原作は直木賞を受賞した葉室麟の同名小説。演出・脚本は巨匠黒澤明監督の愛弟子である小泉堯史がつとめる。
映画であることをこだわりぬいて作られた作品である。
主人公の戸田秋谷を演じるのは、名優・役所広司。秋谷を監視するためにやってくる檀野庄三郎を演じるのは、時代劇の出演も多い岡田准一。
ある罪を起こしたことで、10年後の夏に切腹することと、それまでに藩の歴史である「家譜」の作成を命じられた戸田秋谷。すでに、7年が過ぎ、切腹の日は3年後に迫っていた。
檀野庄三郎は、秋谷が逃亡せぬように監視せよ、との命を受け見張り役として、秋谷の妻・織江、娘の薫、息子の郁太郎とともに生活をはじめる。
家譜の編纂という重要な任務をこなしながらも、淡々と大切に一日一日を過ごしていく秋谷の姿に、庄三郎は感銘を受ける。
やがて庄三郎は、事件の証拠となる重大な文書を手に入れるが…、待ち受ける運命は?
粛々と迎える“その日”。主君に命を預けた、武士の生き様。現代のように、生きるための選択肢は少ない時代だが、これもまた自らの受け入れざるを得ないさだめ。どう生き、どう死んでいくのか。悔いなきように。
今作は、デジタルではなくフィルム撮影。フィルム独特のざらつき感に手作り感があり、日本の景色を引き立たせる。スクリーンの端から端まで目を配って鑑賞されたい。
出演は、薫には堀北真希、秋谷の妻・織江を演じる原田美枝子ほか。キャストや背景など、全体的なバランスがいいので余韻を楽しみたい。
(10月4日公開)