夢千代日記

SHIMAちゃんの徒然日記・雑記

本のはなし③「常設展示室」

2021年11月24日 11時13分18秒 | Weblog

 

著:原田マハ 出版社:新潮社 発行年月:2021年11月 シリーズ名等:新潮文庫 は−63−4 キー...

「常設展示室」原田マハの短編小説である。ご存知のとおり、原田マハはキュレーターとして

美術館で働いていた経歴を持つ。その彼女が、美術館で行われる特別展のような大きなイベン

トではなく、その美術館が所有していつでも鑑賞できる場所を起点として、あるいは原点とし

て物語を書き上げている。ゴッホやルノアールといった著名な作家が登場するが、物語はど

れもその人と家族、なつかしい景色が主役。その作品の秘めた力により、前を向く、一歩踏み

出すというものだ。

キュレーターとして絵画を売る、買う、情報を広めるなどのあらゆる視点をもって活躍してき

た原田マハの唯一無二の特徴が強みとなって物語に反映している。

この本を読むと無性に美術館に行きたくなる。それが、前回投稿した「メトロポリタン美術館

展」にもつながっている(この本を読んでいる途中で出向いた)。

美術館への誘いだけでなく、それぞれの立場でスッと入っていけるこの本は自分が経験したこ

ととしても重なって腑に落ちて

いく。

 

文庫化に当たり、解説は女優の上白石萌音が担当している。原田マハとも親交がある彼女。

この本の良さはその解説を読むのがいい。愛情が伝わるし、わかりやすい

 

 

 


「特別展 メトロポリタン美術館展ー西洋絵画の500年ー」

2021年11月22日 13時47分42秒 | Weblog

2021年11月13日(土)から2022年1月16日(日)まで大阪市立美術館にて開催。

自分の語彙力のなさに落ち込むが、とにかく滅多に鑑賞できる機会はないので気になっている人はぜひ!!!

〝凄っ!〟〝うわ!〟〝迫力!〟の連続。特に何も知らなくても、どこかで見たことがある絵画が、聞いたこ

とがある画家の名前がみつかるはず。

 

年末が近づくとおそらく、混んでいくことが予想される。

今でも行列はできているが、まだ平日はたいしたことはなさそう。


本のはなし②「渦 妹背山婦女庭訓 魂結び」

2021年11月16日 10時26分46秒 | Weblog

  

「渦 妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん) 魂結び(たまむすび)」

 

江戸時代、大坂・道頓堀の竹本座で立作家だった近松半二の一生を描いた物語。著者の大島真寿美

はこの作品で直木賞を受賞した。

 

道頓堀に生まれた穂積成章は、浄瑠璃が大好きな父の影響で竹本座や豊竹座の舞台を小さなころか

ら観て育ってきた。

母からは勉学においては諦められ、父は近松門左衛門からもらったという硯を持たせて浄瑠璃を学

ばせようと成章を修行に出させる。

近松門左衛門の物語が大好きで、近松を勝手に名乗り、その存在の半分にでもなりたいと半二にし

た。

ところが、弟弟子は歌舞伎の作家となっており先を越され、出世していく。いつも、自分の尻につ

いてきていたやつが…との思い。

しかし、彼は歌舞伎。自分は浄瑠璃。立場が違うと言い聞かせて、活動に励む。

そんな半二が「妹背山婦女庭訓」を書き上げ、亡くなるまでの一生が描かれている。

 

大島真寿美氏は愛知県の出身。

先日、大阪市中央図書館で開かれた講演会に参加した。講演会はトークショー形式で、事前に提出

されたアンケートを中心に進められた。

大島氏(先生呼びは禁止)は、若いころから歌舞伎が好きで観に行っていたということで、担当編

集者に「歌舞伎をテーマに書いてみませんか?」と声をかけられていた。近松半二という人は世間

では有名ではないが知っていた。「妹背山婦女庭訓」なら書ける気がした、と語った。

物語を進める〝お三輪〟の登場について話が止まらなかったが、その世界に没頭していたことが伝

わった。当方が本書を読んで思ったのは、そういえば、道頓堀には芝居小屋があったなあというこ

と。子どものころは、まだ角座や中座があったので、それに竹本座や豊竹座があった江戸時代の道

頓堀はかなり賑やかだったはず。

しかしながら、時代の波には勝てず、人が人形を操る浄瑠璃は衰退し、人が演じる歌舞伎舞台が台

頭する。

浄瑠璃は文楽と今は名前を変えた。綺麗な近代ビルが建ち、インバウンド用の店舗や商品が並ぶの

は、もう別物ともいえる道頓堀の光景だ。

現在、国立文楽劇場が存在する。だが、東京での国立劇場での浄瑠璃上演は満席になっても、大阪

の国立文楽劇場はなかなか人が集まらなという。

 

これでは寂し過ぎる。

今までの自分の知識が薄かったことに気づかされた。せめて、近松門左衛門の有名作品ぐらいは観

ていきたいと思う。

 

大島氏の作品の中には映像化されたものがある(映画「チョコリエッタ」森川葵、菅田将暉出演)。

だが、大島氏は大学時代、下作家として舞台作品(戯曲)を書いてきたので〝映像化されたら負け〟

との思いがあるとのこと。

〝映像化されます。おめでとうございます〟というのにも違和感があると聞き、そのあっさりし

た感覚にこちらもスッキリした。

 

第9回大阪ほんま本大賞受賞作品。歌舞伎や浄瑠璃のことを知らなくても、ぐいぐい読める。


『劇場版 きのう何食べた?』

2021年11月15日 10時28分03秒 | Weblog

劇場版 きのう何食べた?

