夢千代日記

SHIMAちゃんの徒然日記・雑記

『最強のふたり』

2012年09月27日 11時05分28秒 | Weblog
 久しぶりにフランス映画を観た。ヨーロッパ映画には、美しい景色を堪能できることや、芸術性が高く感嘆する、ということがあるが、この作品はその視点ではない。障害者を取り上げた作品は社会へ向けたメッセージ、ということもあるが、タイトルは『最強のふたり』。これが確かに、最強なのだ。

 障害者介護の仕事をするための面接会場。そこには、経験のあるもの、ないもの、多くの人が面接に来ていた。ドリスもその一人だったが、彼の目的は仕事に就くことではなく、生活保護をもらうこと。就業活動を3回すると、手当てがもらえる。だから、書類にサインしてほしい。それが彼の希望だった。

 だが、ドリスは採用される。面接した会場は雇い主の自宅で、雇い主のフィリップは大富豪だったが、不慮の事故で全身麻痺になっていたのである。

 ここから、ドリスのフィリップへの容赦ない障害者虐待が始まる…?

 障害に対して、知識がないので、同情もない。そんなドリスを、フィリップは気に入っていく。そして、やがて二人の絆が深まっていく。

 だが、ドリスを旅立たせないといけない時がやってくる。

 介護者を面接する場面での、希望者のコメントがなかなかだ。それぞれの言葉 を使って自分をアピールしているのだが、言い方は違えど、内容は画一的。採用する側からすれば、一方通行な話でしかない。何人もの介護者に触れてきたフィリップには、障害者の自分がどう見られているのかは、お見通しなのだ。そこに、粗暴で無知、しかし純粋で楽しいドリスに出会い、唯一無二の関係となる。

 雇い主と使用人、障害者と健常者、白人と黒人…など、上下関係ができても良さそうなのに、映画の中の二人は、あくまでもフラットだ。“垣根”がない。

 まるでコメディのように、二人のやりとりに笑える。感覚が麻痺しているフィリップの足に、熱湯をかけても熱がらないフィリップを不思議がるドリス。そのシーンでさえも微笑ましい。 そして、映画『最強のふたり』のワールドにはまっていく。

 フィリップを演じるのはフランソワ・クリュゼ。ドリスにはオーマル・シーが配された。日本では知られたスターではないが、内容で十分楽しめる。監督は、今作が長編4作目となるエリック・トレダノとオリヴィエ・ナカシュの二人。

『終の信託』(試写会)

2012年09月26日 00時14分01秒 | Weblog
 この作品は、ラブ・ストーリーである。医療ドラマ…と思うかもしれないが、“好き”とも“愛している”とも伝えないけれど、究極とも言えるラブ・ストーリー。それが『終の信託』である。

 『Shall we ダンス?』では、中年男がダンスを習い始めたことで再生をしていくヒューマンストーリーを、『それでもボクはやってない』では日本の裁判制度に疑問を投げかけた、周防正行監督の最新作。
 医療か?殺人か?、終末医療の現場で起こる問題と正面から向き合い、再び真実を問う。

 医師の折井綾乃は、患者からの評判がいい優秀な医師。しかし、不倫関係にある同僚医師・高井に捨てられ、自殺未遂騒動を起こしてしまう。
 そんな綾乃の心の傷を癒やしたのは、綾乃が担当する重傷のぜんそく患者、江木だった。江木もまた、綾乃を信頼し、自分の最期のときを任せると伝える。

 2ヶ月後、江木が心配停止状態で病院に運ばれてくる。江木との約束どおり、延命治療を中止するのか、それとも続けるのか、綾乃は決めかねていた。だが、判断を下す時がやってきて…。

