夢千代日記

SHIMAちゃんの徒然日記・雑記

『愛にイナズマ』

2023年10月29日 20時58分32秒 | Weblog

愛にイナズマ

アフターコロナの世界。夢を奪われた男女が世の中に反撃しておく様と家族の変容を描く

作品で、松岡茉優と窪田正孝がW主演する。『舟を編む』などの石井裕也監督が脚本もつ

とめた。

 

折村花子(松岡茉優)は念願の映画監督デビューに向けて、街で人を観察し、撮影してい

た。そんな彼女はある日、偶然入ったバーで空気が読めない男・舘正夫(窪田正孝)と運

命的な出会いを果たす。正夫は花子のことを監督であること知っており、自分友達・落合

(仲野太賀)がオーディションを受けていることを話す。

ようやく人生が好転し始めたと思った矢先、花子はプロデューサー(MEGUMI)と助監督

(三浦貴大)に騙されて、全てを失ってしまう。そして、10年以上音信不通だった父(佐

藤浩市)に連絡を取り、世の中を見返す映画を作ると決める。そこに、兄の誠一(池松壮

亮)と雄二(若葉竜也)もやってきて…。

 

前半のMEGUMIと三浦貴大が出てくる場面は、どの言葉もひどい。若手の名もない映画監

督のつらさはこれか!というほどだ。終始腹立たしい。「何やこの二人!」とむかつく。

だがそれは、役者がその役をやり切っているからだが、まあ、へこむことこの上ない。

その後、家族の真相が次々と描かれるが、そこに出演してくるキャストはワンポイトなの

に豪華。そして、その解明の仕方は派手さはないが、ずんずんと染み込んでくる感じ。こ

れが邦画の良さだと思うところ。最悪の家族が、最高の家族となっていく。

挑戦的な手法だが、これもまた映画なのである。花子が決めていた映画のタイトルは「消え

た女」。最後に花子が変更する映画のタイトルに家族への思いが溢れる。

 

出演は他に、高良健吾、鶴見辰吾、北村有起哉、中野英雄など。

仲野太賀と中野英雄は同じシーンに出ているわけではないが、同じ作品に名前が連なるの

は珍しい。そして、仲野太賀のあるシーンは、その昔、父の中野英雄が出演していた名作

ドラマとかぶる場面があり、当方のようなドラマファンはそこに反応するかもしれない。

 


『スクロール』(DVD)

2023年10月23日 08時33分48秒 | Weblog

スクロール

橋爪駿輝のデビュー小説「スクロール」を北村匠海と中川大志が主演した青春群像癖。

 

学生時代の友人である“僕”とユウスケは友人・森が自殺していたことを知る。

就職したが、上司からのパワハラに苦しみ、SNSで思いを吐き出すことでバランスを

保っている僕(北村匠海)と、刹那的に生きてきたユウスケ(中川大志)は、森の死

をきっかけに生きることや愛することを思い、見つめ直すことになる。僕の書き込み

に共感し、特別な自分になりたいと願う“私”(古川琴音)。

ユウスケとの結婚が空虚な心を満たしてくれると信じる奈緒(松岡茉優)の時間が交

錯していく。

 

