ナラタージュとは、「ナレーション」と「モンタージュ」をかけあわせた言葉で、映画などである人物の語りや回想により、過去を再現する手法。島本理生の原作はこの手法で進むが、映画も同じように進行する。
映画配給会社に勤める工藤泉は、雨が降る度に古い懐中時計を取り出し、ある人を思い出す。
大学2年生の春。
泉(有村架純)のもとに高校の演劇部・葉山(松本潤)から、後輩のために卒業公演に出てもらえないか?と電話が入る。
葉山は、高校時代クラスに馴染めなかった泉を救ってくれた教師だった。
卒業式の誰にも言えない葉山との出来事を胸にしまっていた泉は、葉山との再会を期に思いが募っていく。
それは、進んではいけない、禁断の恋だった。葉山は、妻との離婚が成立していなかったのだ。
葉山を忘れようと、大学生の小野(坂口健太郎)との関係を築こうとするが、その時ある事件が起こる。
この作品は、泉の思い、目線からの物語。
これについて、泉がそのときどう思ったか。台本を読んでも、葉山がどう思ったかという描写がほぼなく、そんな片側からの描きかたが面白いと思った。と、松本潤はあるインタビューで答えている。つまり、葉山目線では泉の捉え方とは違う考え方があったのたとも言える。
泉は思い出から抜け出せない泉が新たな一歩を踏み出す、そのきっかけとなるものは冒頭に。葉山目線でみると、泉との別れの理由が何か思い描けると思う。
有村架純はこの作品で、体当たり演技で一皮むける…と、見出しされてしまうが、濡れ場があるから体当たり演技という表現はありきたり。しかし、転機となる一本とはいえそう。
監督は行定勲。10年以上、この作品を映画化することが希望だった。
観賞後は、昔とかぶることがあるわぁ、思い出ありすぎなどの感想が若い人たちから聞かれた。