夢千代日記

SHIMAちゃんの徒然日記・雑記

「眉山」

2007年05月30日 22時23分41秒 | Weblog
 今年度の邦画は、゛親子もの゛がトレンドだ。大ベストセラーで、ドラマ化もされた「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」が、母と息子の。そして、この「眉山」は、母と娘の。ともに、普遍的な愛情、感情といったものをテーマにしている。時代が変わってもかわらないもの…それが母親の無償の愛というのであろうか。
 東京の旅行会社で働く咲子は、母親・竜子が入院したことを知らされる、故郷の徳島へ帰る。咲子は、病院で母親が末期ガンであることを告げられ、母とそして母の死と向き合うことになる。
 長い間わだかまりがあった母と娘。咲子は、自分の父はすでに亡くなっていると母から伝えられていた。しかし、咲子は母が大切に置いていた荷物から父親が生きていることを知る。そこで、咲子は父親を探し出す。
 そして、今年もまた徳島では阿波踊りの季節が近づいていた。母には、最後になるであろう、今年の夏…。
 さだまさし原作のベストセラー小説の映画化。監督は、すでに今年、「黄色い涙」が上映され、人間ドラマを丁寧に描く犬童一心。主演の咲子役には松嶋菜々子、咲子の母・竜子に宮本信子。咲子を支える小児科の医師に大沢たかお。宮本信子の気丈で、きっぷの良い演技に泣かされる。
 

「俺は、君のためにこそ死ににいく」

2007年05月23日 23時29分50秒 | Weblog
 国民投票で憲法改正ができる…そんな法案が強硬採決されるという現代、戦後62年を迎えようとしている。
 第二次世界大戦末期、日本軍はアメリカ軍の空母を撃沈するため、特攻により突撃することを決める。20歳前後の若者が知覧に集められ、国を守るため、愛する人を守るため、若い命が沖縄の海に散っていった。「俺は、君のためにこそ死ににいく」は、゛特攻の母゛と言われた鳥濱トメさんが、この映画の製作総指揮・石原慎太郎氏に語った真実の物語。公開に先立ち、井筒和幸監督が「戦争を美化してはいけない、そんな映画観るな」というような発言があり、それに対し、窪塚洋介が「戦争を美化してはいません」とやり返すという舌戦があったが、それは、観た人の思いに委ねられる。 ゛負ける゛とわかっていた人もいるのに、突き進むしかなかったんでしょうかねぇ。大切な若い命がたくさん、散ってしまいました。そして今、日本はどうなるのでしょうか?
 トメさん役の岸恵子氏によると、゛自爆テロ゛のはしりが日本の特攻だと混同する風潮が世界にあるとのこと。特攻は志願ではなく、命令であったという事実なのです。

三谷幸喜の奥の深さを見せつけられる「コンフィダント・絆」

2007年05月19日 23時47分45秒 | Weblog
 三谷幸喜作品と言えばコメディである。舞台であれ、映画であれ、はたまたテレビであれ、三谷幸喜は人気作家であり、お客もよぶ。
 だが、時には計算しつくされ、準備された゛笑いの場所゛にしつこさを感じたことも否めない。
 この「コンフィダント・絆」は、コメディでありながらコメディではない。゛笑う場所゛は、経験豊富なキャストによって、豪華な笑いになってしまうのだ。それゆえ、今まで観た三谷作品の中でも(そんなに観てないが)秀逸です。すばらしい!
 中井貴一のスーラ、寺脇康文のゴーギャン、相島一之のシュフネッケル、堀内敬子のモデル役・ルイーズ、生瀬勝久のゴッホという、個性豊かで゛濃い゛キャスト5人がそれぞれの個性を殺しあうことなく、゛しかも個性を生かしながら、作品力を高めている内容なのだ。一見小難しいという、小劇場系の作品と違う作品になっていることにも、三谷幸喜の懐の広さを感じる。
(5月10日から31日までシアターBRAVA!にて)

「そのときは彼によろしく」(試写会)

