘えるな。そんなお母ちゃんの心の叫び。
そして、お母ちゃんが抱える秘密も含めて、物語が進む。あらゆる、真実を伝えるため、お母ちゃんは娘を連れて旅に出る。
全体的にお母ちゃんを中心にした内容で、熱い言動であふれているのがベストポイント。最後はタイトルどおりの熱いシーンも。このシーンがラストで、こんなことがラストでいいの??と思うが、お母ちゃんの最後のあり方を周囲は考えたのだと思うと、この作品らしい最後の場面となる。
無償の愛というと、陳腐になってしまうが、その言葉がぴたり。自分のためより人のため、そうすることが自分の居場所とも言えるのだが、全篇終えたころ、ほろりときてしまう。一人で鑑賞しても、誰かに寄り添ってもらって、見守っていてもらえているような感じだ。
宮沢りえの他に、娘を演じているのは朝ドラ「とと姉ちゃん」で妹役を好演した杉咲花。夫にはオダギリ・ジョー。このオダギリも、軽く力が抜けた感じでなかなかいい味。放浪している若者には松坂桃李。
秀作なので、観ておきたい1本。