理想と現実のギャップ。生きづらさに悩む4人の若者たちが社会と自分自身に必死に

向き合う姿を描く。

難しい役どころの4人は伸び盛りの実力は俳優たち。この4人だからこそ、この作品

に取り組めたとも言える。悩みと苦しみの向き合い方がそれぞれ。中川大志の役がテ

レビマンであることに注目だ。そして松岡茉優。彼女の映像作品を観ると、心の繊細

さが見受けられるが、この作品でもそれがわかる。それは彼女の持ち味。

北村匠海、古川琴音パートの物語も二人の個性が溢れる。

そして、もっと明るい群像劇もこの4人で観てみたいと思った。大手作品ではないと

ころにこのメンバーに集結しているのが良い。

出演は他に、MEGUMI、相田翔子、忍成修吾、金子ノブアキ、水橋研二など。


『月』

2023年10月18日 21時46分39秒 | Weblog

2017年に発表された辺見庸の小説「月」は、実際の障がい者殺傷事件をモチーフにしたもの

である。ただし、実際のものだけではなく、過去からずっと日本のいわゆる施設で行われて

きた疑問、闇、現実も表現されている。その分、オファーを受けた石井裕也監督や出演者た

ちは、ただならぬ覚悟を持って臨んだという。

この作品は、社会が、個人が“見て見ぬふりをしてきた事実”を突き付けている。

劇中台詞の「生産性のない非生産者は、、、、、」の後に続く言葉がどっしりと重い。

 

あることがきっかけで“書けなくなった”作家・堂島洋子は、彼女を『師匠』と呼ぶ夫の昌平

(オダギリジョー)とつつましく暮らしていたが、森の奥深くにある重度障害者施設で働く

ことになった。

施設職員の同僚には、作家を目指す陽子(二階堂ふみ)や絵が好きで利用者に紙芝居をする

青年・さとくん(磯村勇斗)らがいた。

そして、入居者には洋子と同じ生年月日の“きーちゃん”が光のない部屋でベッドに横たわった

ままとなっていた。動かない同じ年の“きーちゃん”を洋子は気にかけるようになっていく。

だが、この施設は利用者の楽園や住処などではなく、職員による虐待や暴言が日常茶飯事とい

いう大きな問題を抱えていた。そんな社会の歪みを誰よりも憤るさとくんだが、彼の中の正義

感や使命感が怒りとなり、徐々に変貌していく。そして…。

 

出演は他に、板谷由夏、笠原秀幸、モロ師岡、鶴見辰吾、原日出子、高畑淳子など。石井監督

は脚本もつとめた。

この映画はサイコでも、ホラーでもなく、これが現実であり実態。その現実を受け取るには、

重すぎる面もある。生きるとかどういうことなのかを投げかけられる。また、福祉の現場の実

態(働く者の給料の低さや環境の劣悪さも含めて)を知ることともなるので、ぜひ。重い内容

なので、体調を整えての鑑賞を勧めたい。

 

 


『DOMINO ドミノ』(新聞週間・試写会)

2023年10月15日 21時10分54秒 | Weblog

画像11

映画のフライヤーには、冒頭5秒、既に騙されている。と、ある。

原題は“HYPNOTIC”。その言葉が何度も登場するので、何を意味するのかは最後まで

観るとわかるはず。

 

刑事のダニー・ロックは、最愛の娘ミニーを誘拐された悲しみから立ち直ることがで

きない。だが、心理療法士はそろそろ仕事を始めてもいいのでは?と言う。

そんなある日、強盗計画が立てられるとの通報が警察に届き、相棒と銀行へ向かう。

そこで見かけた怪しげな男を見たロックは、この男が娘の誘拐に関与していると確信

するが、不思議な力が働いているかのように警官たちはお互いに撃ち殺し、謎の男は

追っても追っても捕まえられない。

まるで、現実と違う“世界”を行き交う。現実は何なのか?

“本当のラスト”を知るにはもう映画は終わりと思って座席を立ってしまうと観れない。

全く違う感想を持って帰宅することとなる。

しかし、ラストシーンを観たからといってそれも本当のラストではない可能性がある。

重層的に練られた構成となっているが、そのしくみがわかった時は衝撃的だ。

ある意味、怖い。心理的にはスリラーである。終わりがない“世界”を感じてほしい。

 

『ゴーン・ガール』のベン・アフレックが主演。“絶対に捕まらない男”を演じるのは

『ミュータント・タートルズ』のウィリアム・フィクナー。

監督、原案、製作、撮影、編集は「スパイキッズ」シリーズのロバート・ロドリゲス。

公開は、10月27日。

本日は新聞週間での試写会。在阪新聞社が主催している。試写会は第二部。

 