『大奥』などで知られるよしながふみの漫画が原作。今作はドラマシリーズの劇場版である。ドラマ版に続き、監督を中江和仁、

脚本は安達奈緒子が担当する。

西島秀俊、内野聖陽、山本耕史、磯村勇人などのほかに、劇場版のキャストとして松村北斗が出演している。

 

筧史朗(西島秀俊)は、同居する賢二(内野聖陽)の誕生日に少し早いが、京都への旅行を提案する。史朗との旅行に喜ぶ賢二だが、

次第に不安な気持ちが高まってくる。シロさんの病気?別れ話?

しかし、それは史朗の実家へはもう賢二を連れていくことができないというお詫びの旅行だった。

そんな中、仕事帰りの史朗は見知らぬイケメンと親し気な様子で歩いているのを目撃。史朗はそのことについて賢二に聞くことがで

きず悶々とする。

さらに、小日向大策(山本耕史)から井上航(磯村勇人)がいなくなったとの相談を受ける。

一方、賢二は離れて暮らしていた父親が亡くなったことで実家の美容室の帰省。母に、この店を継ぐ気はないかと聞かれ、返事に

困っていた。

 

有名観光地ばかりが登場する賢二撮影のオープニングのスマホ動画。「そうだ、京都行こう!」と思ってしまう単純な思考回路だと

思っていたら、本編は意外とシリアス。

同性の恋愛だけではなく、親子関係、人間関係の問題が浮かび上がる。

自分が年を重ねてきた分、親も老いていく。避けてはとおれない問題にどう向き合っていくのか、考えていかなくてはいけない。

〝家族〟とは何かの捉え方も人それぞれにある。

買い物仲間の富永佳代子(田中美佐子)が教えるローストビーフの簡単な作り方(なんちゃってローストビーフ)や、賢二の好物で

あるブリ大根のおいしい料理の作り方などがドラマ同様に登場する。鑑賞しながら、お腹が空いてしまう

 

出演は他に、史朗の両親を田山涼成と梶芽衣子。賢二の美容室オーナー夫婦をマキタスポーツと奥貫薫。この美容室の新顔となる口の

悪いイケメン美容師を松村北斗が演じる。主題歌はスピッツの「大好物」。

そして、映画とは関係がないが、たぶんみんなが思う〝朝ドラ強め〟キャスト。前回や今回が登場しつつも、〝永浦組〟の副組長姿

また見れる。→わかる人にはわかるので、笑いが起こってしまう。

内野聖陽という役者は、本当に変幻自在なのである


『老後の資金がありません!』

2021年11月08日 10時32分40秒 | Weblog

老後の資金がありません!

垣谷美雨の同名小説原作は既読。映像化されるだろうと思っていたうちのひとつ。

〝老後の生活に2千万円が必要である〟と言われ出し、そんな資金どこに??と焦る中高年が生活や日常と向き合い、人生を新た

に進み始める。

主演はドラマシリーズ「緊急取調室」などの天海祐希。監督は『こんな夜更けにバナナかよ』の前田哲。

 

主婦の後藤篤子(天海祐希)は、節約しながら夫の給料や自身のパート代をやりくりして老後の資金を貯めてきた。その金額は、

700万円と少し。しかし、舅が他界し夫の妹夫婦(若村麻由美、石井正則)がやってきて、〝親は有料老人施設に入っていたもの

の、すでにお金はなく、今まで自分たちが近くにいて親の面倒を見てきたのだから葬儀費用はそっちで持つべき〟と言われ、400万

円近い葬儀費用を負担することに。

しかも篤子は、ここから頑張ろうと思った矢先に、パート先の上司に呼び出され、更新はしないことになりますと通達されるハメに。

そして、娘・まゆみ(新川優愛)が結婚するので資金を出してほしいと言い、頭を抱える。さらに、何と夫(松重豊)の会社が倒産!

そこに、成り行きで姑・芳乃(草笛光子)を引き取ることになるのだが、この姑の金遣いが荒かった!!

どんどん貯金が無くなり、生活もままならない。追い詰められていく篤子はストレスも最高潮となってしまう。

それなのに、姑は〝生前葬〟をやると言い出してしまい…。

 

失礼ながら、お金に困っていなさそうな天海祐希が主婦??と思ったのだけれども、これが!!適度な力の抜け方でちょうどいい。

コメディもいけそう。さすがというしかなかった。夫役の松重豊とは背の高い夫婦となっていて、視線高め。

そして、〝生前葬〟のシーンこそが天海祐希と草笛光子をキャスティングした理由だと思う。この二人でしか成立しなかった。

番外のようだが、三谷幸喜が出るシーンの二人のセリフもチェックを。

息子の勇人(瀬戸利樹)も独立し、夫婦は自分たちらしい選択をすることになる。

いいなあ、この選択。ありかも。

 

追記

当日14:55分の回にぎりぎりで劇場に到着し、既にネットでは購入できなかったので窓口へ。

「老後の資金はまだ間に合いますか?」と聞いた当方に、若い男性スタッフが「14時55分の老後の資金がありません!ですね」

と冷静に対応されていました。「老後の資金はまだ間に合いますか?」映画館でなければ、ちょっとまずい問いかけだと、映画

を観ながら思い出してました。