夢千代日記

SHIMAちゃんの徒然日記・雑記

『英国王のスピーチ』

2011年03月14日 21時38分56秒 | Weblog
 アカデミー賞作品賞を受賞したこともあり注目度は高い。だから観た方がいいというのは容易いが、イギリスの映画なのにアメリカの映画賞を取ったという事実が現実。王室を題材にした映画を作っても、許せる度量があるイギリスの王室もすごい(現在のエリザベス女王の母…エリザベス皇太后は、自分が生きている限りは、ジョージ6世のことを映像化するのは許可しなかったという)。
 吃音症で悩む国王という重いテーマなのに、重苦しくなく、洒落が利いている。愛情と友情の面からも、上質の人間ドラマとなっている傑作。
 1936年、ジョージ5世が亡くなり、長男のエドワードがエドワード8世として即位する。しかし、エドワード8世にはかねてよりアメリカ人で2度の離婚歴がある愛人がいた。英王室では離婚歴のある女性との結婚は許されないものだった。だが、愛を貫くために退位し、エドワードは平民となる。そして、突然ジョージが王位に就任する。ジョージ6世として。
 しかし、ジョージは言語障害があるため、人前に出るのが苦手。夫を助けるべく、妻のエリザベスが奔走する。新聞広告で見つけた、オーストラリア人の言語聴覚士・ライオネルの元を訪ね、スピーチ矯正の治療が始まる。ところがその治療法が型破り。国王でさえ通院させる。言葉づかいも乱暴。時には、ジョージを怒らせ、けんかにもなっていた。それでも、国王とライオネルの間に友情という絆が生まれていく。そしてついに、国王の真価が問われるときがやってくる。
 いよいよ、国王ジョージ6世はナチスドイツへの宣戦布告のスピーチにのぞむ。果たして、演説は無事にできるのか?サスペンスよりもハラハラドキドキ。
 ジョージ6世を演じるのは『シングルマン』のコリン・ファース。言語聴覚士のライオネルには、ジェフリー・ラッシュ。この二人の丁々発止のやりとりが絶妙で、特筆もの。
 国民から慕われたジョージ6世は、家族を愛した一人の父親でもあった。キングオブイングリッシュを聞ける機会でもある。ぜひ劇場で。

『死にゆく妻との旅路』

2011年03月14日 09時57分53秒 | Weblog
 保護責任者遺棄致死。そんな罪状で、とある初老男性が逮捕されたというショッキングなニュース。
 夫が病気の妻を治療も受けさせず、連れ回した。という聞いただけでは、冷たさを感じるこの話には、重々しい罪状とはまったく違う、真実があった。

 小さな縫製工場を営む清水久典は、バブルの崩壊で多大な借金を抱え、住む場所と仕事がなくなった。ガン手術後の妻のひとみを置いて久典は金策に走り回るが、一人残されることを妻が嫌がる。
 そして、妻と二人で仕事を探しながら、ワゴン車で日本全国をさまよう。迫り来る妻の死を見つめながらの、旅。272日、およそ6000キロ。夫と共に過ごすことを望んだ、末期ガンの妻。衰弱していく妻を看病し、夫は献身的な介護で妻を看取る。
 最愛の人と、ただ一緒にいることを望んだ夫婦のラブストーリー。夫婦が四六時中一緒にいることで生まれる心の揺れや、葛藤があることも無視せずに描いている。
 これが保護責任者遺棄というなら、心情的にはあまりにも酷い。深い愛が、じんわりと伝わってくる。
 監督は『初恋』の塙幸成。夫婦を演じるのは、三浦友和と石田ゆり子。清水久典氏本人による手記の映画化となった。


『ツーリスト』

2011年03月13日 21時33分22秒 | Weblog
 アンジェリーナ・ジョリーとジョニー・デップの共演で話題。旅先で事件に巻き込まれる旅人の行方を描くミステリー作品。
 パリ。エリーズは、いつものカフェである手紙を受け取る。すっと読み終わると手紙を焼き、立ち去る。手紙の指令どおりに動くエリーズの後をアチンソン警部たちが追っていた。指令に従い電車で移動する中、エリーズは一人の男性に目をつけ、行動を共にする。男の名はフランク。彼は、妻を亡くし、傷心を癒やすためにイタリアに向かっていた。
 エリーズはフランクを誘い、ベネチアの高級ホテルに夫婦として宿泊。だが、それをきっかけにフランクに、思いもよらない事態が襲っていく。
 実はエリーズは、アレクサンダー・ピアースという国際指名手配の金融犯罪者の恋人。そのため、警部たちに行動を監視され、アレクサンダーが騙したギャングたちからも追われていたのだ。
 エリーズを拘束し、脅し、アレクサンダーをおびき出そうとするギャングと、アレクサンダーを現れるまでギャングを捕らえようとしないアチンソン警部。
 エリーズとフランクの運命はどうなる…。
 ダサくて、イケてないジョニー・デップ。それにはワケがあり。でもそれは、本当に最後の最後まで秘密の秘密。もちろん、アクションには注目である。

『まほろ駅前 多田便利軒』(試写会)