その第一部はトークセッションで井上咲楽がゲスト。若者の選挙について、自身の関わ

り方、“額賀派分裂”という言葉から、政治に興味を持ったとのこと。独自の選挙演説の

取り組み方について語っていた。ノートの取り方や向き合い方を聞き、なかなかやるや

ん!と上から目線での感想とさせていただきます。

ちなみに、去年から「新婚さんいらっしゃい」のアシスタントを務めているが、その時、

大阪のグルメも経験する。自分はイカ焼き(あの店の)は玉子入りより玉子が入ってい

ない方が好みとのこと。←わかる人にはわかる


シス・カンパニー舞台「いつぞやは」

2023年10月09日 21時43分24秒 | Weblog

友人の死後でも、SNS(交流サイト)上に痕跡が残っている。この不思議な感覚から生まれた

物語。

作・演出は加藤拓也。29歳。今年、讀賣演劇大賞で優秀演出賞、岸田國士戯曲賞を受賞し、

注目を集めている。

 

かつて、一緒に活動していた劇団仲間のもとに、一人の男が訪ねてくる。故郷に帰ると淡々と

話すが、その近況は思いがけないものだった。ステージ4のガン。そのこともあり親と暮らす、

と。その事実を聞いた仲間たちは、驚き、昔をなつかしむ。

 

舞台の背景は、白めの壁と長椅子の形式で台がしつらえられた一つの部屋。その椅子の下は開

閉ができるようになっており、小道具が出てくる。この小道具を出しながらあるいは直しなが

ら役者は演じる。机は、裏返しとなり、乳母車としても利用されていた。舞台転換はないが、

壁にも仕掛けがある。小劇場系の良さがあり、おもしろい。秀作だと感じながら観劇していた。

物語は、過去と現在を行き来するが、出演者の学生時代の格好や髪型も工夫されている。

 

この物語の主演は当初、窪田正孝だったが頸部のけがのために降板しており、平原テツに交代

している。劇団仲間には、夏帆、今井隆文、豊田エリー。地元の同級生は鈴木杏が演じている。

鈴木杏が出演する舞台は何度か観ているが、今回は制服姿を見せていて、これがまたスタイル

のいいこと!足が長い!細い!そして、学生姿で弾けていた。だが、バツ1子持ちの役という…

現在パートだった。

脚本家の役は橋本淳。冒頭は、客席を歩きながら、飴を観客に配るところから始まった。

当方は舞台「エヴァンゲリオン」以来、新たな窪田正孝を観るのを楽しみにしていたが、持ち

越し。この芝居でのセリフいっぱいの役も観たかった。

東京公演は10月1日までシアタートラムだったので、おそらくこの舞台は小劇場が似合う。

10月4日から9日まで公演だった大阪は、森ノ宮ピロティホール。ここは少し大きかったかも

しれない。


『アナログ』

2023年10月08日 22時02分43秒 | Weblog

画像6

水島悟(二宮和也)は、手造り模型や手描きのイラストにこだわるデザイナーだ。

そのアイデアはいつも、上司(鈴木浩介)に持っていかれて手柄にされてしまう。

だが、それでも好きな仕事ができれば悟はそれでよかった。

ある日、自分が手がけた喫茶店「ピアノ」で、自分のデザインの良いいところを褒

める、みゆき(波留)という女性と出会う。みゆきは、悟に母が大事にしていた古

いカバンを褒められ、お互いに好印象を抱く。

またみゆきに会いたいと願う悟は、携帯の番号を聞こうとするが、みゆきは携帯を

持っていないという。そして、毎週木曜日に「ピアノ」で会うとことを約束する。

週に一度だけ会う、とても小さな大きい約束。

 

会える時間を大切にして、ゆっくりと関係を深めていく。そして、悟はみゆきにプ

ロポーズしようと、「ピアノ」でみゆきを待つ。

だが、約束の木曜日にみゆきは現れることはなく…。

みゆきが隠していた過去とは、その秘めたる思いとは…。愛する人を想い続けると

いうこととは?

