花火師の唐松富太郎(松本潤)が父親の唐松兵頭を殺した罪での裁判シーンから
舞台は始まる。
父親が自分が愛するグルーシェニカ(長澤まさみ)を横取りしたことで、富太
郎の運命は変わる。その富太郎の夢は、戦争が終わると花火を打ち上げること
だ。弁護士の不知火(野田秀樹、神父との二役)は、どんな無理な弁護になろ
うとも富太郎を無罪にしようとする。一方の検事・盟神探湯(竹中直人、唐
松兵頭と二役)は、富太郎が父殺しをしたことに間違いないと強く迫る。富太
郎の弟の威蕃(永山瑛太)は、できるだけ早く化学式を完成させようとする物
理学者を演じている。威蕃にもまた、兄の富太郎には必ず無罪になってほし
い、そう思う理由があった。
たまにやってくるロシアのウワサスキー夫人(池谷のぶえ)の言動にも振り回
されながら、裁判はまじめに進んでいく。
裁判から、過去の場面へ。またその逆と、目まぐるしく展開していく。テープ
や棒を小道具にして、部屋を表したり、縛られていく感情を表現するものにな
ったりする。そして、前衛的な動きや、でんぐり返しやジャンプをしながら台
詞を言うなど、遊民社時代から引き続き、体全部を使って舞台はつくられてい
る。アイデアの舞台づくりはさすが。
長澤まさみは唐松在良とグルーシェニカの二役。質素でおくゆかしい神につか
える女性と体を売ることを生業とする両極端な女性を演じている。彼女は、舞
台では弾けてふり幅のある演技を見せると当方は思う。背も高く、舞台がよく
似あう。今回の役柄も、色っぽい役はより色っぽく、二つの役を行ったり来た
り早変わりもありつつ演じわけている。衣装が崩れていくのもハラハラする。
さて、この作品はドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』をモチーフにし
ている。“カラマーゾフ兄妹”が花火師一家“唐松族の兄妹”の話とするアイデア
を野田秀樹は思いついた。その難解さとおもしろさ。
そして、野田秀樹は長崎の出身だ。この展開があの問題に着地させる話となる
のは、何とも考えさせられる。幾重にも野田秀樹の世界観が存分に楽しめる。
また、二役のみなさんの早着替えはうまくいくのか?など、物語そのものとと
もに、ハラハラドキドキすることがたくさんある。
松本潤は大河ドラマ後に、この舞台作。顔の濃さ(←ここは受け流して😓 )
が舞台で映える。嵐が稼働しているときは、ワークショップに参加しながら
も、野田秀樹作品に出演することがないほどの忙しさだったはずだ。
そして、竹中直人の自由過ぎて計算された?演技。さらに、ウワサスキー夫人
にしか見えない池谷のぶえ、富太郎の恋人・生方莉奈(村岡希美)←“カラマ
ーゾフの兄弟”からのカタリーナをもじった名前を付けられた!…という適材
適所。番頭呉剛力を演じる小松和重もとぼけた演技をさせたらピカイチだ。
どの配役も舞台での実力と人気がある人ばかり。この舞台を観れたこと自体が
ラッキー過ぎて、思う存分堪能した。
東京公演は2024年7月11日~8月25日まで東京芸術劇場にて、その後は
北九州公演2024年9月5日~9月11日(J:COM北九州芸術劇場大ホール)
大阪公演 2024年9月19日~10月10日(SkyシアターMBS)
ロンドン公演
2024年10月31日~11月2日(Sadler’s Wells Theatre)
と続く。東京では、当日券が発売されていたのでチケットが前売りで手に入ら
なかった人は、チャレンジしてみては?
松本潤好きの私は、13年振りの舞台で野田秀樹の世界観をどう表現するのか観てみたいというミーハー的な好奇心の気持ちになりました。あさ~いコメントでした。
コメントがほしかったです。ありがとうございます。エネルギーが必要な移動でしたが、
ミーハー精神は大事だと思います!