2011年03月07日 23時41分50秒 | Weblog
 主演の瑛太と松田龍平は『アヒルと鴨のコインロッカー』以来、4度目の共演。二人の不思議な“間”と距離感が、この作品でも、現代とは思えない異空間を作り上げている。
 東京郊外のまほろ市。そこで多田啓介は便利屋をやっている。ある年の正月、多田啓介は中学の同級生である行天春彦と出会う。行くあてのない行天は、多田の家に転がり込み、啓介の“多田便利軒”を手伝うことになる。それぞれに過ごしてきて30代となり、二人はともにバツイチとなっていた。
 これまで、淡々とではあるが、真面目に仕事に取り組んできた啓介だが、春彦が来て以来、依頼人に入り込んで関わってしまうようになっていく。啓介は、中学の時は無口で愛想がなかった春彦が、まるで人が変わったようになっているのに戸惑いながらも、共同生活は続いて…。
 普段生きている社会のスピードとは違う、少しゆっくりで少しズレた感覚がある。ワケあり男たちが、ワケありの人たちと“便利屋”という形で関わっていく。おせっかいな便利屋とちょっと危ない依頼人たち。そして、多田と行天のゆる~い?友情に焦点が当たる。
 監督は『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』で注目の大森立嗣。独特の映像や話のテンポなどで遊び心が垣間見れる。多田啓介に、瑛太。行天春彦に、松田龍平。行天の元妻に本上まなみ。他に、片岡礼子、鈴木杏、高良健吾、岸部一徳など。大森監督の父、麿赤兒と弟の大森南朋も出演している。
 原作は、三浦しをんの同名ベストセラー小説。
(4月23日、公開)

『唐山大地震‐想い続けた32年-』(試写会)

2011年03月03日 10時04分14秒 | Weblog
 中国はいったいどこまで経済成長を続けるのだろう。そんなことはこの映画には関係はないが、中国のやる気を感じてしまう。中国には、これまでにも名作や大作があったが、この映画は、ただ大規模で、お金をかけているわけではないところが、恐ろしい。とてもよくまとまっている秀作であり、感動作である。しかし、なぜだかそれがちょっと悔しい。
 1976年7月28日。中国・唐山市で直下型の大地震が起こる。それは、多くの人の人生を変えた。倒壊していく建物の中で夫を亡くした母。残された子どもたちは、生き埋めになっている。両方の命は助けられない。どちらかを選ばなければならない。早く決めるよう急かされ、“息子を…”と告げる母。ガレキの下で、まだ息のある娘は母のその声を聞いていた。そして、娘の遺体は父の隣に並べられる。母は、すべての責めを受け入れ、息子と生きることを決意する。
 一方、次々と遺体が葬られていく中、被災地に大雨が降る。それをきっかけに奇跡的に息を吹き返した娘は、軍により助けられる。娘のことを想い続けながら日々を過ごす母。そして、娘も養父母の元で成長していた。
 32年の時を経た2008年。四川で大地震が起こる。それを機に、親子の運命は、大きく動き始めて…。
 大地震で、娘は母の言葉を聞いて傷つく。娘は大人になり、自分が母となっても忘れられない言葉として、自分を苦しめていた。だが、母も自分以上に傷ついていることを知ることになる。そこはもう、体が震えるくらい心が突き動かされる。
 何と言っても、エピソードの一つ一つのつなぎ方が秀逸。娘役を演じるチャン・チンチューが美しく、それにも見入ってしまうのだけれども。
 監督は、『女帝「エンペラー」』『戦場のレクイエム』のフォン・シャオガン。今作では、大地震そのものを表現するよりも、その後の人間ドラマに重きを置いている。
 締めとして、このフレーズはできれば使いたくなかったが、しかしあえて使おう…号泣必至、である。

(3月2日、エル・シアターにて試写会。3月26日、公開)

『恋とニュースのつくり方』

2011年03月01日 23時36分52秒 | Weblog
 ベッキーは地元テレビ局のモーニングショーのプロデューサーをクビになり、失業中。早く次の仕事を見つけるために涙ぐましい努力をしている。
 履歴書を5通送ったニューヨークのテレビ局の面接はしゃべり過ぎ。落ち込んでいたところに報道部長から、採用の連絡が入る。しかし、それは局にも見放されたモーニングショーの担当だった。
 だが、仕事ができるだけで嬉しいベッキー。早速、伝説のキャスター・マイクを起用しようとするが、マイクは拒否。それでもやっとマイクに了解をもらい、女性社員の憧れアダムとの恋も手に入れ、すべてが上向きと思ったころ、上司から視聴率が上がらなければ番組を打ち切ると言い渡される。仕事はまたクビ?恋も、なくなる?
 とにかく、ベッキーは頑張る。万全を尽くすべく。八面六臂の活躍。
 ヒロインには『きみに読む物語』のレイチェル・アクアダムス。元伝説のキャスター・マイクにハリソン・フォード。さらに、ベッキーの恋人・アダムにパトリック・ウィルソン、マイクと衝突するお局キャスターにダイアン・キートン。
 何と言ってもテンポ良い映画。ツボにはまると笑ってしまうだろう。ただ、ちょっとヒロインは働き過ぎ? テレビ局プロデューサーという仕事と恋愛を手に入れることができるかという、いわば人気ものの詰め合わせ。かたい話はなし、だ。