原作が井上ひさしということもあってか、映画なのに戯曲作品を観ている感覚があった。舞台役者が脇を固めていることやシチュエーションがいったり来たりしない演出になっていることもある。とくに、ラストシーンはこれで舞台の幕が降ります…という憎い演出になっていると思う。山田監督初のファンタジー作品。声高にではないが、山田監督は戦争否定を作品で描いている。
吉永小百合と二宮和也の共演に監督が山田洋次ということで話題。若い世代に戦争のことを知ってもらおうと、キャストに工夫がされたと思われる。期待を裏切らず、二宮和也は軽妙で変幻自在な演技を見せている。
原爆が投下されてから3年後の長崎。福原家では夫が結核で亡くなり、長男はフィリピンで戦死。医大生だった次男・浩二は原爆で亡くなった。ある日、助産婦として働く伸子のところに、亡くなったはずの浩二が現われる。浩二は、「母さんはあきらめが悪いから、なかなか出てこれんかった」という。
その日以来、伸子と浩二の不思議な交流が続いていく。そして、浩二がやってきた理由とは。。
浩二の恋人・町子には、昭和の時代がピタリとはまる黒木華。この作品でも名演。すごく渋めの着物が似合う。他の出演者も浅野忠信、加藤健一、辻萬長、橋爪功と芸達者なキャストが揃っている。
町子のところにも、浩二が現れてほしかったなぁ。それに、やっぱり小劇場系の舞台な作品ぽいですな。
松竹映画120周年記念作品。
(アポロシネマにて試写会、12月12日公開)