 3年後、検察官から呼び出しを受けた綾乃は、検察庁にいた。そこで、検察官の塚原から殺人罪で厳しく追及される。

 医師の折井綾乃を演じるのは、周防監督の妻であり、女優に転身した草刈民代。ぜんそく患者の江木を役所広司が務めている。江木の抱えてきた、苦しくて辛い過去を語るシーンに胸を打つ。綾乃を厳しく追及する検察官・塚原には、大沢たかお。綾乃の不倫関係にある医師・高井を浅野忠信が演じる。草刈民代と役所広司の16年ぶりの共演というだけでなく、大沢たかおの演技にも注目。いやらしい検察官を、いやらしく演じている。本当に憎たらしいキャラだ。

 そして、その結果に納得するか、しないか。個人的意見が飛び交うことだろう。検察の創作した書類にサインをしたらダメ、ああ、このことか。

(10月27日公開)

『天地明察』

2012年09月17日 00時43分53秒 | Weblog
 江戸時代前期、800年前、中国からやってきた暦にズレが生じていた日本で、日本初の暦作りに臨んだ安井算哲。暦を作るには、天文や算術の知識を生かすとともに、日本各地を歩き、観測するという途方もない労力が必要とされた。
 星を見ることが好きな算哲の、改暦事業の足跡をたどる。
 
 代々、将軍に囲碁を教える名家の息子として生まれた算哲。彼は、星の観測や算術に没頭することが好きだった。
 将軍・家綱の後見人である会津藩主の保科正之は、算哲の才能を見抜き、新しい暦を作るように命じる。しかし、暦に関する利権は、朝廷が握っていた。

 算哲は、朝廷に戦いを挑むこととなる
 
 誠実にひかむきに暦作りに取り組む、安井算哲を演じるのは岡田准一。算哲を支える妻・えんを宮崎あおいが演じている。算哲が尊敬する和算家・関孝和には、市川猿之助、副将軍・水戸光圀には中井貴一があたっている。ほかの出演者は、松本幸四郎、佐藤隆太、市川染五郎など。

 日本人の賢明さと誠実さがあらわれている作品。コツコツと一つのことをやり遂げるというのが、日本人らしく、素晴らしい。そして、エンターテインメント性のある良作である

 米国のアカデミー賞で外国語映画賞を受賞した『おくりびと』の、滝田洋二郎監督の最新作。

『夢売るふたり』

2012年09月15日 23時46分39秒 | Weblog
 まず、こう書きたい。ラストが衝撃だ。何これ、そうきたか。

 『ゆれる』『ディア・ドクター』の西川美和監督が描く世界観を堪能できる。今作も、何が正しいのか、正しくないのか、人とは何か…を、側面的に捉える。人間の表と裏を描いた秀作となっている。

 東京の片隅で、小料理屋を営む一澤夫妻。ところが、火事ですべてを失ってしまう

 もう一度、自分たちの店を持ちたい。そう思った夫婦が始めたのは、結婚詐欺。妻が企て、夫が実行する。

 女性を騙しては、お金を巻き上げる。最初はうまくいっていたかに思えた、この結婚詐欺。だが、繰り返すうちに、夫婦の間にもひびが入ってくる。

 そして、意外な方向へと、ふたりの道は進んでいく。

 結婚詐欺を働く夫婦を演じるのは、松たか子と阿部サダヲ。店の常連客には、鈴木砂羽、香川照之。田中麗奈は結婚詐欺をあう女性の一人を演じるが、ラストへ向けてのキーパーソンでもある。他に、木村多江、伊勢谷友介など、実力派が揃った。

 松たか子が、女性の性(サガ)について、淡々と冷静に演じているところに注目したい。驚きのシーンがあるが、あくまでも淡々と、すごい演技を見せつける。最終的には、自分の中の気持ちに、どう向き合い、自分の足で立っていくのかが、ポイントである。

 映画好きは観ておきたい1本である。
 

『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』

2012年09月15日 09時11分35秒 | Weblog
 テレビ放送の開始から15年。その集大成というべき、作品。歴代出演者もフル出演(水野美紀も)していて、「踊る~」ファンには楽しみな一作ではないだろうか

