夢千代日記

SHIMAちゃんの徒然日記・雑記

『せかいのおきく』

2023年04月29日 22時48分36秒 | Weblog

特集  

『どついたるねん』『顔』『KT』など、大作ではないが名作を生みだしてきた

阪本順治が監督・脚本をつとめた新作。

モノクロでの時代劇。これだけでも気になるところだが、内容がかなり攻めて

いる。ただ、時代劇でも戦いはなく、幕末に生きる市井の人々、下々の人の話。

冒頭から「・・・」の描写で度肝を抜かれる。が、これは下々の生活のこと。

厳しい現実はある、だがその向こうに“せかい”が広がっているという物語である。

 

22歳のおきく(黒木華)は、寺で子どもに文字を教えることで生計を立てている。

武家の育ちでありながら父の源兵衛(佐藤浩市)が正義をとおしたことで没落し、

今は貧乏長屋で父と二人で暮らしている。その父、源兵衛は昔の因縁があるよう

で命を狙われている。

矢亮(池松壮亮)は、毎朝江戸に来て糞尿を買い取り、農村に売る仕事をしてい

る。その矢亮の弟分である中次(寛一郎)が便所の肥やしを汲んで運んでいるの

を、おきくは知っている。

ある時、喉を切られて声を失ったおきくは、長らく伏せっていたが、それでも子

どもたちに文字を教えることを決意する。そして、中次の体のことが心配なおき

くは雪の降りそうな寒い朝に中次のもとへ走り出す。やっとの思いで中次に会え

たおきくは、身振り手振りで自分の思いを伝える。

江戸の小さな片隅。日々の営みに精一杯のおきくや長屋の住人たち。貧しいなが

らもいきいきと生きる。矢亮と中次もまた、糞尿を売り買いし、くさい汚いと言

われながらも、世の中を変えたいという希望を捨てない。その先の“せかい”を見

たいと、前を向いて生きている。

 

ヒロインの黒木華は、もはや名女優の域。この人は、本当に時代劇が似合う。着

物姿に違和感がなく、所作にも無理がない。声が出なくなる役となるため、ほと

んどセリフがないのだが、その“口ほどに物を言う“演技に目がいく。

また、池松壮亮という芸達者な俳優と今回が初めて父である俳優、佐藤浩市との

共演となる寛一郎。そのシーンで漂う緊張感を映画ファンとしては体験したい。

佐藤浩市は『KT』の時には主演しており、阪本監督とは旧知の仲である。

 

何か大きいことが起こる映画ではない。ほのかな恋と、糞尿を運ぶ中に絡めた若

者たちの夢とその先の“せかい”の話。ただ、それだけ。

物語は、序章 江戸のーーーーーーはどこへ  など章ごとに分けられて進む。

この章ごとのタイトルが秀逸である。ここも攻めている。

上演時間は90分、さっくりとしていて、現代に通じる物語でもあり観やすい。

 

出演は他に、眞木蔵人、石橋蓮司など。

そして、今作は気鋭の日本映画製作チームと世界の自然科学研究者が協力して、

様々な時代の「良い日」に生きる人々を描き「映画」で伝えていく「YOIHI 

PROJECT」の第一弾作品である。


「TSURUBE BANASI 2023」

2023年04月20日 23時40分37秒 | Weblog

 

笑福亭鶴瓶の落語ではない、別のカテゴリーとしてのお笑い“噺“。

漫談のようであり、漫談ではなく。一人で雑談のように噺続ける芸である。

 

ノンストップではあるが、前半は自分の周りにいるおもしろい人の噺。

弟子である故・笑福亭笑瓶さんとの思いで噺。

マネジャーや一般人から鶴瓶本人の携帯にかかってくる、不思議でおもし

ろい噺。“こんなんある?”の特選集。

後半は、妻に人として不適合と言われる…に関連しての厳選エピソード。

最後はそのエピソードを映像化し、湧かせる。

 

笑福亭鶴瓶だかこそ集まってくる楽しい人たちと、本人の観察眼。観客も

大笑いだったが、鶴瓶師匠本人もみんなの笑顔が見られてうれしかったとの

ことだった。落語は一切しないのだが、チケットは取りづらい。

大阪公演は4月19日~23日まで。そのあとは東京公演が(5月10日~14日)

が控える。

毎日中身を考えるのに頭がぐるぐるしているとのこと。

 

 


ミュージカル「ジェーン・エア」

2023年04月11日 07時10分52秒 | Weblog

イギリスの古典的小説で、これまで何度も映像化や舞台化がされている「ジェーン・エア」。

今回は主演であるジェーン・エアとヘレン・バーンズ役を上白石萌音と屋比久知奈でダブル

キャスト。相手役のエドワード・ロチェスターを井上芳雄が演じている。当方が観劇したの

はジェーンが上白石萌音でヘレンが屋比久知奈の上演回。

そして、この舞台には演者を間近で観ることができる“オンステージシート“が用意されてい

るが、当方はその座席の下手側2列目での観劇となった。演出は井上芳雄、上白石萌音作品

ではすでにおなじみの世界的演出家・ジョン・ケアード。

 

