昭和だ。
人と人との距離の近さ、騒がしさ、いい意味での緩さが懐かしく、その中に厳しさもある。
そして、主演の阿部寛には昭和サイズでは家や自転車が小さいのだ、と思った。
2度ドラマ化された直木賞作家・重松清のベストセラー小説の映画化。
ドラマを視ている人や原作を読んでいる人には既視感があるかもしれない。
息子役の北村匠海とは、“顔濃い族“で似ている。こんなにそっくりな親子役はないだろう。
親との縁が薄くあらくれ者のヤスこと市川安男(阿部寛)は、妻・美佐子(麻生久美子)と知り合ってから人が変わったようになっている。
子どもにも恵まれ、幸せな時間が過ぎていくと思えたとき、ある事故が起きて妻は亡くなってしまう。
男手一人で息子の旭(北村匠海)を育てるようになったヤスを、地元の和尚海雲(麿赤兒)、その息子で幼馴染みの照雲(安田顕)とその妻の幸恵(大島優子)、会社の人たちなどが助けてくれている。
そんな人たちに囲まれて大きくなった旭は思春期となり、母が亡くなった理由をヤスに聞く。自分をかばって亡くなってしまったと応えるヤス。反抗期になった旭にはきつく非難されるが、それでも立派に育っていった。
そして、高校卒業後は、東京への進学を考えていると旭に伝えられるヤスだった。
「下町ロケット」でも阿部寛と共演歴のある安田顕。ここでも、関係性は熱い。ヤスたち常連が集う小さな居酒屋の女将に薬師丸ひろ子。旭の会社の先輩で実は付き合っているという由美を杏が演じている。
他にも、昭和の時代を知っていたり、時代に違和感がない人たちがキャスティングされている。
昭和の不器用な男の生き様を描いた良作である。
この時代があって、発展して…と歴史は動いていく。
監督は『8年越しの花嫁』『糸』の瀬々敬久。