1987年の春。長崎県の港町で生まれた18歳の横道世之介は、大学進学をきっかけに上京する。
入学式で声をかけてきた倉持とサンバサークルに入り、普通の大学生活を過ごしていた。パーティーガールをする千春のことなんかも気になっている。
そして、ダブルデートをきっかけに社長令嬢の与謝野祥子と出会う
。
嫌味がないが、そこそこ図々しい。頼みごとは断れないという人柄。少し不器用ではあるが、人懐こい。そんな世之介の周りでは楽しく愛しい日々が過ぎていく。
彼のいなくなった16年後。世之介の元ガールフレンド、親しかった友、そして彼に関わった人たちが、彼と過ごした日々と記憶を思い起こす。
昔、世之介に関わりがあった人が、ふと世之介のことを思い出す、というのが本作。
昔のこととはいえ、親しかった友人や元恋人のことなら、普通に覚えているし、忘れたくなくても覚えているだろうに、どうして急に思い出すの?ということなど、ツッコミどころはある。しかし、そんなことは細かいことだ。ありふれた日常にスポットを当て、自分らしく、精一杯生きることの大切さを描く。上映時間は160分と長めだが、徐々に引き込まれていき、時間の長さは気にならない。
携帯電話が一般的ではなく、ちょっと不便だったあの時代。だけど、イキイキと生きることができた。過去に思いを馳せながら、あるいは今の時代を思いながら、観てみてはいかがだろうか。今の立ち位置から、昔を振り返る時間を持つことも悪くない。
『蛇にピアス』の高良健吾と吉高由里子が5年ぶりに共演。『蛇にピアス』では、濡れ場も含め激しいシーンの連続だった二人。この映画では、初々しいキスシーンを見せている。セリフの間合いもいい感じで、息のあったところを見せる
。吉高由里子が演じるお嬢様は、どこかズレていて独特。嫌味を感じさせないのは彼女らしさか。
主題歌はASIAN KUNGーFU GENERATIONの「今を生きて」
監督・脚本は沖田修一で、高良健吾は『南極料理人』『キツツキと雨』に続き3度目のコラボ。主演は3度目で初である。出演は他に池松壮亮、伊藤歩、綾野剛など。