 

大人の純愛。完結までに時間が飛ぶ。その間に何が起きていたのかが、起きるのかが

ゆっくりと明かされていく。ある日突然、愛する人がいなくなる。会いたい…ただ、

その思いだけ。時を経て真実が明かされていく。

二宮和也が恋愛ものの映画で主演するのは珍しい、と思いながら鑑賞していた。飄々

として人を食ったような役がうまい彼が、どう恋愛物を演じているかがポイント。

出演は他に、桐谷健太、浜野謙太、藤原丈一郎、坂井真紀、筒井真理子、佐津川愛美、

板谷由夏、高橋惠子、リリー・フランキーなど。

ビートたけしの同名小説を『ホテルビーナス』『鳩の撃退法』のタカハタ秀太が監督

した(タカハタ監督(当時は高畑)は「天才たけしの元気が出るテレビ!!」でディ

レクターデビュー)。インスパイアソングは幾田りら「With」。


ミュージカル『生きる』

2023年10月01日 22時18分41秒 | Weblog

黒澤明監督が1952年に発表した映画『生きる』を原作に、演出家の宮本亞門がミュー

ジカルとして生み出した。2020年に再演されたときにも話題となり、3度目の上演と

なる今回も、主人公の渡辺勘治役は市村正親と鹿賀丈史のミュージカル界の重鎮がWキ

ャストで演じる。

レジェンドの二人。3年前は鹿賀丈史の渡辺勘治を鑑賞している当方は、今年も上演

があることを知って市村正親の渡辺勘治を観たい!!と思っていた。

今回は梅田芸術劇場で当方の座席は前から9列目。舞台とオーケストラピットが近い席。

3年前は、兵庫県立芸術文化センターで上方の座席だった。

 

物語の展開はわかっている。細かいところは忘れているかも?の状態だったが、感動。

感動の渦、渦、渦。前回は予習として、今日は復習としての思いもあったが、二回観

ても飽きることなく、やっと腹に落ちた!という思い。ラストでは知らず知らずに流

れてくるもの熱いものがあった。

主役として、ミュージカル役者としての見せ場は大きく二つ。前半の幕間前に勘治が

“まだ遅くない”と歌い上げるところ。そして、オーラスの「ゴンドラの唄」…♪命短し

恋せよ乙女~~~♪とブランコに乗って歌う場面。あとは、アンサンブルが歌ったり、

アンサンブルと一緒に歌ったりで、その間に細かい演技をしていることの方が多い。こ

の見せ場のために十分待てるし、楽しめる。音楽の迫力。演者も近くにいて、大満足だ

った

本日は大千穐楽。3回のアンコールがあり、主要な役者から挨拶があった。それぞれに

個性的な挨拶に最後は市村正親。演じているときとは違う、お茶目な姿を見ることがで

きた。鹿賀丈史ともども、まだまだやれるとのコメントがあり、観客席は湧いた。

 

物語は、当方の2020年11月15日ブログアップ分を参照されたし。

 

本日のキャストは、渡辺勘治を市村正親、小説家は上原理生。渡辺一技を実咲凛音、組

長は福井晶一、助役を鶴見慎吾が演じた。渡辺に“まだやれます”と背中を押す元部下の小

田切とよは音楽座ミュージカル所属の高野菜々。息子の渡辺光男役は村井良大だったが、

体調不良のために代役。←ごめんなさい。役者さんの名前がわかりませんでした

朝の7時半に呼び出され、東京から急いできたとのこと。ドキドキしながらも、初日と大

千穐楽を迎えることができました。←ありがとうございました。だから私たちは鑑賞でき

ました。そして、大千穐楽に舞台に立つことが出来なかった村井良大さん、またの機会

に会えることを楽しみにお待ちしております。

 

役者の交代により、開場時間と開演時間が遅れて開始となったものまた思い出となるで

しょう。