1840年代のイングランド。父母を亡くしたジェーン・エアは、伯母のミセス・リードに引き

取られる。だが、率直な物言いで媚びることをしないジェーンを、伯母は目の敵にし、いと

こにもいじめられ、不遇な幼少期をおくることに。

そして、ジェーンを疎ましく思う伯母は、規則が厳しいことで有名なローウッド学院に送っ

てしまう。学院では理不尽な仕打ちに怒りが震えるジェーン。そんか彼女にヘレン・バーン

ズは“赦し“を教える。学院での厳しい生活の中で、やがてジェーンとヘレンは親友となり、

かたい絆で結ばれるが、ヘレンがはやり病にかかってしまい、若くして天国へ旅立つ。

8年後、ジェーンは学院で教師をつとめる立場となっているが、自由を求めて学院を離れる

ことを決める。木々に囲まれた広大な屋敷、ソーン・フィールド・ホールに赴任したジェ

ーンは、主人のエドワード・フェアファックス・ロチェスターの被後見人である少女、ア

デールの家庭教師となる。

ロチェスターは風変わりで皮肉ばかり言う嫌な男。だが、ジェーンは彼の孤独や自分と似

ている雰囲気を感じとる。そんなジェーンをロチェスターもまた、、、。

やがて、心惹かれて行くふたり。だが、この屋敷には夜中になると聞こえてくる謎の声が

あったーー。

 

イギリスの当時の背景を持つ小説、演出もまたイギリス出身のジョン・ケアード。この作

品を大切にとても大切に創っているのが伝わる。キャストは何役もこなし、劇場も小さめ

だ。井上芳雄は言うまでもなく、上白石萌音はときに優しく、ときに激しく、ときに悲し

く、ときに母性豊かに歌う。このコンビのチケットは本当に取れなくなっている。

そして、オンステージシートでの観劇はというと、前列と最後列以外はあまり見えないか

も。少なくとも前から2列目は、前列の人の後頭部の間からキャストがたまに見えるとい

う感じだった。いいんだか悪いんだかよくわからん座席だ(⁠╯⁠︵⁠╰⁠,⁠)そんな思い。だが前半

ラストに歌うロチェスターとジェーンの“セイレーン“を聴いたあと「何このふたり!!」

とふっとんだ。よく観ると、演者の細かな指づかいや表情も観れるし、舞台裏も垣間れる、

オケピも観れると気持ちを改めて。

ただ、ラストシーンは!ラストシーンだけは!、正面から観たかった。ということで、オ

ンステージシートと一般席の両方で鑑賞するのが一番いい。が、チケットは取れないし、

高額チケットなのでどちらかにはなってしまう。

ちなみに、最後列はカーテンコールのときに特別なものが見えたのではないかと思う。

 

出演はほかに、春野寿美礼、神田恭兵、折井理子、大澄賢也、春風ひとみなど。

オンステージシートは一般席より、高額。そのぶん、専用の黒めのマスクがついてくる。

ドレスコードも黒、黒に近い服装の条件があった。屋比久さんのヘレンも素晴らしかっ

た。見事な歌声でした。

また、すぺての公演でミルキーを配布してくださっている、不二家さんと上白石さん、

ありがとうございます。喜んでいただきました!

東京芸術劇場プレイハウスで3月11日〜4月2日まで公演のあと、大阪の梅田芸術劇場シ

アター・ドラマシティにて4月7日〜4月13日まで公演している。

 

蛇足ではありますが、足を負傷し松葉杖をついた私に寄り添って、出入りから座席着席、

移動まですべてを見守ってくださった梅田芸術劇場シアター・ドラマシティのスタッフ

のみなさま、ありがとうございました。また、会場のオンステージシート受付の待ち合

わせで、私のことを気にかけ、親切にしてくださったご婦人にもお礼を申し上げたいで

す。終演後、再び会うことがかないませんでした。他の舞台作の話ができて短いですが、

楽しい時間でした。

 


『仕掛人・藤枝梅安2』

2023年04月08日 21時41分24秒 | Weblog

仕掛人・藤枝梅安2

 池波正太郎のベストセラー時代劇小説「仕掛人・藤枝梅安」シリーズを池波正太郎生誕100

周年となる2023年に豊川悦司主演で映画化した2部作の第2部作。

 

 梅安(豊川悦司)は、相棒の彦次郎(片岡愛之助)と京に向かう道中、彦次郎はある男の顔を

見て憎しみを露わにする。かつて、彦次郎の妻と子を死に追いやったその男は、彦次郎が絶

対に許せない仇だった。

 そして、上方で殺しの依頼を仲介する元締めから、彦次郎の仇の仕掛を依頼された梅安は、

浪人の井上半十郎(佐藤浩市)とすれ違う。井上と梅安もまた因縁の仲だった。

 

 菅野美穂、小野了、高畑淳子、小林薫が第1部から引き続き出演しているほか、椎名桔平、

佐藤浩市、一ノ瀬颯が第2部から登場している。監督、脚本は河毛俊作、大森寿美男がそれぞ

れ引き続き担当した。

 

 第1部を鑑賞した人なら気づくだろうが、エンドロールが終わっても座席を立たないように。

エンドロールの中に「この人どこに出てた?」と思う名前に気づくはずだ。座席を立たないで

いるとその疑問が解決する。そして、彼は何者なのか??の新たな疑問も生まれる。ぜひ、思

いを寄せてほしい。

 前作はスッキリ爽快感があった。今作は、それとは違う重くて沼のような作品となっている。

そして何より、文字どおりの豪華キャスト。映画ならではの配役で、誰一人として抜けてはな

らない。そこも、体感してほしい。沼はきちんと解決してから出たい。続編は期待できそうに

もないし、現代では作りづらくなっているであろう時代劇。

でも、時代劇ってやっぱりいい。