 前作から参加している小栗旬が、今回のポイント。ずっと、なんかありそうな雰囲気は醸し出していたけど、やっぱりね。
 
 湾岸署では、エコイベントを実施中。各部署で、イベントに人を派遣し、人手が薄くなったそのとき、事件が起こる。
 そして、青島が辞職の危機にあったころ、すみれも、ある決断をしていた。

 これまで、いい雰囲気に淡いラブな関係にあった、青島とすみれ。今回は、作品がラストになることもあり、一つの答えを出している。

 とはいえ、あまり期待を大きくし過ぎないようにしたい。恐れずに言うと、テレビ局製作の映画であることを忘れずに。

 出演は、織田裕二、深津絵里、小栗旬、ユースケ・サンタマリア、小泉孝太郎など、これまで出演者によるオールキャスト…いかりやさんはいません
 そして、この作品が遺作となってしまった、小林すすむさん…ご冥福をお祈りします。

 監督は、本広克行 。脚本は、君塚良一で、おなじみの「踊る~」コンビ。

『莫逆家族 バクギャクファミーリア』(試写会)

2012年09月04日 10時23分28秒 | Weblog
 痛い映画だ。体も心も痛い。暴力には、暴力でしかケリがつけられないのか、痛さを感じなければ責任が取れないのか。とはいえ、家族を守るための、一つの結果の出し方にはなっている。

 かつて、暴走族のトップに立ち、怖いもの知らずだった火野鉄。しかし、今は家族のために、ただ黙々と働いていた。そんなとき、かつての不良仲間の娘が、凄惨な事件に巻き込まれる。

 その事件の落とし前をつけるため、昔の仲間が集結。鉄に、昔の熱い思いがこみ上がってくる。事件の裏に、宿敵である五十嵐が絡んでいることを知った鉄は…。

 鉄にはチュートリアルの徳井義実、鉄の息子には、林遣都。共演には、阿部サダヲ、玉山鉄二、新井浩文、井浦新、大森南朋など。
 監督は、『海炭市叙景』の熊切和嘉。

 実は、鉄には忘れられない小さなころの記憶があった。最後は、この思いとどう向き合うか、である。
 
 「ばくぎゃく」…何事にも心が通じあい、極めて親しい関係、または間柄。

(9月3日御堂会館にて試写会鑑賞。9月8日、公開作品)

『あなたへ』

2012年09月03日 11時09分19秒 | Weblog
 降旗康男監督と俳優・高倉健という、信頼を寄せる者同士がつくり上げた、これぞ邦画という作品。
 人生という長い旅路で出会う、日常を生きる人たちとのふれあいと、心の変化を感じ取る。

 15年連れ添った妻・洋子に先立たれた、刑務所の指導技官の倉島のもとに、亡き妻が残した絵手紙が2通届く。1通は、“故郷の海を訪れ、散骨してほしい”ということ。そして、もう1通は洋子の故郷、長崎県平戸市の郵便局への局留め郵便だった
 その郵便の受け取り期限まであと10日。倉島は、洋子の故郷へと、車を走らせる

 妻は、自分にどんな想いでいたのだろう。妻にとって、自分は何だったのだろう。妻との日常を思い出しながら、倉島は平戸へと向かっていく。そして、その途中で出会う様々な人たちから、様々な生き方に触れる。
 
 最後に、妻が倉島に残していたメッセージとは。本当の想いとは…。

 言うまでもなく、高倉健とビートたけしのシーンには注目を。淡々としているようで、実は熱い心が通う、一つ一つの言葉。なんとも言えない二人の距離感が、絶妙なのだ。

 妻への想いを抱えて平戸へ旅立つ刑務所の指導技師に、高倉健。倉島の妻・洋子は田中裕子が演じている。この田中裕子の演技と歌も、見逃せない、聞き逃せないところだ。旅の途中で出会う人には、ビートたけし、草なぎ剛、佐藤浩市。平戸で、妻・洋子の散骨にかかわってくれる人たちには、余貴美子、綾瀬はるか、三浦貴大、大滝秀治。

 高倉健81歳。未来をどう生きるかを、日本人に伝える。日本の美しい自然と、人々の優しさと共に…。