2007年05月18日 22時31分06秒 | Weblog
 ラストシーンを終え、ぐっと感情が入ったところにエンドロールが上がった。主題歌が流れ出すころには、ほとんどが若い人で埋まった会場は、主題歌が聞こえないほど大きな声でみんなが騒ぎ出していた。映画のストーリーを単なる恋愛物語ととらえ、「あの流れはないやろ」「あれはこうしてほしいわ」などと自分の恋愛と重ね合わせてだけの感想を言っているのだ。しかし、流れてくる主題歌はさっき観終えたばかりの映画の内容とリンクして、゛あのシーン゛の意味や場面のつながりを伝えている。それは決して、恋愛を語っているのではなく、人の生命や人と人とのつながりや生きる力の大切さを意味しているのだ。いや、理解の仕方などはどうでもいいとして、柴咲コウがこの映画のために書き下ろした詞なのですから、せっかくならちゃんと最後まで聴いてみては?ハートフルなストーリーなのに、会場の雰囲気のせいでラストのラストに興ざめしたのは残念。  水草ショップ「トラッシュ」を開店した智史(山田孝之)のところに元モデルの森川鈴音がやってくる。鈴音にどこか懐かしさを感じていた智史だったが、鈴音が持つ三角形のプリズムをきっかけに、鈴音が幼
なじみの花梨(長澤まさみ)であることに気づく。プリズムは智史が花梨の誕生日にプレゼントしたものなのだ。すべては、13年前の゛あの町゛につながっていた。智史と花梨と佑司(塚本高史)は、小さな゛あの町゛で一緒に遊び、それぞれの事情でバラバラになっていた。今、花梨と智史が再会。佑司に会いたいと願う花梨と智史のもとに、音信不通だった佑司が交通事故で入院していることが判明する。゛プリズム゛は13年の時を越えて動き始める。そして、明らかになっていく花梨の秘密…花梨の命は、あとわずかだったのである。
 原作は、「いま、会いにゆきます」の市川拓司。淡くてせつないストーリーが原作者の真骨頂。今作も例外ではなく、ファンタジーさに温もりを感じるであろう。
 そして、主題歌はその後のストーリーを予感させるものになっているので、映画の続きとして、騒がすに聴くこと、である。

「バベル」

2007年05月16日 22時55分14秒 | Weblog
 銃はあると持ちたくなる、そして打ちたくなる…。父から預かった、ヤギを襲うジャッカルを退治するためのライフルが国際テロへと発展するとは。
 モロッコで放たれた一発の銃弾が、観光バスで旅行していたアメリカ人スーザンに命中する。スーザンの夫のリチャードは、辺境な村で救助もままならない環境に苛立ち、焦る。 しかし、その一発の銃弾が、アメリカとモロッコだけでなく、メキシコと日本をも巻き込んで事態は発展し、物語を紡いでいく。
 世界にバラバラになってしまった言葉では、もはや互いを理解することはできないのか、わかりあえることはできないのか。ラストに注目である。
 世界には、文化の違いがある。それを間違っているとか間違っていないとかは実のところ判断できない。それに伴い、生活レベルの違いが生じることがあるかもしれないが。それぞれの地域で、場所で、それぞれの気持ちを伝えない、だが簡単には伝わらない。現在のバベルの住民は、自分たちが抱える問題を解決する方法を見つけることができるのか。
 この映画、アメリカをちょっと皮肉った視点に置いているのが、ポイントであろう。
 ご存知のとおり、作品賞、監督賞、助演女優賞(菊池凛子)などアカデミー賞6部門、7ノミネートされた話題作。確かに、菊池凛子の演技は孤独感が漂っていてすばらしい。ブラピも゛ハリウッドオーラ゛を消して映像にとけ込んでいる。監督は「21グラム」のアレサンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ。
 


「ツォツィ」

2007年05月09日 22時45分19秒 | Weblog
 貧困に差別、この世界には理不尽なことが多い。貧困と差別から殺りく(これだけでなくとも事件は起こるものではあるが)が起こり、またそれが次の世代まで止むことはない。貧しいことは日常、しかし、貧しさから抜け出す方法もわからない環境があり…。
 ツォツィは親もなく、スラム街で暮らす。友だちとは゛ギャング゛をしてその日その日を過ごしている。ある日、裕福な女性を襲ったツォツィは、高級車を奪う。ところが、その高級車の中には赤ちゃんがいた。
 赤ちゃんの面倒を見るうち、ツォツィはこれまでの自分の境遇を振り返り我を取り戻していく。
 南アフリカの現状が心に深く伝わる映画である。